Dying~Planet

柊里美

第1話

私の名前は《ディーヴァ・ロマノヴァ》。


年齢は17歳。


『アルカナ』と呼ばれる孤児院で生活している。

ここでは親に見捨てられた子どもたちが私を含めて11人生活している。


「ねえディーヴァ。ちょっと話がある」


私が孤児院の広間を掃除していると、後ろからオスカーと呼ばれる少女が急ぎ足で近づき話しをかけてきた。


「ごめん、今掃除中だからあとにして。」


「だめ、今じゃないと間に合わない」


そう言うとオスカーは私の腕を引っ張り、広間を出た先の階段裏に連れ込んだ。


「もうなに!シスターに怒られるじゃん!」


私は声を荒げ、オスカーの手を振り払った。


「いいから、これ見て」


オスカーが差し出してきたのは、とある日記帳だった。

タイトルには『カテゴリー5』と書かれている。


「待って、シスターの日記帳盗んだの!?」


私は驚きのあまり声を上げたが、オスカーはすぐに口元に指を当てて静かにするように促した。


「シ―!大きな声出さないでって!とりあえず中開いて見て。そこにあたしたちについてヤバい事書いてる」


私は言われた通りに日記帳を開いた。


するとそこには私とオスカーを含めた6人の名前に✕や◯といった記号と「超越者の可能性」や「ポーション行き」、「経験値行き」などの注釈が記されていた。


そして更にページを進めると、「カテゴリー5以下は処分」と書かれ、実行日に今日の日付が書かれている。


「処分ってなに…どう処分されるの」


私は得体のしれない恐怖に震えながら呟く。


「わからない。でも、とにかくこれを皆に知らせ…」


オスカーの声が止まった。


視線も私から私の後ろへと移動し始める。


「あなたたちー?」


後ろから突然、両手で肩を掴まれた。


「掃除をサボって何をしているのかな?先生に黙って内緒のお話?」


シスターは微笑みを浮かべつつ、鋭い目で私たちを見据えていた。


私は咄嗟に日記帳を服の下に隠す。


「い、いえ。今日のお昼ご飯に嫌いなものが出たらお互い交換しようかなって…話してて」


私は必死に平静を装いながら答えた。


「ふーん。あっ!それより、先生の名前が書かれた日記帳を見なかったかな?どこかに落としちゃったみたいで」


シスターは優雅に首を傾げて尋ねたが、その目には冷酷な光が宿っていた。


「し、知らないです」


「あたしも」


次の瞬間、シスターは私の体を自らに引っ張り、抱擁し始めた。


「ひゃっ!」


私は驚きと恐怖で声を上げた。


「あら、どうしてこんなに心臓を鳴らしているの?いつものスキンシップじゃない。ねえ?オスカー。」


シスターの甘い声が耳元でささやかれ、私はさらに緊張した。


「は、はは…」


オスカーも無理に笑顔を作りながら答えた。


「そっか。知らないならしょうがないわね。うん、じゃあ掃除頑張って」


そういうとシスターは私の体から手を解き、その場から離れていった。


「はぁ…死ぬかと思った」


私は深いため息をつき、心臓の鼓動を落ち着かせる。


「ごめん、ディーヴァ。あたしのせいで」


オスカーは申し訳なさそうにうつむいた。


「いや、別にいいよ。それよりも聞いた?」


「え?」


「ほら、さっき私たちに、先生の名前が書かれた日記帳を見なかった?って聞いてきたでしょ?これ」


私はさっきの日記帳を服の下から出し、その表紙をオスカーに見せる。

表紙の下部に責任者『ダミアン』と名前が記されている。


「ほら、ここに書かれた文字。これが先生の名前って事。よっぽど動揺していたのか知らないけど、私たち今まで一度もシスターの名前なんて聞いたことないでしょ?」


「あぁ…たしかに。あたし、昔から何度か聞いてみた事はあったけど、その度に《天使の生まれ変わり》だとかなんとかで名前がないって」


「私もそれ聞いた。すっかり信じ込んでたよ。もう一体どこまで嘘つかれてたんだか。とにかく、この事を皆に伝えなきゃ」


「でも今動いたら怪しまれるかも。シスター、完全に疑心暗鬼になってるし。それに知らせた相手がもしチクったら」


オスカーは不安げに周囲を見回した。


「その時はその時。怯えながら処分されるのを待ってても、しょうがないでしょ?」


「あぁ、それもそっか…わかった。じゃあ、あたし他の皆を集めてくるよ」


私たちはその後、屋敷に散らばっていた皆を、外の小屋へと集めた。

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Dying~Planet 柊里美 @nagumo4126

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