第2話

002

――私、匕背(さじせ)トオルは見てしまった。自分と同じ小学3年生の紀眞(おのれいま)キヨラが、シュロ細工の加工場で数日間社長をしているのを。クラスメイトであり、婚約者候補として一緒にいることの多い彼女が、何故シュロ細工の加工場なんかに居るのだろうか。そんな疑問も他所に、彼女は笑いながら作業員を激励していた。大人たちは快く応えていて、彼女がここに居る違和感何て物ともしてない。




003

たくさんの木に囲まれた一帯にある加工場。——その植物がシュロだと解ったのは、以前キヨラちゃんの庭に2本の木が生えていたのをみて、「椰子の実の無い椰子?かわってるね。」と問いかけたところ、「あれはシュロの木だよ」と教えられたからだ。そういうのが好きなのかと首を傾げれば、「いつか教えてあげる」と微笑まれたのだ。長細くて変わった木だと、思った事だけは覚えている。

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