第81話 親子丼

 時間切れ、そう、時間切れだ。延長………するつもりはない。


「それじゃ、食べに行こうぜ。親子丼」


「そだね。親子丼、汁だくで」


「汁だく美味いからなぁ。って、牛丼かっ!」


「山本屋だよ♪」


「山本屋? なんかちょっと気になるな………っと」


 気になったらすぐググる。それが俺のジャスティス。山本屋とは、名古屋のうどん屋? 味噌煮込みうどんか ――――美味そう。


「へぇ。うどんかぁ。名古屋ねぇ」


「名古屋だなぁ。遠いなぁ。ってか名古屋って何あるんだっけ?」


「レゴランドはあった」


「あぁ、レゴランドね。レゴ高けぇんだよなぁ。なんかうちにもあるけど」


「そうそう。なんかあるよねレゴ。うちはパパが買ってたのが残ってる………」


 パパって事は、離婚した実のお父さんか。というかなんで、こんな風に話が進んでしまったんだ……気まずくなったので、スマフォを閉まった。



 気まずくなったまま、俺たち二人でリビングに戻って来た。


「親子丼もうできてるわよ♪ 汁だくホヤホヤよ♡」


「ママありがと! やっぱ分かってるぅっ」


 そう言いつつ、ハイタッチする母娘。通じあってるね!! 山本屋だねっ!!

それにしても美味しそうに見える。親の手作り親子丼………。


「ありがとうございます」


「そこは『美味しい親子丼頂けて嬉しいなぁ』で、お願いっ!!」


「美味しいだなんて♡ ダメよぉ私には夫が♡」


 なんで、ノリノリなんですか奥さん!! まぁ、ふざけてるだけなんだろうけど。そうだよねっ!?


「『オイシソウダナァオヤコドン』…………これでいいか?」


「もちろんシ◯ブ漬けで!! 汁だくだく、ヌルヌル!!」


「はーい。それじゃ。ヌルヌルいる人!!」( ´e`)ノ


「イるイるぅ♪」「よくわかんないけどください」


「なめこにする? 納豆? それとも、ワ・タ・シ?」


「なめこっ!!」「山芋で」


 なんとなく無い物をリクエストしてしまった。っていうか親子丼に納豆って合うのか? 試した事無いからわかんないな。誰か教えて!!


 あと最後の選択肢は………人間由来の調味料を"か、かけるの!?" まさかね。


「あぁ。なんて事っ!! 山芋はないのっ!!」


「まぁ、いつもある家ないんじゃないですかね?」


「じゃぁ、なんでそんな事を? あ、延長したいって事ね。分かったわ! 問題ない!!」


 違うっ。そうじゃない。ただ、山芋の方が合うかなぁ? そう思っただけなんだ。


「なめこでいいですよ。なめこで」


「で、いい?」


「………なめこが良いです」


「それじゃ、ちょっとまってねぇ」


 一気に疲れてきた。か、会話ってこんなに重労働だっけ…………なんか水飲みたくなってきた。


「ごめんねぇ。ママがはしゃいじゃって」


「だ、大丈夫。びっくりしただけだから…………とりあえず水飲みたい」


「はーい。ちょっとまてね」


 親娘して同じ様な言い方してるなぁ。さすが親娘。なんか、もう良い時間だなぁ。そう思って、もう一度スマフォを確認すると。サオリから返信が返って来てた。


サオリ:ご飯別って何かあったの?

いち:なんか、リナママに夕飯に誘われちゃって。親子丼する事になった。

サオリ:へぇ、そうなんだ。親子丼ねぇ。

いち:あぁ、健全な親子丼だから。心配ない。大丈夫だ。

サオリ:何それ、逆に気になるんだけど。

いち:シ◯ブは、入ってない

サオリ:ニュースになってたね。それ。生娘だっけ。

いち:だったな。

サオリ:とりあえず、アタシは一人で帰ればいいのね? 明日はどうするの?

いち:朝来て貰って、掃除一緒にしてくれると助かる。

サオリ:それじゃ。また明日。早く帰ってね。寄り道しちゃダメよ?

いち:大丈夫だって男だし。

サオリ:ƪ(˘⌣˘)ʃヤレヤレ

サオリ:とりあえず、写真撮ってから送って来なさい。本当か確かめたいから。

いち:分かった。


 って、信用ねぇなぁ。まぁ、無いよなぁ。だって、親子丼だぜ。この間、ニュースになってたくらいなんだ。


 でも、奈月さんは生娘では無いな………リナの方は、どうなんだろう?


 聞きたいような。聞きたく無いような。微妙な気持ちになる。サオリは………多分生娘だよな? そうだよな? 経験済みだとしたら、いつのまに!? 誰相手なの!? ってなって凹む。


 何度か、ベッドに潜り込まれた事はあったが、さすがに俺では無いと思う。さすがに気づくだろ? 気づくよな? エロ漫画だと、睡眠薬盛られてていつのまにか。


 みたいな展開あるけれど。夕飯作ってもらってた事あるから、いつでも仕込めるわけだが、食べた後すぐ寝ちゃった………みたいな事は無かったはず。


「もしもーし」


「ん? え?」


「もう準備できてるよ。いつまでボーとしてるの? niceboatしたい?」


「誰も居ません。大丈夫ですっ!! 居るわけないだろっ!!」


 用意されてた親子丼にはなめこが載っていて、向かい側には奈月さん。隣にはリナが居て、なんだか久々に家族の団欒を感じた。


 ――家族で思い出したが、そういやサオリと付き合い始めた事、親に伝えたっけ?


つづく

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あとがき


親子丼を頂く前には色々と儀式が必要(だからなんの話?)

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