第59話 どこでも

 俺とリナが授業の合間や時間に楽しく会話してるからか、サオリからメッセが来た………今は、授業中だけれど気になるのでチラチラ、スマフォを見ながらやりとりをした。


サオリ:随分と楽しそうね? アタシの彼氏は?

いち:まぁ、リナ相手だし。普通だよ。でも、気になるなら話さない様にする

サオリ:浮気しないならいいケド………それより放課後、残ってくれない?

いち:いいよ。何するの?

サオリ:クラス委員の会議の時に来て欲しくて、一人で会いたく無い人がいるの……

いち:あー、例の先輩か、石井君から聞いてるよ。わかった。

サオリ;ありがと♡


 いかんいかん、思った以上にやりとりしてしまった。でも、スマフォが気になって仕方ない。いや、それよりも後ろを向いて自分の彼女を見て居たい。こんな、何気ないやりとりですら、幸せな気分になれるだなんて………思わなかった。思わず口元がニヤけてしまう。そして休憩時間になった。


「ラブラブだねぇ」


「まぁな。付き合ったばかりだし」


「いいなぁ、いいなぁ」


「そういや、今日は放課後、サオリに付き合う事になったから」


「んー? 別に待ってるけど? っていうか待たせて?」


「なんでだよ」


「前も言ったじゃん。家にあんま居たくないって」


 そういや、そうだった。この娘は、義父との関係性が面倒な状態だったんだ。その辺りの話も聞いてみたい所だし、サオリと一緒に挨拶に行かないとな。


 そうこうしている内にお昼時間になった。今日は、サオリにお弁当を作って貰って居るので、それを広げて食べる事にした。そういや、今日はサオリはどこで食べるんだろう? 聞いてなかった。


「いっくん、今日は一緒に食べよ♪」


「おう。待ってたよ」


「え、ホント? 今日の予定、なにも話して無かったじゃん」


「一緒に居たいって、俺の中のサオリが言ってた」


 そう言いながら、自分の頭を指差した。頭の中のサオリはそういう女の娘だ。

どんな妄想野郎だ。と自分でもちょっと引くけれど、付き合い始めたばかりなら、そんな事を言うのも有りなんじゃないかと思って言ってみた。


「へぇ、頭の中に居るんだ。へぇ。それじゃ今は何考えてるの?」


「ん………ハグしたいかな?」


「アタリ!! それじゃ、今は?」


「な……なんだろ」


「………早く帰りたい」


「えっ、もう?」


「もう、面倒なのヤダァ。ねぇ一緒に帰ろ? もう、よくない?」


 なんか、駄々っ子になってしまった俺の彼女。相当、例の先輩に会いたくないらしい。もう、可愛いなぁ。ワガママ言ってても可愛い。


「ちゃんと一緒にいるからさ。今日は頑張ってみようぜ? 俺、頑張ってるサオリも好きだよ?」


「本当? 頑張ってるの好き?」


「うんうん。好き好き」


「なんか………その言い方って軽くない?」


「とーっても好きっ。これでいい?」


「はぁ、まぁまぁね」


 そんな風にイチャイチャしながら、お弁当を食べる俺たち。朝もやってたけれど、『あーん』もして貰った。なんか周りから、すごい注目されてる気がするけれど。別に気にならない。陽キャが、周りを気にせず騒いでるのってこういう感じなのかな?


 それならもう、俺って陽キャって事で良いかもしれない。無理して知らない奴とは、仲良くなる気ないけど。とりあえず、楽しくやってれば陽キャだよな? 知らんけど。


 リナとサオリも話してて、昨日の事を文句言ってたけれど、リナが授業中に俺が『ニヤついてた』話とか『ラブラブオーラ出てる』って話をしてたら、サオリの機嫌が良くなってた。この彼女、案外ちょろいのかもしれない。


 そして、午後になったので、いよいと。俺の彼女…………いやその時は、幼馴染をナンパした先輩との対決だ。石井君のアドバイスで「とりあえず髪の毛固めとけ。あと、少し首元開けとけ、なんか強そうに見えるから」と言われたのでワックス借りて少しセットした。なんかベトベトして気持ち悪い。


 自分では、あんまり合ってない感じはするけれど、他の人的には合格らしい。あとは胸張っとけとの事。サオリから「あとで、ちょっと『壁ドン』して欲しい」と言われたんだが、そんなに良い感じなのかな? 自分ではわからん。


 リナも「じゃ、私もお願いー」って言ってて、またサオリと言い争ってたんだが「別にそれくらい良く無い?」って言ったら「犠牲者を増やす気なの!?」って怒られた。何故………石井君はゲラゲラ笑ってる。またツボに入ったらしい。


 そんな朗らか? なやりとりをして、俺たちはクラス委員が会議する教室にやってきた。


「それじゃ、外で待っててね………」


「おう。待ってるよ。でも長くなるのか?」


「まぁ、いつもは長くなってるな。でも今回は、いつもよりは短いと思う」


 石井君がそう言って、サオリもそれにどこか覚悟を決めたように頷いて会議に向かって行った。そんな二人を心強く思って送り出した。


 まぁ、とは言えただ待ってるのも暇だな。と思って居たら


「待ってる間、一緒に写真撮ってくれる?」


 リナが、写真撮って時間潰そうと言って来た。

そういや、最近一緒に撮ってなかったな。


つづく

----------------------------------------------------

あとがき


嫁は会議と言う戦場へと向かい。旦那は別の戦場へ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る