第67話 追ってくる

 俺たち3グループは思い思いに時間を過ごした。それはとても幸せな時間だった。石井君以外はね。彼は結局空気だったからな。


 しばらく過ごして、そろそろ解散しようかと言う話になる様な時間になった。


「それで、この後どうする。俺たちは帰るけど」


「ねぇ。今日は三人でお泊まりしようよ♪」


「んー。どうしようかなぁ。昨日はリナちゃんに邪魔されたしなぁ」


「それ以前に二日連続でお泊まりって、大丈夫なのか?」


「じゃ、今度は私の番っ♪」


 サオリとリナが、またキャットファイト? らしきものを初めてしまった。どっちがお泊まりするかと言う話になってるが、そもそもなんで二人とも泊まれる前提なんだろう。彼女であるサオリはともかく、リナはまずくない?


「なぁ、俺ってどうしたらいいと思う?」と石井君。


「知らないよ。帰ったら?」


「ヒドっ! ひどい。一体なんのためにここに来たんだ。俺は」


 さぁ、なんでだろうね。頭数合わせかな。合コンで呼ばれるけれど、なんの成果も無いまま帰る。そんな役?


「でも、今度、金城先輩に紹介してもらうだろ? それでいいんじゃね?」


「いや、それで彼女出来ても、さっきNTR(寝取られ)るって言ってたじゃないか。そんなの嫌だ」


「と言ってもなぁ」


 なんか、石井君をイジるのが楽しくなってきた感。こう好きな娘をイジメてしまう男子の気持ちがわかって来た気がする。石井君は好きじゃないんだけれど………ん? もしかして


「なぁ、石井や」


「なんだい、変な言い方して虎杖君?」


「もしかしてさ、お姉ちゃんとか居る?」


「は? 俺の姉貴狙ってんの? 3人目とかエグいぞお前」


「3人目とか入らん。そもそも2人目も…………居ないっ」


「なんだよその間は、………っていうか、姉貴なんて居ないぜ。俺」


「なんだ、ノリツッコミか」


「いったい何を期待してるんだか………」


「いや、案外、石井君って年上相手の方がいいかもってさ。NTRされる気もするが」


「だから、なんでNTR展開推しなんだよっ。まぁでも、紹介してくれるって事だから会っては見ようとは思う」


「まぁ、頑張れ?」


「お前は良いよなぁ。分けてくれよ」


「あのさ、もうその話題止めてくんない? つまんないし」


 そうリナは言うが、もともとはNTRだなんだ。ってリナが言ってた気がするんだが? ちょっと4話を読み返したらどうだろうか? 自分で言ってたセリフ忘れてるんじゃないかな? 


「アタシそのエヌティーアール? がなんなのか分からないけど。もしかして、この間ベッドの下に有った奴?」


 この間? と言うと、多分、NTRじゃなくて、BSS(僕が 先に 好きだったのに)の方かな? ヒロインが『好きって言ってくれる人が好き♡』と言うオチで終わる作品だったんだ。あんな物を読んでしまったせいもあって、サオリに急いで告白しないと。とか思ったんだっけ。


「多分、それ違うけれど。ここで話す事じゃないから、また後でな」


「えぇ〜。気になるのにぃ」


「それじゃ、私が教えてあげようか? 今日ウチくる?」


「おい。止めろ。サオリをそっちの道に引き込むなっ」


 ホント、止めて欲しい。俺の彼女の性癖が歪んだらどうしてくれるんだ。昨日だって、そのとってもヨカッたです。でも、男として自身無くしそうなので、ヤメてください。


「うん? リナちゃん知ってるの?」


「まぁ、多分ね♪」


 そう、言いつつリナは俺に流し目を送ってきた。なんだこのイタズラしちゃうぞ。みたいなノリ。怖いけど、なんかこう、ゾクゾクしてくる。このままだと正しい男女の営みが出来なくなる様な気がしてならないっ。


「じゃー。今日は、リナちゃんちお泊まりしちゃおうかな♪ なんか、いっくんも喜んでくれそうだし」


「いや、いやいや。ホント止めて? 頼むから」


「う〜ん。どうしようカナ?」


 そう言いながら、サオリとリナはお互いに目配せして頷いてる。女の娘同士の友情はとても良いけれど。このままだと俺の彼女が道を踏み外してしまう。そんな気がする。


「石井君もなんか言ってくれよ。止めとけって」


「は? 知るかっ。リア充、爆発しろっ」


「おーい。お前らその辺にしとけよ。周りに聞こえてんぞ」


 金城先輩が止めに入って来た。ちょっと騒ぎすぎたらしい。あと、石井君、そのセリフ覚えてろよ。


「それで、金城先輩達はこれからどうするんでしょ? 俺たちはもう帰りますけど」


「そうだね。クミちゃんどうするの?」


「ん〜。もうちょっと先輩と話していこうかな♪」


「ホント? それじゃ、どこ行く?」


「まぁ、カラオケとか? 先輩、歌える?」


「人並みには、姉ちゃんに連れてかれて男パート歌わされたりするし」


「何それウケるw 仲良しじゃん」


「姉ちゃん怖いけど。人当たりはいいんだよ。もしあっても騙されるなよ」


「え、もうカレシ面? 紹介する気マンマン? ちょっとゲンメツ」


「そうじゃないって……でも、今日遅くなるって連絡したら、姉ちゃん来るかもしれないし。いつも唐突なんだよ……それになんか、女友達も連れて来るし」


「やっぱ仲良しじゃんw」


 金城先輩って、あれか、ヤンキー姉に可愛がられすぎて苦手になったタイプかな。なるほどな。それじゃ。


「石井君も行ったら? 彼女見つかるかもよ?」


「え、嫌だよ。絶対浮くぜ? それに先輩のお姉さんが来ないなら来ないで俺、邪魔じゃね? ってか伊藤さん大丈夫なの?」


「え? 何が?」


「いや、男と二人っきりでさ」


「石井君よりは大丈夫じゃないかなぁ? たぶん?」


 そう言われて、また落ち込む石井君。どんだけ信用ないんだろうな。もしかして中学の時の話が本人が知らない所で、出回ってるとか? 真相を聞いてみたいけれど、聞くのが怖い気もする。そう思いつつ、サオリの方を見ると、彼女はちょっと含みのある笑顔をしていた………あ、これ知ってるわ。女子の噂話ってコエェ。


つづく

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あとがき


過去の失敗はいつまでも追って来る。

頑張れ石井君。

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