第5話 伝令の少年

塹壕の底は水が溜まり足場が悪い、

少年は水たまりを飛び越えながら走る

少年メモを見ながら、

「D6からH7へ前進です」

将官からの命令を、現場に伝えるのが仕事だ。


戦場をマス目に区切り、縦横に英数字をふりわけている

A1は左の一番上だ


「了解した、戻っていいよ」上官は優しく少年に話かけた

近くの村から徴集された少年は、伝令として働いている

有線や無線の伝達方法もある。


機械の故障や扱う兵士が戦死する時を考えて、

伝令も利用した。

将官のところまで戻ると

「損害がひどいな」

「敵の攻撃が激しい」

深刻そうに話をしている。


「伝令か、次はE3へ」とメモを渡された

少年は

この戦場の塹壕の走り方を完全に覚えていて

頭の中で道順を確認しながら走れる

「この戦争は負けるのかな」

体の中心が冷えて縮むような感じが嫌いだ


塹壕を走りながら、

敵の攻撃がこちらに迫っているのは判るくらいに、

少年は戦場の場所を知り尽くしていた。


このままではE3がメモ渡す前に、

敵に攻撃されてしまう。

少年は打開策を考えた

「敵がE3を攻撃する直前にF5から側面を叩けば」


少年はメモの伝令先では無い場所まで走ると

メモなしで口頭で

「敵がG3に到達したら攻撃」と言い残すと

走りだす


メモの伝令先まで走ると将校の命令を伝えた。

敵は2方向からの攻撃で敗退

少年はメモの内容を伝えているし、

何も咎められる事もない


少年は同じような行動を何回も繰り返す。

味方はどんどんと勝利をして前線を進む。

「この戦争は勝てるぞ」有頂天で走る少年

そこへ重砲の広範囲の砲撃が開始された。


「なぜ戦線をこれほど突出させたのか」

敵の将校は、相手の将校の無能さを喜ぶ。

少年を含めて突出した兵士達は、跡形もなく消えた。

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