第4話 反射

幼なじみの少女は、少年を見送る。

子供の頃から過ごした少年は、別れ際に婚約を約束した

少女の頬はあたたかく染まり、無事を祈る。


少年は部隊に配属されると、その狙撃の腕を認められ

標的を高得点で当て続けた。

実戦に配備される頃には、かなりの腕前になる。


戦争は泥沼状態で膠着していた

草木はすべて消えて、裸の土地の上は

鉄条網と土嚢しかない。

榴弾と迫撃弾がふり続く中で、少年は

敵兵を葬り続けた。


スコープを覗いていると、100mも無い距離で白いものが見えた。

白旗がふられている、敵兵が塹壕から出て手をあげた

照準を額に合わせると、少年は引き金を引いた

敵兵は崩れ落ちる。


条約で捕虜を殺す事は禁止されている。

実はそれがすべて守られているとは、言いがたい

戦場でも同じで、暗黙の了解もある。


少年は、敵に憎しみがあるわけでもない

確かに命の危険はあるが、それは相手も同じだ

彼は敵兵がいれば常に反射で引き金を引く事にしている

何も考えずに機械的に撃つ。


誰にもとがめられず、頭をからっぽにして撃つ。

終戦は突然だ

双方の被害の甚大さに恐れをなして、平和が訪れる。


少年も除隊になり故郷で静かに暮らす事にした

少女と再開もして、挙式も決まる

少年は結婚式のための料理用の鳥を撃ちに行く

スコープを覗くと、野鳥がいる


一発で仕留めると

腰にぶらさげて帰ることにした。

「母に料理をしてもらおう」

前方に幼なじみを見かけた、少年が手をふると

少女も手をふりかえした

スコープを覗いて、額に照準を合わせる。


「少女は額を打ち抜かれて死亡と」

村の警官はメモをしている

「少年も自分の銃をくわえて引き金を引いたと」

誰もが、少年の心中の理由を知らない。

目を見開いた少女の手には、白いハンカチ

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