第8話 かくれんぼう
塹壕戦闘は悲惨だ、敵陣地に攻撃をしかけると
仲間がバタバタと死んでいく。
進軍する時は、大砲で援護射撃を行う。
前方に落ちる弾幕を見ながら進軍する
もちろん常に正確な弾着が可能ではない
進んでいる味方に落ちる
肉片となる味方を踏みながら進む
着いた後は、至近距離の銃撃戦だ
間近で銃の撃ち合いをして、敵も味方も死ぬ
悲惨なのは塹壕の中に居る兵隊だ
穴の中に手榴弾を入れて殺す。
かろうじて生きて手を上げる兵隊も、銃剣で刺す
俺が見つけた兵隊は、幼かった。
16歳くらいにしか見えない
自軍も同じで、戦争に参加をするために
年齢を誤魔化して入る奴は大勢いた。
塹壕の隅で、震えている新兵を何回も刺した。
味方が死んでも、何も感じないのだ、
隠れている敵兵を殺しても、気にしない。
その歳は大雨で、塹壕に水が入り込んだ
塹壕は、膝下まで水がたまるが、排出はできない
粘土状になった塹壕は、水が抜けない
その塹壕に待機をしていると、足が冷える
そして凍傷になる
最悪は塹壕足になる。
足が腐るのだ。俺の足は壊疽を起こして切断をした
除隊になり、田舎で暮らすことになる
静かな暮らしだが、俺には苦痛だ
夜寝ていると、ばたばたと足音がする
味方の足音なのか、敵兵の足音なのか、
もしかしたら自分の足音なのか。
眠れない、医者に薬をもらい寝ると夢を見る。
あの塹壕の夢だ、敵兵のこと、足を切ったこと
何回も夢に出る。いい加減にしてくれ。
「おじいちゃん、おはよう」
孫が家にきて、ばたばたと走り回る
夢と重なり、不機嫌になる。
俺は、杖で体を起こすとゆっくりと外に出た。
「おじいちゃんは、見てない?」
母親は、子供に聞いてみるが見ないと言う
「おじいちゃんどこかしら、警察に電話しないと」
キャンパーが老人に狙われた噂が立つが
真偽はわからない。
老人は、まだ見つからない。
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