第10話 小さな戦車

「お前は背が低いな」

「兵隊には向かないですか」

背の低さはコンプレックスだった、体が大きい方が敵兵を倒しやすいと。


「いや戦車兵として頑張ってくれ」

戦車の操縦を担当することになる。

戦車は狭い、体が大きいと非常に窮屈に感じるだろう。

実戦に参加する頃には、狭さと暑さになれた。


「敵は、いない前進」

塹壕を次々と突破しながら進む戦車の中は轟音だ

小さなスキマから、外は見えるが進む方向は指揮官が決める

「敵発見、発射用意」

砲手が弾を込める、自分は指揮官の指示で戦車を回す。

「撃て」

轟音が室内に反響する、敵に弾着したらしい。


「旋回、左に逃げろ」

戦車を回転させながら、逃げようとしたが野砲の弾が直撃した

もう何も聞こえない、煙と熱気と血の臭いを感じると

意識が途切れる。


気がつくと野戦病院だった

看護婦が手当をしてくれる、親切な彼女達には感謝しかない。

軍医が来ると「両足はだめだ」と告げられる

除隊を覚悟したが、命は助かる。


戦況は悪化のまま、膠着をしていた

軍師司令部は新兵器の投入を決める

「人材を確保しろ」

リストが作られて、除隊になる兵隊を集めた


傷がふさがると同時に、上官がベッドにきた

「悪いが新兵器の実験をしてくれ」

「私でもお役に立てるのですか?」

不思議に感じたが、兵隊として活躍できるなら嬉しい。


新兵器は「小さな戦車」だった

高さが従来の戦車の半分も無いだろうか

旋回砲塔はなく、固定された砲塔が長く伸びている。

主に待ち伏せ型として使われるが、突撃にも利用できる


車内は極限まで狭く、通常の人間は入れないが

私なら入れる、腹ばいになり操縦をする事になる

すべて両腕だけで、操作が可能だ


実験が行われると、驚異的な成果が出た。

車高が低ければそれだけ弾に当たらないし、小さな戦車は

小回りも利くので高速移動できる。

そして戦車をつくるための費用も軽減できる。


私は今も、体が欠損した兵隊達と活躍をしている。

勲章は何個も貰った。

国に貢献できるのは、最高に嬉しい。


「小さな戦車」の活躍を見て、少年兵ならいくらでも確保できると

上層部は考えて計画中だ。祖国万歳。


「あれが小さな戦車か?」

「そうですね、上空から見ると幅も広いので当てやすいですね」

複葉機に乗った敵兵は、戦車の真上に爆弾を落とす。

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戦記のSS集 WsdHarumaki @WsdHarumaki

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