第51話 極めし者

 週が明けて、憂鬱な日々が始まった。まぁ普通に学校に行くだけなんだが、土日が充実しすぎてただけなんだろうな。


 朝から、サオリが来て一緒に朝ご飯食べて、学校ではリナとおしゃべりして、でも勉強の話をするとリナは結構厳しくて注意されて、言う普段通りの生活を過ごしていた。


 石井君とも勇気を出して、サオリの事を話してみたけれど『今は手伝ってもらう事はないけど、近いうちに必ずある』って言う事だった。いや、逆に怖いんだけど!


 結局、クラス委員の二人からは、何かを手伝って欲しいとは言われなかったので俺は何も出来ずにいる。なにかしたい。と言う想いだけが積もって行く日々だ。


 そんなある日、休み時間に陽キャグループが騒いでいた。どうやら、誰かが上級生から告白されたらしい。それだけなら関係のない話だったんだが、騒いでいたのがやがや言い合いになり、言い争いになった。


 先生が来る時間になったんだが、言い争いは終わらずやがて

サオリが、先生に「調子が悪いんで保健室行きます」と言って、

教室を出て行ってしまった。。。


 俺が追いかけるかと迷ってると、石井君に声をかけられた。


「虎杖ちょっと話せるか?」


「え、でも、授業始まっちゃうぞ?」


「俺たちも調子悪いとか言って出ちゃえばいいんだよ。今なら行けるって多分」


「えぇ」


 まだ迷ってると


「う”””うううう”” 腹がっ! 痛い! 盲腸患った上にノロウィルスに感染したかも! 昨日食べた牡蠣が原因かもしれねぇ!!!」


 石井君が突然騒ぎ始めた。さっきのサオリ達のやりとりが吹っ飛ばされるような内容だ。いや、本当ならなんでその状態で学校来てんだよ!


 ここからどうするんだよ。と見守ってると、石井君が俺の腕を掴んで来た。あ、俺が連れてくのね? この場合、トイレ? 保健室?


「じゃ、虎杖に連れってもらいまーす」


「そ、それじゃ、行って来ます」


 俺がリナや先生に挨拶して後に、元気に俺を引っ張ってく石井君。。。

いいのこれで? で、トイレまで来たわけだが。

ノロウィルスになんて掛かってるわけもなく。


「それで、話って?」


「今日の昼さ、上級生のクラス委員と話してたんだけどさ」


「なんか大変だって話のやつだろ? で?」


「そうそれ。でさ、その上級生が白井さんの事気に入ったみたいなんだよ」


 まぁ、サオリは可愛いしな。おっぱいもでかいし。


「協力するから、白井さんと一度デートしたいなぁ。って言い出したんだよね」


「は? なんで交換条件があるんだよ」


「まぁ、そうなるよな。で、俺にも聞かれたわけだ『付き合ってる奴はいるのか? と居ないなら。一度くらいいいだろ。カフェとかくらいなら』って感じで、粘って来たんだが」


「なんだよ。腹立つな。いや俺にそれを止める権利はないんだけど」


 そうだなと石井君も同意している。


「でだ、虎杖さ。お前、白井(サオリ)さんにもう一回、告っちゃえよ」


「なんで、そうなるんだ………いや、言いたい事は分かる。彼氏居れば、普通に断れるって事だな?」


「そうそう、それでお前振られたら、俺が告るから、よろしく!」


 って、お前もサオリを狙ってたのか!

遠目からでも、仲良さそうだな。とは思ってたんだよ!

目の前の野郎になんて言ってやろうかと考えてる、と。


「まぁ、まて。これでも俺は失恋マスターなんだ」


「なんだその失恋マスターってのは」


「端的に言うとだな、中学の時にクラスの1番可愛い娘に告って振られたから、2番目と3番目にも告ったんだが、それから全く女子に相手にされなくなった」


 そ………それは流石に節操なさすぎるだろ。告られた方も『どうせ、あの娘の方が良いんでしょ。ふざけんな』くらいは思って居そうだ。。。っていうか思ってるに違いない。


「で、俺は、住んでた町からは、ちょっと離れた、この高校受けたんだ。じゃないと、俺の噂が中学時代の奴らから漏れるからな。それから、ちゃんと時間掛けてから告って、今度はイチャイチャ学園ライフを送るその為にここに居る!」


「お前、ある意味凄いな。切り替えが」


「だろ? で、最初、山本(リナ)さんに声かけたんだけど。髪の毛の話してからシカトされてよ」


 声かけてたのもあれだけど、リナがボッチになった原因の一つ、

お前じゃねーの? 話ぶりからすると、悪意は無いんだろうけど。

むしろ下心しかないんだけど!!


「で、高校に入ってから、狙ってた女の娘、両方と仲良い虎杖マジすげぇな。これはリスペクトするしかないだろ」


 そんな、事を言いながら石井君はうんうん頷いて居る。俺だって二人と幼馴染じゃなければ、仲良く出来たかなんてわかんねーよ。


「だから、さっさとどっちかと付き合って欲しいんだ。それで、片方紹介してくんね?」


「え、嫌だよ」


「そっかー。まぁ、良いけど。それじゃ、四人で遊びにいくとかなら?」


「えー」


「いや、夏休みとかプールとか海行った時、大変だと思うぞ? 真面目な話」


 プール、海か………いいな。確かに。。。

目の前のコイツを信じる事は出来ないが。。。


「で、話を戻すと虎杖、お前さっさと白井(サオリ)さんに告白しろ。そうすれば丸く収まる」


「でも、前回失敗したんだぜ?」


「それは、お前がバカだからだろ。なんで失敗出来るんだかわかんねーよ」


「他人事だから言えんだよ! この、ナンパ野郎!!」


 その後、俺と石井君は、どうやってサオリに再告白をするか話し合った。

石井君は恋愛に関しては信用出来ないが、男友達としては一緒に居て楽しいって思えたんだ。


 そして、今度『ボッチになった原因の一つは石井君じゃね?』

とリナに言っておこう。と心に強く留めた。


つづく

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あとがき


 明かされる石井君の過去。

限られた関係性の中で複数人に告白するとマジで相手にされなくなる。恐怖。


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