第88話 嫉妬

「こんにちは、久しぶりだね」


「え? 誰ですか?」


 アタシは見覚えのない人に声をかけられたけれど。誰だか分からない。


 今日はずっといい気分だったのに台無しだよ。なんなんだろうこの人? ナンパ?


「あれー。人違いかな」


「そうだと思いますよ」


「そっかー。今日、会った中で一番かわいいし。見間違えかもしれないね。 ―――それじゃ30分、いや15分で良いからそこでカフェしない?」


「いえ、彼氏待ってるんで結構です」


「へぇ、彼氏居るんだ。それじゃ彼氏と一緒でも良いからカフェしない?」


 !?!? 彼氏居ても良いってど言うこと? 何がなんだか分からない。


「本当なんなんですか人を呼びますよ?」


「えぇ、釣れないなぁ。でもやっぱ可愛いな。今日はお洒落してきたの?」


「そうですね。今日はお洒落してきました」


 アタシがどう対応したら良いか困ってると…………いっくんがやって来た。助かったよ。


「あの。なんか用ですか? 俺の彼女に」


「お、彼氏君か! 本当に居たんだね」


 そう言いつつ、ナンパな人はアタシ達にウィンクしてきた。それがなんか似合ってる。フリーの娘なら付いてちゃうかもしれないなぁ。そう思った。


 そんな相手にいっくんは警戒しながら、近づいて来てくれて手を握ってくれてアタシに優しく話しかけてくれた。


「大丈夫? 何もされてない?」


「うん。大丈夫、話してただけ」


「そっか、よかった」


 その手がとても頼もしく感じてお互いの存在を確認しあってると、ナンパして来た人は今度はいっくんに声かけてきたんだ。


「君もやっぱ見覚えあるなぁ。どっかで会ったことある?」


「え? 俺ですか? 初対面だと思いますけど」


「そっかー。それじゃ二人ともでいいから一緒にカフェしない?」


「いや、今日は彼女とデートなんで無理です」


 いっくん、はっきり言ってくれた。そこまでハッキリ言ってくれると照れちゃうな。 ――――今すぐハグしたい。クンカクンカしたい。


「それじゃ、今日はいいや。また会ったらよろしくねー」


「えぇ、会うことは無いと思いますけれど」


「そうかなー。そんな事ない気がするけれどねー」


 そう言いつつ、ナンパな人は去って言った。本当になんだったんだろう? 普通のナンパじゃなかった気がする。


「……………なぁ。サオリ」


「ん。なに?」


「さっきの人さ。気のせいじゃなければ……………女の人じゃなかった?」


「え!? よくわかんなかった。 ――――そうなの?」


「あぁ、あの尻はry」


 隣の男が、おかしな事を言い出しそうだったので、アタシはスケベ男の足を蹴った。一度蹴ったらもっとムカついたので、もう一回蹴ってやったっ!!


「痛っ。おい、やめろ。 ――――ま、真面目な話だってばっ! あの揺れたしry」


 これか! この口が悪いのか!? そう思って今度は頭……………遠かったので、肩を手で叩いた。


 もうなんなのっ!! なんで、他の人のお尻の話するのよっ!? そんなにお尻が好きならアタシの触ってればいいでしょ!! 今朝みたいにっ!!


「ごめんて、でも真面目な話。あの人、女の人だと思う。でも見覚えないんだけどなぁ」


「アタシも知らないよ。年上で男性っぽく見える女の人だなんて………」


 二人で考えるがよく分からない。ナンパされてから雰囲気がぶち壊しだよ。



 ――――これ以上、無駄に時間使っても仕方ないのでコメダに行く事にした。


 まだ、席が空いてないのでしばらく待つ事になりそうだけれど。アタシ達の雰囲気は良くない。


「サオリ、ごめんってば機嫌なおしてくれよ」


「ヤダ」


「どうしたら機嫌直してくれるんだ?」


 ちょっと、困った表情をしている彼氏を見ているのがなんだか楽しい。これが、他の人が居ない所なら、いつもの様にハグして誤魔化されるんだけれど。今はそれが出来ないからね。


「自分で考えたら?」


「……はぁ………」


「は? ため息つきたいのはアタシなんだケド!?」


 なんなの!? メンドくさいって思われてる!? でも、悪いのはいっくんじゃないっ。他のお尻なんて見ないでよっ!


「そんなに怒ってるなら。もう帰るか? 怒りながら飲み食いしても美味しくないだろ?」


「は!? お腹減ってんだけど!? 帰りたいなんて思ってないよっ」


「じゃぁ、どうしたらいいんだよ」


「ん”っ!!」


 そう言いつつ、アタシは腕を広げていっくんが来るのを待った。ハグしてくれたら許す。


「ここでぇ?」


「嫌なの? 出来ないの?」


「そんな事ないけどさ。恥ずかしくない?」


「あっそ。じゃぁ、一人で帰るから。 ―――こんな事なら、さっきそのままナンパされてれば良かったな」


「そんな事言うなよ。いくら俺でも腹たつぜ」


 そう言いながら、いっくんはギュッと強く抱きしめてくれた。またさり気なくお尻触ろうとしてるし。分かってるんだよ? なにを我慢してるんだか。


「………嘘だよ嘘。 ――――好きだよいっくん」


「俺もだよ」


「………ちゃんと言ってよ」


「好きだよサオリ」


「うんっ」


つづく

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あとがき


サオリ視点でのツンデレ回


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宣伝


オタクな俺のことを嫌いな筈の幼馴染を振ったら ~なぜかタイムリープしてデレデレになっていた~

https://kakuyomu.jp/works/16816927863327690762/episodes/16816927863327694064


短編投稿しました。

2話とキャラ紹介で完結します。

よろしければこちらもお願いいたしますっ。

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