第74話 お願い

 今朝、サオリのお母さんからの暴露があったせいで、何となく気まずくなってしまった俺たち。本当は手を繋いだりイチャイチャしたりしながら登校したいけれど。


 今日はなんだかそんな気分になれないでいた。それは、彼女も同じなのか何かを言いかけては止める。そんな事を繰り返してしまってた。


 本当は、髪型がいつもと違うサオリを褒めたりしたいのに、今それをしてしまうと何だか下心がある見たいな気がしてしまう。いや、下心は有るんだけどね。なぜか抵抗感を感じていた。


 そして、そのまま気まずい状態が続いたまま学校についてしまった……なんだか、とても損した気がする。


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「じゃ、じゃあ俺は自分の席に行くから。また後で」


「う、うん。また後で」


 あれぇ。おかしいな。なんで、こんな雰囲気になってんだろ。これもそれもあれも詩織さんが全部悪い。そういう事にしよう。


「おっはよー。どうしたん? なんか、倦怠期入った夫婦みたいになってるよ?」


「いや、結婚してねーよ」


 朝から、リナにからかわれてしまった。っていうか倦怠期ってなんだ。まだ………ん? 倦怠の対義語ってなんだ? なんって言ったらいいんだ? 発情期? はなんかおかしくないか?


「突然、何考えてんの?」


「倦怠の対義語を考えてた」


「はぁ? なんでまた?」


「いや、否定しようと思ったら、なんて言ったら良いかわかんなくて」


「細かっ、あれなの? 理系が恋してみた? そういや、最近アニメ始まってたね」


「証明してみた。じゃなかったっけ?」


「そうかも? ってか、ググればいいじゃん」


 それもそうだな。なになに。倦怠の対義語は、熱中または没頭? なるほど?  確かに今は、彼女に集中出来てないな?


「どんな感じだったん? ん〜? ―――はぁ、なるほど?」


 スマフォで検索し始めると、俺の近くに寄ってくるリナ。いや、近い近い。それに嗅いだ事のない良い匂いもする。新しいのでも買ったんだろうか。


「熱中ねぇ。サオリちゃんに熱中してる?」


「してるしてる。めちゃしてる。もう、ずっと考えてる」


「それじゃ、私には?」


「………どうだろ?」


「してるって言いなよっ」


「なんでだよっ」


「して欲しいのよっ。分かんないの?」


「今は、してる」


「"今"はね。―――あっ、そういえば、サオリちゃん髪型変わってたけれど、あれってなんで?」


「俺がお願いしました」


「へぇ。亭主関白ってやつ? さっそく旦那気取り?」


「いや、言ってみただけだって。なんかしたくなったんだよ」


 そう言いつつ、今朝のサオリを思い出してしまい。なんだか急に恥ずかしくなってしまった。相手を変えたいと言うのは、独占欲なんだろうか? 他の人から、指摘されるとなんだか恥ずかしくなってくる。


「それじゃ、私にも何かお願いしてよ。大抵の事ならやるよ?」


「えっ」


 隣の娘が、そんな事を言い出した。そう言われたら、じっくりと見てしまうじゃないか。この子は、いつもそういう思わせぶりな事を言って気を引いてくる。けれど、それが嫌じゃない。


「んー………」


「まだかな♪ まだかな〜♪ いった君のお願いまだかなぁ〜♪」


 と、どこかで聞いた様なフレーズの歌を歌い出したリナ。今日び聴かない歌だと思うんだが、どこで聞いたんだろう。そしてなぜ俺も知ってるんだろう。今年は一体、何年だったのか。よく分からなくなってきた。


「とりあえず。その歌やめてもらえる? 物語の時代設定がよく分からなくなる」


「えぇ、面白いじゃん。この歌」


「まぁ、そうなんだけどさ。最近の高校生は知らないと思うよ?」


「それもそうかも。それで、お願いは? 3つまで叶えてあげる♪ ちなみに1つ目は、もう叶えたっ!!」


 今度は、魔法のランプか………


「いや、1つ目はお願いはしていない。だから無効だ」


「それもそうね。それじゃ1つ目からどうぞ♪」


「それじゃ、全てのお願いを無効にするってのは?」


「ブブー。それは叶えられません♪」


 えぇっと。どうしたら良いんだ。たしか―――魔法のランプが出てくる物語では


①主人公が王子様になる

②主人公が死にそうになったので助けてもらう

③魔神を自由にする


 だったか? と言う事は、彼女は自由にしてもらいたい? 何から?  家庭環境から? それはなぜ? それとも、リナが、何度も言ってる二人目の彼女にして欲しい? よく分からないが、とりあえず1番目からお願いすればいいのかな?


「それじゃ、俺を――――――」

(って言えるかっぁぁぁつ!! 何が王子様だっ。そんなガラかっ!!)


「お願いが言えないのかなぁ? それじゃ、願いを叶えるまで、ずっと一緒だよぉ♪ 困ったなぁ♡」


 まるで、何も困ってないような。楽しそうな声色で、愉快に笑っている。リナを見て、もうこのままで良いか。そう思った。


つづく

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あとがき


ギャルはお願いを叶えるまで、離れてくれないっ!

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