第91話 普通

 俺とサオリは、ショッピングモールでの買い物を終えて誰も居ない家丶丶丶丶丶に帰って来た。


 "二人っきり"それを意識するだけで気持ちが高ぶって来たけれど、なんとか抑えつつ俺は自分の部屋に、サオリは隣の弟の部屋で、楽な服装に着替えた後に夕食の準備を進める事になった。


 ―――今日の晩御飯はレバニラ炒めだ。せっかくなので新鮮なピンクの色合いがつややかで、新鮮さを感じさせてくれる美味しそうなお肉が俺たちを待っている。


「いっくん、先にシャワー浴びて来ちゃって」


「いや、何か手伝うよ」


「それじゃ、ニラだけ洗ってもらえる。こっちはお肉の下ごしらえするから」


 二人で話した後に手分けして下準備を進める事になった。


 やってみるとわかるけれどニラって扱うのがちょっと面倒だな。痛んでる所がないか、一本づつ確認しつつ土を丁寧に落として行くと言う作業をしないとならない。


 サオリは、レバーの脂肪や血管を取っていってそれから冷水につけて臭みを取って行く。最後に牛乳に漬け置きをして一旦休ませる。その処理が、結構時間がかかるらしい。


「ありがと。残りやっとくから先にシャワーしてて」


「それじゃお先に」


「はーい」


 ――――お手伝いが終わったので、一旦自分の部屋に戻ってから着替えを取って来てシャワーを浴びる。その時に余計な事をどうしても考えてしまいそうになる。


 その煩悩を振り払う為にシャワーを冷水に変えて、頭と体を冷やした。


 さっぱりしたので浴場から出てヒゲを剃ってムダ毛処理をして、と。


 歯は…………ご飯食べた後だな。ついつい鏡の前でじっくり観察をしていると。


「いっくん〜いつまでシャワーしてるの?」


「もう終わるから、ちょっと待ってて」


 サオリに呼ばれてしまった。思ったよりも時間経っていたらしい。少し慌ててリビングに戻った。


「遅くない? ナニしてたの?」


「ヒゲ剃ったりとかしてた」


「ふーん。そうなの。それじゃ、お鍋の方みてて。味噌入れてるから沸騰させない様に気をつけてね」


「おう。沸騰すると味噌の中の乳酸菌が死んでしまうんだったよな。覚えてるよ」


「そうそう。まぁ、よくわかんないけどね。ちょっと味が薄くなった気がする? くらい?」


「だなぁ。よくわかんないよな。 ――――でもちゃんと見てるよ」


 前に親から言われてたのにちゃんと見てなくて怒られたんだ。沸騰してしまっても正直違いがよく分からないけれど。


 少し時間有りそうだったので、充電してたスマフォを取りソシャゲのデイリーミッション済ませならが過ごしてると。鍋が少し沸騰して来たので弱火にしてまた待つ。


 コトコト、グツグツ――――カタカタ


 しばらくして、そろそろ良さそうになり火を落としてからリビングに移動してから、軽く筋トレを始めた。


 今日はなんとなくお腹周りの筋トレをやりたくなった。だから体幹を中心に筋トレして過ごしているとサオリがシャワーから戻って来た。


「戻ったよ。ちゃんと見ててくれた?」


「おう、沸騰したから火を落としといた」


 サオリは、少し急いで戻って来たのか髪の毛が少し湿気っている様だった。そんなに心配しなくてもちゃんとやるってのにな。


「髪の毛乾かす? まだちょっと濡れてる様だし」


「ん。それじゃお願いしようかな」


 本人の許可が出たので、俺はドライヤーを持って来て髪の毛を乾かし始める。普段女の娘の頭を触るなんて事はないから、不思議な感じがする。


「どんな感じでやればいい? なんかヘアサロンとかだと、後ろ髪をこうフワッフワッっとやる感じ?」


「そうだね。後ろ髪の方をこう持ち上げながら、細かく乾かす感じでやってみて」


 お互いにああでもない、こうでも無いと言い合いながら乾かしていると終わってしまった。それがなんだか、名残惜しい。


「それじゃ、レバニラ炒め作ってくるから待ってて」


「わかった」


 さっき髪の毛を乾かした時に感じた残り香を楽しみつつ、サオリの後ろ姿を見送った。それから改めて筋トレを始めていると、台所から良い匂いがしてきた。


 ――――やがて香ばしい匂いが漂って来る。


「腹減ったなぁ」


 何かを口に入れたくなった俺は台所に向かって、冷蔵庫からバナナ豆乳を取り出して喉を潤した事で乾きが落ち着いた。


「そろそろできるよー。お皿出しといて」


「おっけ」


 レバニラ炒めと味噌汁、それに用意してあったサラダの配膳を終えてからサオリと隣あって座ってから食事進める。


「「いただきます」」


 レバーは、もともとつややかなピンク色で癖のなさそうな見た目なのに熱を入れる事で途端に黒く変色をしてしまう。


 味も内臓の中では個性的で、いっぱい食べようと思うと少し抵抗感を感じるのでそんなに好きじゃない。けれど、栄養価が高いからママがちゃんと食べさないと言いながらたまに作ってくれる。レバニラ炒めとはそんな料理だ。


 ――――するとなんだか、母親の事を少し思い出してしまった。


「どう? 美味しい?」


「ん。普通」


「何それ、せっかく作ったのにヒドイ」


「普通に食べれるレバーってだけで、すでに美味いと思う…………」


「言いたい事はわかるけどさ。なんか嫌」


「普通に美味しいよ。このレバニラ炒め!!」


「遅いよ。バカ…………まぁ、確かに普通だけど」


 この普通のやりとりが良いんだよ。そう思って、サオリの頬にキスをした。


 そうしたら、彼女もキス仕返してくれたのでそのまま口と口でもキスした。お互いにニンニク臭い筈なのにその時は全く気にならなかった。


つづく

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あとがき


投稿遅くなりました。


レバニラもエロく書こうと思ったのですが、

調理後だと真っ黒だし思いつきませんでした!!


それと、この小説のPV数が20万PVを超えました!!

書き始める前はまさかこんなに行くだなんて………びっくりです。

ここまでお読み頂きありがとうございますっo(^▽^)o

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