第14話

014

嘘、とは思えない雰囲気が、キヨラの言葉には詰まっていた。未だ幼い子供である私には、難しいことはあまりよく分からなかった。けれど……『元人間をハントする事』が“どういう事”なのかは、何となく想像がついていた。それを言ったキヨラが、その時だけはどこか悲しい表情をしていたから。私は考える。それが『悪を成敗する』という事は分かるけれど、その『正義』は人から見ればただの『人殺し』で。でも、きっとそれがないと私たちは皆『妄執』に囚われてしまうのだろう。良い事……なのだろうけれど、私には『いい事』だと言い切る事は出来なかった。——是か非か。寝不足の頭では、授業が終わるまで結論は出なかった。




015

「そろそろ、お前たちも将来の夢について考えておくんだぞ」そう言って笑う先生は、教壇を下りて教室を出て行った。ついさっきまで道徳の時間だったのだ。教室がガヤガヤと賑やかになるのを横目に、私は自分の机の引き出しからノートを取り出した。どのノートよりも草臥れている紙の集まりは、自分だけの秘密のノートだ。先生の言葉が脳裏を過る。——私の、夢。それは、人気漫画家になることだった。


少女漫画のようなキラキラした世界が描きたい。可愛い女の子たちが自分らしく、悩み、葛藤して成長していく姿を、私が描くのだ。そう意気込んで、私は何作も描き続けている。途中で終わっちゃったのもあるけど、でも、描くのは授業を受けるよりも楽しい事だった。

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