第4話

004

視覚障害者の私は、同じクラスであるキヨラと『婚約者関係』になるはずだった。しかし、私は”トオル”なんて名前をしていても、立派な女の子。もちろん、由緒正しい家系で女の子同士の婚姻を結ぶことは出来ない為、そういう関係にはならなかった。最初は男に生まれなかったことへ申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、一緒に過ごしていくうちに、それで良かったと思うくらいには紀眞キヨラは学園のカリスマ的存在——つまり、みんなの憧れの的だった。




005

老若男女を魅了する彼女は、頭脳明晰で運動神経も抜群。人当たりもよく、見目は驚くほど整っていた。お人形と並んで立っていたらわからないくらい。そんなキヨラは、内気で漫画家を目指す私には、もったいないくらいの存在だった。……同性で良かったと胸を撫で下ろす反面、こうしてきびきびと働くキヨラに「素敵だなぁ」と心の中でひっそりと憧れる。“デキる女”というのは、凄くカッコイイ。

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