異能研究室主任
後日、招待状の内容を聞くために僕たちはクライシス本部に来ていた。
――クライシス。異能力活用・推進協会という別名を持つ組織。異能持ちと民間、社会との共存のための組織である。政府や警察などいろいろな組織と協力し異能について全般を取り仕切る組織である。本部自体は都心の近くにある県の町にある。本部自体は、中心に、円柱型の建物が立っており、近未来感がにじんでいる。普通の建物もあり、土地が広く様々な施設がある。
本部に入り、司令室まで行く。扉が開くと、巨大なモニターをはじめとするいろんな機械が置いてあるのが目に入った。師匠は周りを見て、誰かを捜しているようである。そして、一人の男と目が合う。
「やぁ!まさか、ここまで来てもらえるとは思わなかったよ」
「いやさ、顔を出した方がいいかと思ってさ!きてみたよ」
「なるほど~」、と言いながらも、あいさつをしてきた人は何かをかまっている。そして、別の女性の職員が「こちらにどうぞ」と隣の部屋まで案内してくれた。
「それでは、少しの間主任が来るまでお待ちください」
そう言うと、丁寧に頭を下げてその人は去る。少し待っていたら、先ほど話しかけていた男が現れた。
「待たせてごめんね~。これ、お茶ね」
その男はお茶を机の上に置いて、僕たちの前に座る。
「さて、今日はどうしたのかな?顔を見にきたー、だけが理由じゃないでしょ?」
「まぁ、そうだね。・・・手紙の返事をね」
師匠はお茶をすすりながら、言う。
「へー。いい返事もらえるかな」
とわくわくしたように言う。
「うん。参加してもいいよ。・・・ただ、どういうつもりなのか教えてほしいなーってね」
と優し気に、でも圧をかけるようにいう。
「はは。なんか疑われているのかな?大丈夫だよ、怪しことは企んでないって~。それにさ、企んで、
と冗談めかして言う。そして、言葉を続ける。
「大丈夫、大丈夫。説明を求めるならするよー」
と言いお茶をすすり、
「何から聞きたい?」
と一言問いかけてくるのだった。
お茶を机に置き、話を進めていた。難しい話をしてそうなので、ぼっーとしていたら、
「あぁ、和君も聞きたいことがあったら、聞いてくれていいよ。答えられる範囲で答えるから」
とこっちにも話を振ってきた。急に呼ばれてびっくりする。
「僕のこと知ってたんですか」
「知ってるよ~。当り前じゃない」
数回あっただけで、あまり深く話したこともないし、忘れられてると思った。
「はは、まぁ何か気になったら聞いて。ぼくはわりと物知りだからね~」
と軽くいう。・・・・ノリが軽いな。
「で?なんだっけ?」
「何のつもりで決めたのかなって。能力の把握だけなら、いつも通りの様式でもいいはずでしょ?」
「まぁ、実際そうなんだけどねー」
と言いながら、笑っている。「痛いところつくなー」とも言っていた。
「でもさ、つまんないでしょ。いつも通りってのも」
う、っと言葉が出そうな顔をする師匠。
「ねー。どうせだから、楽しくね。皆がぶつかった姿も見たいしね」
と笑いながら期待を込めたような表情で言ってくる。楽しみで仕方がないとでも言いたそうだ。
それを聞いて、何かを考えこむように師匠は黙っていた。
「・・・・・・何組参加予定なの?」
「うーーんと、ね。今回の予定では、5組を考えてる。もちろん、君たちを含めてね」
と言う彼。
「へー、誰が来るか聞いても?」
「えー、それはどうしようかな?まだどこで公表するか悩んでるんだよ。参加者が確定もしてないしね」
と軽いノリで言っていた。「君たちが最初」とも言い、お茶をすする。
そして、ある程度話をしところで解散の流れになったのだった。
――二人が去った後の部屋。
「九ノ
話かけてきたのは、先ほど二人を案内してくれた職員である。彼女は、
「なんだい?真依くん」
「終わりましたか?」
「あぁ、終わったよ。・・・少し出てくるね、休憩がてら」
「ダメですよ」
「えっ」
「これから会議ですよ」
と優しい声で言ってくる。そうである。パッと見クールだが、普段から優しくとっつきやすいのである。だけど、
「いやー。バックレるよー」
「これから会議ですよ」
同じことを同じように言われ顔を見合わせる。うーん。優しい笑顔だけど、目が笑ってない。
このように、言うときは言うし、やるときはやる人である。頼れる人だなと改めて感じながら、私は引きずられていった。
本部からの帰り道。
「・・・あの人って、何だったんですか」
「うーん?あぁ。あんまり知らないとおかしな人に見えるよね」
「まぁ、そうなんですけど。大まかに知ってはいたつもりだったんですけど」
「彼はね、九ノ
「?!?!」
正直驚いた。研究者なのは恰好的にはわかっていた。だが、主任だったなんて。
クライシスは異能者への支援や、社会に溶け込むための組織でもある。色々な職務の中でも”研究”が重要で中心的だったりする。異能研究室の主任ということは、たくさんいる研究者の中で一番偉くすごいということである。
今日、会っていた人がそんなにすごい人だったんなんて。ただ気になる点もあった。
「・・・少し不思議な格好でしたよね」
白衣はわかるが、右手には丈が普通よりも長い黒い手袋、室内なのに変わったサングラスをしていた。
「あぁ、あれね。何かしらのメガネはしてるよ。サングラスや、色眼鏡、普通の眼鏡ににいたるまで」
とウケているのか、笑みを浮かべながら、話してくれる。
「眼鏡とっててもね、髪が邪魔で目見えないの。ほんとに偶にしか見れないよ、素顔」
そして、深呼吸を一回はさみ、落ち着かせると、
「まぁ、ふざけてるけど真剣ってことかな」
と真面目な顔して、話を締めくくった。九ノ瀬主任について楽しそうに話すのを見ていると、悪い人ではないと思えてくる。今度何か話でも聞こうかなとも思いながら、帰り道を歩いた――
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