前夜

 本部を訪ねて数日が経った。あれから、返事があり本大会の詳細が書かれた書類が送られてきた。招待状の時も書いてあったが、その時よりも細かく書かれたものだ。

 もちろん参加予定の人の名前も載っている。ただし、載っていたのは対象者だけで同行者については明記されていなかった。同行者は有無だけは書いてあり、全員が誰かを連れてくるというのがわかる。・・・同行者といっても、一般人ではなく何かしらの能力持ち、もしくは戦える奴だと予想がつく。確実に強いだろう。何せ行くのは、戦場である。そんな中で自分が行くのがどうしても不安に残った。自分が一緒に行って何か役に立てる気がしない。迷惑をかけることのほうが、容易に想像がつく。

 師匠の、、、朱音さんの足は引っ張りたくない。

 

 「師匠ー。明日なんですが....」

 「どうしたの?寝れないの?・・・楽しみすぎて?」

とのんきな声とはっと気づいたかのように返される。ちげぇよ、どちらかというと不安でだよ!と心の中で突っ込みながら、何回目になるかわからない直談判をしようと試みるが、口を開く前に師匠が口を開いた。

 「不安になることはないよ」

びっくりした。急に心を読んだかのように発言したからだ。ぼくの驚いた顔を確認したら、面白そうに微笑みながら続ける。

 「ちゃんと、和は強くなってる。確かに、明日の相手は強いけどそんなに気にしないでいいよ、、大丈夫。・・・目指すは優勝!!と言っても、正直どっちでもいいし、気楽にいこう」

と優しい声で言ってくる。優勝という意味はわからないが、やるなら勝とうとは言われていた。それもあって不安に思っていたところも正直ある。気楽でいいのか。・・・だが、その前に強くなった気がしないのだ。自分が変わってるという実感がないのである。

 「実感がない?ふ、ふふーそれは大丈夫!」

と自信満々に言う。

 「どうしてそう言えるんですか?」

と返すとドヤァと聞こえそうな顔しながら言う。

 「だって、私は、『最強』だよ。実感わかないさ、私が相手だからね」

 「・・・・・・」

無言になってしまった。「あれ?決まらなかった?」みたいな言葉が顔に出ている状態であたふたと不安がっている様子を見ると、思わず吹き出してしまった。それを見て師匠も笑顔になり、やっぱり決まってんじゃん!みたいな顔をしてからお互いに笑っている。何だろう肩の力が抜けた気がする。そうだよ、『最強』が味方なんだから、心配ない。相手が同じくらいの強さだろうが、師匠の方が強い。自分はできることをやろう。そう心に強く今までよりも強く定まった――


 ついに、明日だ。最近は研究の部署以外にもクライシス本部の人員全員が明日の準備で忙しかった。いつもの業務と並行して準備。安全確認に細かいチェック。ほんとに目が回るようであった。でも、これで明日である。さぁ、どうなるか。私は、意外と楽しみに思っている自分に気が付いた。気が付きながら、ちゃんと自分がやれるかの心配もある。でも、やれることを全力でやるつもりである。当日ってそんなにやることあったけなぁと思いながら、帰る準備をしていた――

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