スカウトされたので異世界で悪の組織に入団してみた
オズ
第1話 ある日の非日常
俺には何の取り柄もない。
根性があるわけでも、努力が得意なでもない。
ただ、流されてきた。
そうやって過ごしてきたら、いつの間にか歳だけとり毎日終電で帰る始末。
生きる為には仕方ないと割りきり今日も泥のように眠る。
不思議な声が語りかけてきた。
『つまらない、君の人生は余りにも。この世界にも生にも今の君には意味がない。君もっと貪欲に生きるべきだ』
何故か声に言われた事に納得してしまう。
自分でも分かっていた。
「...そんな簡単に人間は変われないさ」
『変われるさ、私と来れば。共に行かないか?
こんな窮屈な世界も日常もお別れして生まれかわろう』
声に導かれるままに歩きだす。
暗いトンネルの中を歩いているようだ。
小さな光が見えた。
だんだん眩しくなっていく景色。
思わず目を閉じたまま歩く。
すると、何処か聞き覚えのある声がした。
目を開けると声の主が立っていた。
「ようこそ、石動森羅君。歓迎するよ、私はこの世界で悪の秘密結社【カラミティ】のボスをやらせてもらってるワイズマンと言う者だ。君をこの世界に招いた張本人さ」
ワイズマンは黒いスーツ姿にオールバックの黒い髪。
しかし、ネクタイはしておらずシャツのボタンを二つ開けていた。
「貴方が俺をこの世界に? 俺は元の世界ではただのサラリーマンですよ、貴方の言う組織で活躍出来るとは到底思えない。精々、戦闘員止まりがいい所だと思います」
森羅の言葉にワイズマンは相づちを打っていたが、ゆっくりと口を開く。
「安心したまえ、森羅君。君は新しい幹部候補だ、もちろん正式に認めて貰うには他の幹部達の同意が必要だがね。君は我が結社で新生するのさ、その名を捨て、人としての生を捨て、【カラミティ】の幹部として是非とも私に力を貸して欲しいのさ!」
ワイズマンは両手を広げ力強くいった。
その表情は嬉々としており、同時に圧倒的な威圧感も感じた。
「具体的に俺はどうすればいいんでしょうか?」
「君には我が結社が誇る天才マッドサイエンティストによる改造手術を受けて貰う。もちろん、失敗すれば君の命はそれまでさ。しかし、私は森羅君なら無事に成功すると確信している。無事に手術が成功したら結社の一員としての名前を与えよう、楽しみにしておいてくれ!」
ワイズマンはそう言い残し姿を消した!
再び眩しい光に視界を奪われる。
次に目を開けた場所はベッドの上だった。
体が動かない。
手足は拘束されていて、体も動けないように縛られている。
声を出そうにも何故か声がでない。
程なくして、扉が開いたような音がした。
それと同時に全身に激痛が走る。
「おや、まだ意識があったのか。大した精神力だけど果たしていつまで耐えられるか?」
顔を覗き込むように現れた白衣の怪しい人物。
「ボスから話は聞いてるよ、君を改造してほしいと頼まれてね。私は【カラミティ】の幹部の一人、ジェイドだ。皆からはドクターと呼ばれている。君も気軽にドクターと呼んでくれてかまわい」
ジェイドは軽い自己紹介をして手術を続ける。
どれくらいの時間が経っただろうか?
意識をかろうじて保っているが体には力が入らない。
「おめでとう、新入り君。手術は無事に成功した。私の手術を長時間耐えた人間は君が初めてた。改めて歓迎しよう」
パチ、パチとジェイドは拍手をした。
「今はゆっくり眠りたまえ。目が覚めたらまた会おう」
ジェイドがパチン!っと指を鳴らすと意識がブラックアウトする。
◆◆◆◆
「ジェイド、例の新入りの手術はどうだ?」
ワイズマンは椅子に腰掛け聞いた。
ジェイドは嬉々とした表情を浮かべる。
「ボス、手術は大成功しました!最高傑作とも呼べる存在です。直ぐにでも幹部として活躍できます」
ジェイドは饒舌に続ける。
「あれ程の適合率が高い人間を見たのは初めてですよ。流石はボスが直々にスカウトしてきた人間」
「そうか。ジェイド、他の幹部連中を召集しておいてくれ。最高傑作の御披露目といこうか」
「御意、大至急手配いたします」
ジェイドはワイズマンに会釈をしその場を去る。
「石動森羅、君の力存分に見せてもらおうか。
私の目に狂いはなかった事を証明してくれ」
ワイズマンは静かに笑っていた。
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