第70話 もっと
チュンチュンチュン
朝特有の静けさの中に、鳥のさえずりが聞こえている。本来なら爽快な気分になれる朝。だけれど、俺は昨晩中ずっとモンモンとしてしまいよく寝られなかった。
彼女が出来る前よりも今の方が欲求不満になっている気がする。なんだかとっても、もどかしい。世の中のカップルって一体どうしてるんだっ。
今すぐ、とてもサオリと話したい。ボイスしてしまおう。
トウルルルル
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『もしもしー。いっくん。どうしたの?』
「おはよう。サオリ。なんか声を聞きたくなってさ」
『なんか変なの。いつも朝にボイスなんてしてこないじゃない。もしかして寂しかった?』
「うん。寂しかった」
『え? ほんと? ちょっと顔見せてよっ♪』
「なんでだよ。まだ顔洗ってないぞ?」
『いいから、いいから♪』
「そっちこそ大丈夫なのか?」
『ん? まぁ、大丈夫かな。リナちゃんもOK?』『オッケー』
そうか、それじゃ、と思い一応、部屋の中に変なもの置いてないよな。昨日買ったアレとか。と確認した後、画面を映した。
『んー。確かに寂しそうな顔してるね』
どうやら、顔に出てるらしい。まぁ、寝不足だしな。あんまり良い顔色してないだろうさ。
「やっぱそう見える?」
『うん。見える見える。ちょっとリナちゃんも見てみてよ』
『おっはよー。って、なにその顔w』
『でしょ、可愛くない?』
『うんうん。なんか捨てられた猫の顔してる』
なぜか、俺の顔の話で盛り上がって来た二人。君たちが仲がよさそうで良かったよ。と言うよりそんな顔をしている俺を励ましてくれないかなぁ。
「まぁ、そんな感じなんで、サオリに励まして貰いたいなぁと」
『えっ? 何すればいいの? 今日はそっちには行けないよ?』
『とりえあず、キスしておけば良いんじゃない? こんな感じで、チュ♡』 リナが画面の向こうで、投げキスをしている。
そうしたら、サオリも『チュ(^з^)-☆』ってしてくれた。そして、俺も返したら、サオリに怒られた。なぜだ、解せない。
『そろそろ、準備するから切るよ。他は大丈夫? 朝ご飯食べなさいよ』
「昨日の焼き鳥の残りがあるから大丈夫」
『野菜も食べなさいって』
「トマト食っておくよ」
『はぁ。まぁそれでいいから。あ! あと、今日も髪の毛セットして来てよ』
「え、メンドくさい。それにワックス買ってないぞ?」
『コンビニ行って買って行きなさい。お小遣いあげるから』
「わかったよ」(ママ)
『じゃぁ、早くして、ちゃんとコンビニでセットして来てね♪』
『それじゃ、また後でねぇ。チュ』
『ちょっと、リナちゃん!! なんでまたするのっ!!』
『えぇ、良いじゃん。減るもんじゃないし』
なんか、また二人でわちゃわちゃしてるな。いいなぁ。俺も混ざりたい。でも、離れて尊みを感じて居たい。どっちもしたい。
『それじゃね。また学校で』『またねぇ』
「またあとでな」
通話が終わって、また寂しくなって来た。前は、一人でも全然問題なかったのに、今は一人で居る事が寂しい。そう思いつつ。朝の準備を終えて出かける事にした。
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通学路の途中にあるコンビニ。
昨日、焼き鳥買った店にやってきた。ついでにカロリーゼロの炭酸飲料も買おうかと思って来た。さて、ワックスか、いやそれともジェル?
どっちの方がいいんだろう?
昨日はワックス使ったから、ワックスにするかな。
「どれが、いいんだろう?」コンビニじゃなくて、ドラッグストアの方が良かったか? 店員さんに聞いたりできるし………。
「まぁ、これでいいか」と適当に取った商品をレジに持って行き会計した。ちゃんと領収書は財布に入れた。これを渡せばちゃんと、お小遣い貰える筈だ。いや、それならもっと高い物でも良かったのかな?
でも、あんまり高いと怒られそうだしな。これが、世の中の結婚したサラリーマンの気持ちなんだろうか。俺たち、まだ結婚してないのに………お小遣い握られてしまっている件。
会計終えたので、トイレの洗面台を借りて昨日の様にセットしてみる。まぁこんなもんだろ。あと、えりのあたりちょっと開くんだったか? そして胸張ってく感じ?
鏡の前で、自分でチェックしてみるが、だいたいこんな物だったかな? とりあえず、自撮りしてサオリに送って置いた。自分で分からないことは聞いてしまうに限る。
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学校に着いたので、もう学校に来てたサオリたちに挨拶することにした。
「おはよう。早いね」
「いっくんが遅いだけだよ。でもちゃんとやって来たんだね。エライね♪」
そう言いつつ、俺の肩をポンっと叩いてくるサオリ。今、触れられただけで、すごく意識してしまうんだ。今までもっと、触れ合ってた筈なのに、ちょっと何かするだけで、胸が高鳴るし、心なしか口の中の唾も気になる。
恋愛するってこう言うことだったのか……いや、これはただの性欲かもしれない。恋愛と性欲の違いってなんなんだろう。それはまだ俺には分からない。
前、告白した時は『結婚を前提に付き合って欲しい』とか言ってたくせに。まだ分かってないんだ。そりゃ、サオリもびっくりして断ってもおかしくないよな。全然、覚悟も経験も足りてなかった。
「とりあえず。レシートは、これな」
「ん、確認するね」
そう言いつつ、レシートを渡す時に指と指が触れた。ただそれだけなのに俺はもっと彼女の事が好きになったと感じた。
つづく
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あとがき
好意をお互いに伝え合うと、お互いがもっと好きになれる。
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