第29話 ずっと

サオリ:そろそろ着くから迎えに来て

いち;今、駅近くのドンキー系列の店に居る。こっち来る?

サオリ:じゃ、そっち行く。まってて

いち;了解ー。待ってるよ


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 そんなやりとりをしたので、俺はそのまま店の商品を眺めなら待つことにした。

でもここだとあからさま過ぎるな。


 折角だし、ボディーソープとか見てみよう。

そっちにも何か匂いを抑えられる商品があるかもしれない。


 そう思って、ボディソープが置かれているコーナーに向かった。

今度は、探すものがはっきりしていたので、迷わなかった。


 目当ての商品もあったんだが、値段がなぁ。

あと加齢臭対策って描いてあるのが、なんかこう抵抗感を感じる。

加齢臭って言葉にだ。。。まだそんな年齢じゃないんだ。。。

流石にこれは買えない。


 適当に商品を見て時間を潰していると。

後ろから声をかけられた。


「いっくん! お待たせ! 待った?」


「待ってたよ。自分で言っただろ」


「あっ。そうだね」


 なんかちょっと、気分が高揚しているようだ。

そう言えば、お互いの家が近かったし

今まではどっちかの家から出るか、学校から直接行くか。だったな。

こうやって外で待ち合わせ、みたいな事をした事がなかった。かもしれない。


「それより、委員会の方は大丈夫か? これからも遅くなる?」


「うん。しばらくは遅くなりそう」


「そうか、それじゃこれからも待ってるよ。心配だし」


「ありがと」


「ただ、時間のどう潰すかが問題でさ。今日は買い物で時間潰してたけれど」


「んー。いつも同じ時間にはならなさそうなんだけど……」


「だよなぁ」


「それで何探してたの?」


「俺の物はもう買ってあって、、、あとはプレゼント向けの物を、、、」


「ん? 誰の? まさかリナちゃん?」


「お前のだよ。自分の誕生日忘れてんの?」


「あー。。。もうそろそろだね。今年は何をくれるの? 今までは当日まで隠してたじゃん」


 今まではうちとサオリの親同士で誕生日会の段取りをしてくれてたんだ。

でも。俺の親が海外に行ったから、今年からは親同士ではやってくれない。


「それで、何か欲しい物ある?」


「でもいっくん、バイトも何もしてないよね。お金大丈夫?」


 そ、それを言われると辛い。結局親の金だし。。。


「それは、飯を抜くとか、、、」


「それでアタシが、嬉しいとでも思ってんの?」


 怒られてしまった、、、でも何もしないのもなぁ。。。

どうしようか。と思ってたら。


「もう、誕生日一緒に居てくれるだけでいいよ。アタシのうちで何か用意するし」


「わかったよ」


 それだけじゃ、納得行かないけれど。

なんか良いものないかなぁ。。。


「じゃ、買うものないなら帰えろ? そう言えばご飯は?」


「食べてないよ。ちょっと小腹空いたけど」


「じゃ、マック行こうよ」


「えー。まだそんな気分じゃない」


「いつその気分になるのよ?」


「来週かなー」


「それじゃ、モスはどう?」


「モスなら行く」


「もー。どっちも変わんないじゃん」


「変わるんだよ。主に俺の気分が」


 そんな軽いやりとりをサオリとしてモスに行く事にした。

この関係がずっと続けば良いのにと思う自分。

でももう俺たちは高校生だ。難しいのかもしれない。


『高校生の男女に友情は実在する?』


 ってやつだ。俺はもう実在しないと思っている。

今日、俺に対して好意を伝えてくるリナに対して

抱いてしまった気持ちを自覚した時に確信した。

好意を送り続けてくる相手に対して、好意を持たない方が難しい。

きっとこのままだと、俺はリナを本気で好きになってしまう。


 そんな事を思いながらサオリを改めてみる。

今のサオリは本当に綺麗で可愛くなったし。恋とはちょっと違うかもしれないけれどずっと一緒に居たいと思う。


 そんなサオリはソイパティと言う野菜バーガーを頼んでいて、罪悪感が少ない?

みたいなバーガーを食べてる。頑張って口に入れてる姿が可愛い。


「なぁ、無理しないで切った方がよくない?」


「ハンバーガーをそんな風に食べるのはなんか嫌。それにうまく切れないし」


「まぁ、そうだよな」


 俺は、ハンバーグサンドを手にとって食べ始めた。

しかし余計なことを考えながら食べてたせいか、ソースが飛び出てしまった。

これ思ったよりソースが多すぎるぞ。。。


「あ」


「もー。なにやってんの! 一旦ハンバーガー置いて!!」


 そんなことを言いつつ、カバンから濡れティッシュを出して

サオリは、飛び出たソースを拭いてくれた。


「それいつも持ってんの?」


「まぁ、あると便利だし。っていうかアンタが何も持ってなさすぎなのよ」


「いや、ティッシュくらい持ってるよ」


「無料で配ってるやつを適当にカバンに入れてるだけなんでしょ? どうせ」


 何故、お前がそれを知ってるんだ。。。


「まぁ。いいじゃないか持ってはいるんだし」


 そういうとサオリに、ため息をつかれてしまった。


「いいけどね。もう、その方が………」


「え?」


「なんでもない。アンタは私にお世話されてれば良いのよ。ずーっとね」


「いや、ずっとは流石に。。。」


「なによ。嫌なの?」


 俺がなんて答えるか困った顔をしていると

目の前のサオリは良い笑顔で笑っている

それは、サオリが高校生になってから見れた笑顔の中で、一番楽しそうな顔だった。


つづく

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あとがき


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