第66話 案外

「おまたー。それで、わたしはどっちのイケメンとカフェればいいの? あ、石井君以外でね♪」


 と、どこか聞き覚えのある女の娘が声を掛けてきた。


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 俺たちが、放課後に会議やらなんやらで時間潰してたせいか、クミちゃんは一回家に帰って着替えて来たようだ。短パンにノースリーブのカットシャツと言うラフだけれど。ちょっとお洒落な感じな感じがして、活発な風に見える格好をしていた。


「あ、クミちゃん。こっちこっち」


「で、どっち? どっちもいいの? ……てか、そっちは虎杖君?」


「あぁ、どうも」


「どうもってw てか、髪の毛セットしてると、なんか雰囲気違うじゃん。いいじゃん」


「でしょっ♪」


 サオリが『フフン』とでも言いそうな、ドヤ顔をしながら胸を張ってどこか誇らしそうだ。自分の彼氏を自慢出来るのがそんなに嬉しいのか。と俺も嬉しくなってほっこりした。


「いや、マジで良いわ。なんなのその幸せそうな顔。これがカップルの余裕なのっ!?」


「あー。いいかな。3年の金城(カネシロ)って言うんだけれど。白井(サオリ)さんに紹介して貰ったのは、俺だ」


「どうもー。1年の伊藤クミです。クミって呼んでね♪ 先輩ちょっと好みかも♪」


「えっ? マジで? 俺もクミちゃん好みかも」


「えぇー、軽くない? どこが良いの?」


「なんか、優しそうな所? 俺、優しい娘が好きなんだよ」


「ふーん? それ他の娘にも言ってんの?」



 それじゃ、後は若い二人でと言う事で、二人は一つ離れた席で話し始めた。なんか、こうなると俺たちって仲人みたいな感じだな。伊藤さんは、本気かどうかは分からないけれど。上手い事、ご機嫌取ったようだ。すげぇな。あのコミュ力。勘違いしそうだよ。


「なんか、悪くなさそうな感じだな」


「まぁ、悪い人じゃなさそうだよ。とは伝えておいたし。それに」


「それに?」


「強く拒否したら、萎えるみたいだよ? と」


「あー。それか………どんな姉ちゃんなんだろうな」


「ヤンキー系じゃない? レディース的な?」


「『ひよってる奴いる?いねぇよな!!?』とか言いそうな?」


 勝手な想像だけれど、そんだけ尖った姉ちゃん居たら。女性不信になるかも知れないな。物語の中で見る分には良いんだけれど。家族に居たら萎縮しそうだ。


「まぁ、聞くのは止めて置こうぜ。思い出しただけで先輩萎えるかも知れないし」


 そう石井君が言ったので、この話題は止める事にした。けれど、まぁちょっとは聞こえて居そうだな。今は、目の前の伊藤さんと話すのに集中しているけれど。


 俺たちは、話す事も無くなったのでそれぞれ、自分の飲み物を飲みつつ、学校で撮った写真と、さっき撮った写真でどれを共有するかと言う話を3人でして居た。石井君は当然ボッチだ。なんか混ざりたそうにしているが、彼に見せる必要は無いしね。


 それにしてもチョコバナナバナナフラペチーノ、美味いな。高いけど。あと何でバナナが二回続いてるのか分かんないけど。バナナチップで無いのは分かるが、なんでバナナバナナ? バナナチップ追加したら、チョコバナナバナナバナナチップフラペチーノ? なるほど。そんな感じで呪文化していくのか。理解はしたが……それって便利なのか?


 店の喧騒をBGMにしつつ、チョコとバナナを楽しんだ。フラッペはよく分からんが、甘い刺激が脳を貫く感じが心地よい。やっぱこういう強い糖質を摂ると幸せな気分になるな。マックのシェイクと比べても遜色無い。と思い出したらマック行きたくなってきた。偶に凄く行きたくなるんだよなぁ。近いうちに行くかな。


 そんな事をぼんやり考えつつ、ちびちびと飲み物を飲んでいると。隣のサオリから声をかけられた。


「ねぇ。これ。この写真」


「ん? どれ?」


 そう言いながら、リナと撮った壁ドン写真を見せて来た。そういや、まだ店では壁ドン写真出来てないな。やってたら邪魔だし。


「これお願いね? 撮って置きたいから」


「おう。いつでもいいよ」


「じゃ、今すぐやれる?」


「え? 今すぐ?」


「そう今すぐ♪」


 そう言いながら、俺の耳元で囁きかけてくるサオリ。まぁ、席に座ったままやるには構わないのか? 他の人いるけど。別に邪魔ではない? まぁ、いいか。


 そう思い立って、今度は壁ドン撮影会を壁際の席で始めた。俺とサオリ。リナはそれを第三者視点で撮影してくれてる。石井くんはもう自分のスマフォを見てるだけだ。見たくないらしい。多分、ソシャゲやってんだろうな。馬乃娘ゲーム。


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 一方、その頃の金城先輩とクミちゃん


「アイツらどう思う?」


「お似合いなんじゃないかな」


「そうだな。なんか振られて良かったわ。いや、告ってないんだが、なんで振られた感じなんだろ。さっき山本さんにも振られたし」


「気分の問題かなぁ? てか、リナちゃんにも振られたん?」


「いや、告ってないって。それ以前の問題だった」


「なにそれウケるw」


「止めてくれよ」


「先輩可愛いね。年上なのになんか弟キャラって感じ? そのピアス穴とかどうしたん?」


「これ、姉ちゃんにやられたんだよ。自分だと怖いから『お前先にヤれって』っで、痛がってたのに両方空けやがってさっ!『痛いならやっぱ、やらない』って自分は挟むタイプにしよ。ってイヤリングにしたんだぜ。わけわからん」


「やっぱウケるw」


つづく

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あとがき


弟属性の男性は、年下にちょっとマウント取られてるくらいが、

案外お似合いなのかも知れません。

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