....VS

 「・・・・・なんか、すごい音しませんでした?」

 「したね。しかもだいぶ近く」

 開始直後、謎の轟音があたりに響き渡っていた。その方向に耳を澄ませると、音が近づいてきていた。

 「警戒しながら移動!」

 「はい!」

師匠にそう言われ、いつでも戦闘に入れるように心がまえをし移動する。だが、移動を初めて数分も経たずに、前方で道の脇に建っていた家の外壁がとてつもない音と共に破壊された。勢いがすごく、外壁の前に居ないのに、風が来て、上がった土煙もすごい。煙の中から一人の男が出てくる。こちらを確認すると、男は、

 「見つけた!さぁ、やろうぜ!!!!」

と言い、こちらを向く。

 男の両手には紫色に近く輝く何かが見えた――――


 「ははっは。いきなり、そことそこかー」

 指令室も兼ねているモニタールームで画面を見ながら、九ノ瀬主任が楽しそうに、そして納得してるかのように笑っていた。

 「主任!!なにがおかしいんですか??というか、破壊力おかしくないですか?」

 「ふー。いやー、ごめんごめん。行動が予想通りでつい」

と一つ深呼吸を入れ、落ち着いて話しを続ける主任。

 「えーと?何だっけ?破壊力ね!結月君は初めて見るのかな。他にも初めての人がいるかな?」

というと、周りで見てる何人かも頷いていた。

 「疑問にはお答えしないとね。・・・だって破壊力はあるよ。『最恐』だもの」

とあっけらかんと言い放つ。

 つまり、壁を壊して進んでこれるほどの破壊力を持っているのは『最恐』の異名持ちだからだそうだ。答えになってない。

 「それにこれくらいで驚いてたらもたないよ。壁壊すなんて多くの人ができるのだから」

何か意味の分からないことを言っている。そして、画面を見ながら、

 「まぁ、あいつならこう行動するだろうなとは思ってたけど。予想通り。さすがだわ」

とつぶやいている。『最恐』と知り合いであることが伺える。・・・・主任は参加者全員と面識があるように感じる。考えていると、主任が口を開く。

 「・・・それに、ここからがすごいから。ここだけに注目するのももったいないよ。他のカメラの映像も見ないと」

と画面を見ながら言う。今回のモニターに映ってる映像は固定のカメラと参加者を自動で空を飛び追うカメラが撮ったものが流れるようになっている。戦闘が激しくなるとカメラが壊れる可能性もあるので複数でモニタリングしているのである。

 他の場所を映した映像を見てみる。すると、ある参加者が屋根などの高いところに上り何かを探すように周りを見回している姿が映っていた――


 「くらいやがれ!!!」

 「来るとは思ってたけど、うるさいな!!」

 二人はしゃべりながらも目の前で激しくぶつかっている。

 攻防は激しく、動きが速い。目で追うのもやっとである。どちらかが蹴りを入れると、足を上げ防ぎ、殴っても防ぎ、攻防が激しくころころと入れ替わっている。勢いがすごすぎて、周りに衝撃が風として伝わり、周りに人をよせつけない。何とか近づけたとしても入れない。

 風圧で周囲の物も壊れていってる。というよりもはがれていってる。それぐらい、戦闘してる付近は別世界に変わっていた。

 やばい、レベルが違う。違いすぎる。肌で実感するほど、圧も戦闘の熱も感じる。異能を使用してるのはわかるが、普通じゃないことは直感的に理解していた。


 「くたばれ、金髪!!!!」

 「あ?悪口下手くそか。どチビ」

 「あ?????てめえ、身長が少し高いからって調子乗ってんじゃね!!!!」

 「あ???高いけど、てめぇのは少しじゃなくて平均以下だろうが!!!」

 二人は攻撃し合いながら、小学生?ぎりぎり中学生みたいな悪口を言い合っていた。確かに師匠は背が高い方なのかもしれない。あと、ロングで、眩しくない程度の金髪に染めている。相手は、背は僕と同じくらい?いや、僕よりも少し低いか?150後半から160くらいだろうか。髪は短めで黒である。ただ、溢れ出しているプレッシャーはすごい。先ほどからひしひしと感じている。


 後ろから気配がした。振り返ると、師匠と同じくらいの背の女の人が立っていた。スーツ姿で、ショートカットで色素が薄い茶髪である。立ち姿などから凛としたイメージをうける。

 「あ、どうも~」

と軽く手を振りながら挨拶をしてくる。とりあえず警戒の体勢を取る。

 「大丈夫、大丈夫。何もしないわ。今は」

 「どうして、そんなことがいえるんですか」

 「うーん。確かにルール則ったら、戦った方がいいのかも。でも、もう少し様子を見たいかな」

と言って、激しくやりあってる二人の方を見る。

 「まだ序盤だしね~」

と気楽に言う。確かにそうだ。だがこの人はだ。というより誰よりだ。「取りあえず、君もこっちで見たら~」と隣に手招きしてくる。とりあえず最低限の警戒をしておくことにする。ぼくが隣に行くと何も言わずに戦いをまっすぐにみている。何を考えているのかわからない。すると、口を開いた。

 「・・・自己紹介したほうがいいのかな。ま、あとから戦うだろうからその時でいいかな。それともいらないかな、どう思う?藤井の・ど・か君?」

と言ってきた。ぼくは、返事を返す前に横を向き素早く下がり、構える。なぜかって?こっちは自己紹介なんてしてない。なのに名前を知っている。直感的にやばいと感じた。それを見て、相手は

 「・・・そんなに警戒しなくても」

 「なんで、名前を?」

 「君はそれなりに有名だよ」

と言い放った。まじか。「ああ、もが正確か」と言った。警戒を解かずに、構えていると、急に、ヤバイ気配を感じた。相手も後ろを振り返っていた。時間が経たないうちに、黒い禍々しい何かが上を通り過ぎた。通り過ぎる時にバリっと音がした気がした。

 そして、戦闘中のところにぶつかりはじけていた。


――『最強』と『最恐』がぶつかり藤井和と女性があったころ

 「うーん。あそこかな?・・・派手にやってるな」

屋根に上っていた男はそう言うと、ニヤッと擬音がつきそうな覚悟を決めたような顔をしていた。男は「ふー」と深呼吸し集中する。少しずつ足元が浮いていき、空中に浮く。手には、黒く渦巻くような力と雷みたいなものが集まっていく。それが、槍の形を形づくり、力が渦巻いているのが見てわかる。

 「・・・凶星<槍>」

とぼそって呟き、投げる。それは、素早く狙った場所に空を切りながら、進んでいく。

 目的地まで、二本の黒線が空に描かれて飛んで行った。


 さっきまで、二人がいたところは土煙が立っている。二人の無事かどうかは見えない。まだ困惑していると、槍のようなものが降った方向から何かが向かってくる音がした。そして、土煙が薄くなってきたところに、人が降ってきた。降ってきたで合ってるのだろうか。その男は、勢いよく突っ込んできたともいえる。足には黒い力みたいなものが渦巻いていた。早かったが、そこは見えた。そして、またとんでもない音がその場に響き、風圧がくる。足に力を入れても立てるかどうかぐらいに強い。隣にいた女性も手を前に組み、僕と同じように吹き飛ばされまいとしていた。

 

 土煙が段々晴れていき、姿が見えてくる。乱入してきた人の蹴りの足をしっかりと二人は防いでいた――――

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