第71話 なにする?
「とりあえず。レシートは、これな」
「ん、確認するね」
そう言いつつ、レシートを渡す時に指と指が触れた。ただそれだけなのに俺はもっとサオリの事が好きになったと感じた。
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「はぁ」
自分の席について、思わずため息をついてしまった俺。
「おはよ。どうしたん?」
「サオリの事考えてた。自分で考えてた以上に好きになってたらしい」
「なにそれ、惚気?」
「そうかもな…………あ、そういえば、サオリとアロマ買いに行く事になったんだけれど。どこ行けばいい?」
「んー。ちょっと待ってね」
そう言いつつ、リナはスマフォを取り出して検索をしはじめた。その横顔を見ながら、やっぱりこの娘は素直で可愛いな。と思った。昨日、金城先輩と一緒に行ってしまう時に感じた、焦りに似た何かが結局なんなのかはまだ分からないけれど。一緒に居たいとは感じる。
「ここが良さそうかなー。って、どうしたん? さっきから?」
「リナともずっと一緒に居たいと思ってた」
「も、ってのが気になるけど。その、アリガト」
そう言いつつ、スマフォを差し出してくる。どうやら見ろって言う事らしい。見せて貰ったのは、カフェが併設されてるアロマのお店で、デートにも都合が良さそうだった。
「良さそうだな。これ、メッセで送ってくれる? ん? どうした?」
隣の娘から反応が無いので、そう聞いて見ると。彼女はとても幸せそうな顔をしていて思わず、鼓動が早まった。それにやや青みかかって、少し潤んだ瞳に吸い込まれそうな感覚があった。
「ずっと、ずっと一緒だよ? 離れたくないよ? いいの?」
「あ、あぁもちろん」
「ウソは、ダメだよ?」
「そんな事はないって」
って、なんで告白した? みたいな流れになってんだ。嘘でしょ? これってあれ『お前の味噌汁が毎日飲みたい』的な、なんかそれ?
でも、思っても無い事は言ってないし。訂正する気にもならない。そんな事をしたら何かが壊れてしまいそうに感じたんだ。
見つめあったまま時間が過ぎてしまい、授業が始まってしまった。それからは、いつも通り授業を受けて、お昼は3人で食べたんだけれど。なんだか俺だけ、幼馴染二人に対する距離感を掴めずにいた。
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その日は、サオリがすでに連泊している状態だったので俺の家には来ず。解散となった。あと、伊藤さんは、ひとまず金城先輩と軽い交際から始める事にしたらしい。
先輩の方も、文化祭の用意やら受験やらで忙しくなってくるし。文化祭デートをする約束はしたんだとか。そういや、サオリともデートしたいな。と思ったけれど、クラス委員はなんだかんだ仕事あるから、ちょっとしか時間取れないって事だった。そんなものなのか。
リナを先に家に送った帰り道。
「そういえば、文化祭ってうちのクラス何やんの?」
「それね。議長の先輩がずっと止めてたんだけれど。この間、金城先輩たちも協力してくれたおかげでやっと決まりそうでさ」
「うん。それで?」
「まだ、本決まりじゃないんだけれど。うちはアイス屋さんになりそう」
「アイスか………悪くないけど。ただアイス売るだけじゃつまらなくない?」
「うん。なんか、こう歌ってアイスを提供するお店にするつもり。コールド・ストーンって言うお店知ってる?」
サオリが、マイクを持ってるジェスチャーをしつつおどけた様な仕草をしはじめた。
「あぁ、そういえば、そんな話題あったような………」
「案出しの時にアンタも居たでしょ」
サオリにため息つかれて、スマフォで動画を見せられた。
店員さんが、提供する時に楽しく歌ってる感じで、なんだかとっても楽しそうだし。それに可愛い。たしかにこんなお店なら一度は行ってみたくなる。
「これ、本決まりになったら。いっくんにも歌ってもらうから」
「ええぇ!? そんな話は知らないよっ」
「言ってないもん」
「いや、もんじゃなくてさ」
「アタシは、彼氏がみんなの前で歌うのを見たいの………ダメ?」
そう言いながら、サオリが上目遣いで見てくる。そんなお願いの仕方するなんて卑怯だぞ。今の俺は、前と違って彼女のお願いを断れる気がしない。
「ダ、ダメジャナイヨ」
「ま、嫌ならいいよ」
そう言いつつ、サオリがそっぽを向いてしまった。嫌そうなのが伝わってしまったんだろうな。
「正直、みんなの前で何かをするのは嫌だけれど」
「だけれど?」
「俺、頑張るから、応援してよ。そうしたらやれる気がする………どうかな?」
「どうかな? も何も、応援しないわけないでしょ。自分の彼氏なんだし。ね♪」
「うん。俺、頑張ってみるよ」
そう言い合って、俺たちはなんだかおかしくなって声をだして笑ってしまった。
つづく
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あとがき
コールドストーン、調べてみたらもう2店舗しかないんですね………
なんてこったい。まぁ、感染症対策と真逆のコンセプトですからね(汗
でも、文化祭には相性良い気がしますので、ネタにしました。
女子高生たちが、歌とともに提供してくれるだなんて
ハァハァ(*´∀`*)
(妄想力を発揮すれば男なんていないっ)
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