06:小説執筆指南書はあんま鵜呑みにしなくても

 もう最初に言っちゃう。

 純文学系の小説なら保坂和志の「書きあぐねている人のための小説入門」。

 エンタメ系なら日本推理小説協会が出してる「ミステリの書き方」。

 この二冊、どちらも素晴らしくて、


 はてさてどういうことかというと、まず両方とも、小説家自身が書いているということがよろしい。

 世の中批評家やら某やら、小説が本業ではない人が書いた「新人賞の獲り方」みたいな本が跋扈ばっこしておる。

 しかしながらそれらを読むと、大抵は『受験対策的』で、酷い本になると、「○○枚の小説なら時間経過は○年にすべし」とか書かれててもう阿呆かと。

 

 それらに比べると、上に挙げた二冊は説得力が違う。

 最初に俺が読んだのは「書きあぐねている人のための小説入門」は、それまでの俺の書き方とは真逆の手法が書かれていた。

 曰く、


「事前案は湯水のように捨てる」

「登場人物に社会的形容詞を設定する必要はない」

「先にオチを決めない」


 等々、これまでの私の『設定厨』っぷりと正反対のことが書かれており、しかし「小説家はオピニオンリーダーではなく観察者」、「物語の身体性」といった言葉は深く胸に刺さった。また、様々な小説から引用が多く、そちらに興味を惹かれ読んだ本もあった。


 がー、一本この本の手法に沿って書いてみたところ、


「八壁ゆかり史上最高の黒歴史小説」


 が爆誕してしまった。


 そして俺は悟る。

 

【書き方はそれぞれだから、色んな指南書読んで、いいとこ取りしよ】


 そんな流れで、ミステリを書こうと思って、後者、「ミステリの書き方」を読んだのだけど、これがまたとんでもなく豪華なメンツによる『俺はこう書く』という手法を惜しげもなく晒した鈍器本でな!

 あくまでも『ミステリ』の書き方なんだが、伊坂幸太郎が「冒頭の書き方」を教えてくれたりしてたらフツーに読みたくね?

 まあ、当然ながら、様々な小説家が「オレ流」の執筆法を披露してるわけだから、一冊の本の中で矛盾が多発している。でも俺はそこがいいと思ったんよ。


 

 最近、この二冊を読み直そうかなと思うことが多い。

 新連載である「新連載『赤むらさきの森で待つ』」でPVがあんま伸びなかったり、ローカルで書いてる小説がまったく進まない現状を打破するには、一度自分のプロット・メイキングや文体の『』を洗い直す必要がある。

 その際に、この二冊は有効だと強調して終える。

 

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