第12話
012
お姫様だっこされていることに気づき、慌ててキヨラに下ろしてもらうよう頼んでいれば、それを見たキヨラのお母さんが「早く食べないと遅刻するわよ」と二人の仲を笑いながら見守り、声をかけた。「あぶなかったね」と笑うキヨラに、破裂するかの様な心音で汗だくになった私は、全身が真っ赤に火照ってしまう。「ありがとう」と蚊のなく様な声でキヨラに礼を告げ、今度は落ち着いて降ろしてくれる様に頼んだ。「てへっ」とペロッと舌をだし、キヨラは王子様の様に丁寧に私を腕からおろした。キヨラが私の襟を直し、「早く食べよう」と満開の笑顔で言う。私は「うん」と小さく頷き、キヨラの後ろを追いかけた。
013
朝ごはんを詰め込み、学校へと登校した私は羨望の眼差しに晒されながら、自分の席に腰を下ろした。キヨラちゃんの人気は衰え知らずだ。授業が始まり、私は意識を宙へと投げる。思い出すのは、昨日キヨラちゃんが寝る前に話してくれた事の数々だった。──紀眞家は昔、差別に苦しんだ血族婚の一族であること。そしてドライヤーガン戦士として「妄執」という、怒り狂い、人で無くなった元人間をハントする特殊警察の身分であること。……夢物語のようにも思えるそれらを、私は何度も何度も反芻する。
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