第10話

010

聞くことを諦めた私は、寝てしまったキヨラを見つめる。モデルの子の様な、小さな顔にどきまぎが止まらない。私はキヨラから打ち明けられた話を思い浮かべ、結局眠れないまま、眠たい朝を迎えた。ゆっくりと布団からでるキヨラは、隣で呆けているトオルに「おはよう」と告げて、着替えだした。私は何だか見てはいけないような気がして、上布団で顔を隠してキヨラが制服に着替え終わるのを待った。




011

「さきにいくね」とキヨラの声が聞こえ、次いで階段を小気味良く歩く音が聞こえた。私はようやっと布団を下げると、呆けた頭にげんこつをいれて、急いで制服へと着替えた。動揺にボタンが上手くとめられなかったけれど、仕方がない。なんとか制服に着替え、私も下へと降りていく。転ばない様に慎重に足を踏み出し、──ずるりと置いたはずの足が滑った。慌てて手を伸ばすが、それよりも早くたまたま階段近くに来ていたらしいキヨラにキャッチされた。無意識に瞑った目を開いて、キヨラを見る。「大丈夫?」と聞かれ、私はどくどくとうるさい心臓に手を当ててコクリと頷いた。

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