第60話 練習

「待ってる間、一緒に写真撮ってくれる?」


 嫁………じゃない彼女であるサオリを会議と言う戦場へ見送った後。暇は俺はリナと写真を撮る事になった。と言ってもツーショットって言うよりは、リナメインの写真だ。


 さっき、サオリが『壁ドン』して欲しいだなんて言うから、事前にどういうシュチュエーションが良いか勉強しつつ練習してみる事にした。なんか、彼女とやる前に他の娘とやってるって言うのも変な感じがするが………アイツ割と気が短いからなぁ。すぐ怒り出してしまって、そして、なんかとりあえずハグして誤魔化す事になる未来が見える………俺そのパターン知ってる、んだ。


 とりあえず。どういうパターンがあるか検索してみると。あんまりパターンは無いみたいだな、もうすぐキスしますよ。って言う感じのものばかりだ。んー。と考えてると、リナが「これいいんじゃない?」っとスマフォの画面を見せてきた。


 その画像は、壁ドンされた女の娘がアップで映っていて、女の娘が口でバッテンをして居る絵だった。確かにこれなら、サオリに見られても大丈夫かも知れないな。


「じゃ、とりあえずこれにするか」


「そんじゃ、準備するね」


 そう行って、リナが自分のカバンから自撮り棒を取り出した。リモコン付きで三脚にも出来る。ちょっと良い奴なんだとか。この間の勉強会の時と言い、いつも持ち歩いんてのかな。重くないのか? 女の娘のカバンって不思議だなぁ。


「なんかカバンの中、色々入れてるよな。重く無いの?」


「重いに決まってんじゃん。見栄張ってんの。見栄っ。分かったら今度からカバン持ってくれる? 勿論、サオリちゃんのも」


「おう………頑張る。彼氏だしな」


「そうそう、私の彼氏だしね」


「いや、違うだろ。サオリのだよ」


「まぁ、いつでもいいんだよ? 待ってるから」


 待ってるって、なんなんだろうな。昨日もそうだけど。待たれても困る。けれど、他の奴にお願いする気にもならない。なんだろうなこの気持ちは。


「あ、でも、さすがにお婆ちゃんになると困るなぁ………」


「………それは流石に気が長すぎだろ。冗談はそれくらいにして写真撮ろうぜ?」


「そだね」


 携帯を自撮り棒にセットして撮り始める俺たち。俺の方は顔は映ってなくて後ろ姿だけだ。髪の毛をセットしてみたからか、なんとなく自分では無い気がする。そして、さっき、撮ろうと言っていた。口にバッテンを作ってる女の娘の写真だ。それを両手が使えないので俺が撮る事になるんだが………なんかスマフォの画面越しで見ても凄く可愛くてドキドキしてきた。今まで、リナの顔を見ていた時とまた違う感じがして、目が潤んで見える。


 何枚か写真を撮っていると。手を下ろしながら目を閉じてしまった。そして俺の腰を掴んで来たんだ。左手は壁ドンして塞がってるし、右手はスマフォを持ってるので、抗えない………写真も顔が近くなりすぎてもうまともに取れない。これってただ抱き合ってるだけなんじゃないか? どう考えても誤解されてしまうぞ。


「その、もしもの話なんだけれど」


「もしも。もしもな。それで?」


「いった君が、サオリちゃんに告白する前、その、最初のね? その前に、私が告白してたら受けてくれてた?」


 サオリとの関係に不満を持ってた時か………その時、自分から告白しようとする前に言われてたら………何かをしようと言う気持ちが……。


「……今とは違ってたかも知れないな。でも分からないよ。そんな話なんて、大事なのは"今"だろ?」


「そう……だよね。いや、なんか、変な事聞いちゃったね」


 なんか、しんみりしてお互いに離れてしまった俺たち。なんだろう、なんでリナは突然積極的になったり、離れたりをするんだろう。家庭の事とか、学校で他に友達居ない事とか、関係あるんだろうか………有るんだろうなぁ。


 その後も何枚か写真撮ってそして、俺のソロ写真や、ツーショット写真も何枚か撮った。なにやらサオリチェックを受けた後、俺にも送られるんだとか。自分の写真なのに何故? 解せぬ。まぁ、自分の写真なんて持ってても面白くないし。どうでも良いけど。


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 そうして、小一時間経った頃だろうか、会議が終わったのか空き教室からゾロゾロと人が出て来た。その人たちはちょっと疲れた顔をしていたが、どこか開放感がある様な顔をしていた。どうやら良い結果があったらしい。しばらくすると、サオリと石井君も出て来た。


「いっくん終わったよ。やっとだけれど。これで文化祭の準備に集中出来るよ」


「そりゃ、良かった。そういやうちは何やるんだ?」


「それは………」


「あ、白井(サオリ)さん。ちょっと良いかな? 今回、協力したんだからさ。前の話考えてくれる? 少しの時間でもいいからさ?」


 そう声をかけて来たのは、耳にピアス穴が空いていて、どこか小洒落た感じのする上級生の男子生徒だった。


つづく

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あとがき


リナから真面目な感じのアプローチ。

緩急付けられるとドキドキしますね。


今だらですが、白井さんと石井君、苗字だけの場合、ぱっと見見間違える問題。

なぜ、脳内プロット通りに、石田君にしなかったんだ。過去の作者。

石井君? 誰だっけ?

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