第2話 召集、そして

 白い円卓のテーブルに他の幹部達は既に着席していた。

 一つだけ空席がある。

「皆、集まってくれてありがとう。遂にこの空席を埋める人物を見つけてきたんだ。今日は皆にその人物を紹介したくてね」

 ワイズマンは白い円卓から少し離れた椅子に腰掛ける。


 他の幹部達は動揺している様子はない。

 すると、一人の幹部が手を上げる。

 ワイズマンはその幹部を指差す。

「エルフリーデ、発言を許可する」

 エルフリーデと呼ばれる銀髪の少女は他の幹部達の顔を確認する事もなく発言する。

「ボスが直々にスカウトしてきたと噂の人物ですが本当に幹部に相応しいのか些か疑問です。過去にスカウトしてきた人物達は一日も持ちませんでしたが?」


 エルフリーデの発言に他の幹部達も頷く。

 しかし、頷いていない人物もいた。

「エルフリーデ嬢が仰る事もごもっとも。しかし、今回は私の中で最高傑作。ボスの顔に泥を塗るような事は決してありません」

「エルフリーデよ、ドクターもこう言ってる。

 実力を疑うのであれば今回は私闘を許可するが、どうする?」


 ワイズマンは椅子に座ったままエルフリーデに問いかける。

 エルフリーデは少し考え、立ち上がり言う。

「ボスが与えてくれたチャンス、せっかくなので利用させて頂きます。此処で死ぬようなら空席を埋める資格もない存在です」

「いいだろう。ドクター、彼を呼んでおいてくれ五分後、全員地下の訓練施設に集合だ。私は先に行く」


 ワイズマンは姿を消す。

 他の幹部達も移動を始める。

 五分経たず既に全員が地下の訓練施設に集合していた。

「逃げずによく来たわね、新入り」

「逃げませんよ。負けるつもりはありませんから

 」

 エルフリーデの回りに青白い光が立ち込める。

 刹那、剣先が頬を掠めた。

 頬から血が流れる様子を見てエルフリーデは首を傾げる。

「今の一撃は初見で見切れないと思っていたけど」

「流石に肝が冷えましたけどね」

 エルフリーデは大した動揺もする事なく大剣を構える。

 直感的に先程よりも強烈な一撃がくるのを感じた。

 ドクターは嬉々とした表情を浮かべて言った。

「やれやれ、エルフリーデ嬢。ボスの前だからといって張りきりすぎですね、そんな大技出したら

『彼』じゃなかったら消し炭になってますよ?」

 エルフリーデが構えた大剣が青白い炎を纏う。

 今まさに、エルフリーデの大技が放たれようとした矢先に声がした。


「双方、そこまで!これ以上の私闘はワイズマンの名において禁止する!」

 ワイズマンの声にエルフリーデの大剣から青白い炎が消える。


「すまないね、森羅君。まさか、エルフリーデが此処まで本気を出すとは思ってなくてね。

 恐らく、エルフリーデの初撃を躱した事でスイッチが入ってしまったのかもしれない。負けず嫌いだらね」

 ワイズマンはそう言ってエルフリーデの頭を撫でていた。


「ボス、結果はどうなりますか?決着は着きませんでしたが」

 森羅の問いかけにワイズマンは満面の微笑みを浮かべて言った。

「結果は、合格だよ!いやぁ、素晴らしい。エルフリーデの初撃を躱しただけでも充分な評価に値するよ。今までの幹部候補達は一撃で死んでしまったからね。流石はドクターの最高傑作」

 ワイズマンはスッと手を差し出した。 

「ボス、握手ですか?」

「ああ、私は森羅君を正式に幹部として迎えいれる。その歓迎の握手さ、他の者達も異論はないな?」

 ワイズマンの問いかけに異を唱える者は居なかった。


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スカウトされたので異世界で悪の組織に入団してみた オズ @astrea00

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