第72話 変化

 俺たちのクラスの出し物が、アイスクリーム屋さんになりそうと聞いたその日。


----------------------------------------------------


 俺は、サオリが言っていたコールド・ストーンというお店の動画を見ていた。本当にやるかは分からないが、一度やると心に決めたら調べたくなってしまうんだ。


 それに、サオリにも良いところを見せたい。


『それでは、ようこそー。チキチキバンバン、チキチキバンバン、バンバン//// ♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪』


 な、なるほど………こんな形なのか、プレートの上でアイスを調理しながらテンポよく歌ってる。それに何曲もある見たいだし。これ結構練習が必要になるぞ。間違いなく。歌だって選曲しないとならないし。同じ場所にいるお客さんは一度歌を聴いてるんだ。同じ歌が連続したら詰まらなく感じるに違いない。


「いや、これマジでやるの? 調理はよく分からないが、歌が割と難易度高くね?」


 動画見ると、店員さんが両方やって居たが、高校生がやるなら歌うメンバーと調理メンバー分けるとか、何か対策考えた方がいいような。その場で渡すから、配膳係とかも要らない訳だし。


 それに、調理しながら歌うってのは、あんまり衛生的ではないと言う指摘もある。学校の教室なら、空間に余裕あるし分けた方がいいかな。あと、値段が31アイスよりも高いのが問題だとか。これは、文化祭であれば人件費のコストはそこまで考えなくていいから。楽そうだな。あとは、アイスをどうするか………ってなんで此処まで考えてるんだよっ。


 ただ、考えたらなんだか楽しくなってきたな。この案で確定するかは分からないから、結果次第だな。気になってた部分が解決したので、そろそろ寝るか。昨日、あまり寝れてなかったから、今日は早く寝たい………寝れるかなぁ。


---------------------------------------------------


 チュンチュンチュン


 翌朝、寝つきはちょっと悪かったが、なんとか寝れた。モンモンとして寝れない可能性もあったけれど、やっぱ疲れてたんだな。なんだかスッキリした。頭はな。


 ただし、朝立ちはバッチリしてる。今日は金曜日で、土曜日デートの後、サオリを誘うつもりだ。そう思ったらドキドキしてきた。なんだか、すぐサオリと話したい。昨日も朝からボイスしてたけど、今日もしちゃおうかなぁ。


 そう思って、スマフォを確認すると。サオリからメッセが来ていた。内容は『朝起きたら連絡して』だった。


 もしかして、同じ事考えてくれてたのかな。そう思って思わず口元がにやけてしまった。今、鏡をみたらきっと気持ち悪い顔をしているに違いない。それほど、このメッセが嬉しかったんだ。


 トウルルウルゥ


 早く出て欲しい。そう思って画面の前で待つ俺。あ、顔洗ってなかった。ちょっと身だしなみを整えてからの方が良かったかな。そう思ってしまったので、髪の毛を手櫛したり顔のあたりを揉んだりし始めてしまった。


『おはよー。今起きたの? っていうか、なにしてんの?』


「おはよ。あぁ、今起きた」


『それはわかったけど。何してんの?』


「ちょっと髪の毛が気になっちゃって、あと顔も」


『はぁ、それなら、キチンとしてから連絡すれば良いのに……でも、すぐ連絡してくれてとっても嬉しいよ♪』


 喜んでくれている彼女がとても可愛い。なんで、俺は付き合う前にもっと連絡しなかったんだろう。


 高校デビューする時にサオリとの距離が開いた様な気がしていたが、俺の家に来る時に『覚悟』をして来ていたと言うのを知ってから、もう全ての過去の記憶が色付いて見えるし。こうやってただ話しているだけで、気分が弾んでしまう。


「喜んでくれて嬉しいよ。そっちは大丈夫?」


『少しまったりしてたとこだから大丈夫。あとで髪の毛用意するけれど』


 そういう今のサオリは、最近学校に行く時はアップにしている姿とは違い髪の毛が下がっていて、セミロングの毛が肩にかかっている状態で、どこか彼女の母親の詩織さんを思い出させる雰囲気だった。サオリも母親になったらあんな風になるんだろうか。その時に隣にいるのは俺であって欲しい。そう思った。


「なぁ、ちょっとお願いなんだけど」


『ん? なに?』


「今日は少し髪型変えて行くってのはどう? ほら、失恋したら髪の毛切るって言うじゃん?」


『なんで、そんな例出すのか知んないけど………それで?』


「付き合ったら髪型変えるってのはどう?」


『なにがどう? なのか私の彼氏が言ってる事が分からない件』


 なんて言うか、こう………


「俺の言葉で彼女が変わったら嬉しいな。ってそう思ったんだ」


 そう、俺がサオリに言われて、痩せてみたり髪の毛切ったりとかしたみたいにな。気になる相手の言葉で、変わるってのは憧れる展開だよな。


『………んんっ。言うじゃないの………ちょっとキュンってキちゃった♡ それで、どうして欲しいのかな?♪』


「なんだっけ、あれ、えーと。たしか、ゆるふわってやつ?」


『毛先くるってしてる。あれ?』


「そうそれ! 一回見てみたいなっ!」


『それなら、パーマーお母さんに借りないと………だから、一旦切るよ』


「おう! 迎えにいくよ。直接見たいしっ」


『それじゃ、またあとでね』


 そうして、ボイスが切れた。なんだか初めて、サオリにこうして欲しいってお願いした気がする。好きな女の娘が、自分の言葉で変わる事があるだなんて………と期待してしまう自分が居た。


つづく

---------------------------------------------------

あとがき


気になるあの娘が、自分の言葉の影響で変わった時

『も、もしかしてこの娘、俺に気があるっ!?』って思わない男子は居ないっ。


---------------------------------------------------

お知らせ!


高校デビューした幼馴染について

@chigethi さんの表紙企画にて、サオリとリナの表紙絵を描いていただきました!


https://kakuyomu.jp/users/kaisetakahiro/news/16816927862866214581


ヒロインの二人がイメージ通りで可愛いっ!

いっくん人形もお気に入りです!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る