第26話

026

“言い寄ってくる彼らに、自身に近づいたらどうなるか”を見せしめよう、と。元々、ごろうにとって人助けなんてものはどうでもよかった。それよりも人が苦労していたり、どこか不幸に顔色を染めている方が心が躍る。ごろうは純粋に人が不幸であることに、幸福を見出せる人間だったのだ。それが近しい人間であっても、遠い人間であっても、変わらない。しかし、それを大多数に対してやることは、どう考えても効率が悪い。だから、見せしめとしてたった一人を痛めつけることで、周囲に勝手に認知させよう、と思い至ったのだ。




027

時には味方として接し、時には頼り助けを求めることで、相手の気持ちを自分に引き寄せていく。そうしてここぞという時に、裏切るのだ。『そんな約束、した覚えはない』『君なんぞが、俺の為に何ができる? そのよく回る口で言ってみろ』等と口にしては、その絶望に染まった顔を堪能する。常に一人を標的にするため、壊した人間はそう多くは無いものの、あまりにも外道な所業を見た奴らは、思惑通りに勝手に身を引いて行った。もちろん、それでもいいと媚びてきた人間は居たが、それらも同様の仕打ちをしてやれば泣き喚きながらどこかへと去って行った。

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