第5話 メリットは?

「私を嘘カノにしませんか?」

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 リナがそんな提案を突然してきた。

 俺達がこうやって話したのは今日がはじめてなのに

 というか嘘カノってなに?


「えぇと。どういう事?」


「嘘の彼女だよ。そのまんま」


「いや。だからそれにどういう意味があるんだ?」


 意味が分からない。そうする事によって俺になんのメリットがあるんだ?


「まず、私が他の男から告白されなくなる!」


 うんうん。なるほど………ってそれは俺のメリットじゃあないっ!!


「まぁ、待ちなって。気が早い男はモテないよぉ」


 思わず問い詰めてしまいそうだった。

 ちょっと落ち着こう。ステイクール。

 俺は、シェイクを飲めば落ち着ける男だ。


 この砂糖の塊を流し込む感覚。

 幸福感に満たされる……やはりマックのシェイクは最高だ。


「………続きをどうぞ」


「えっとね。多分、幼馴染のサオリちゃんは、いった君の事が好き。でも、本人がどの程度自覚してるかは分からない。ここまではOK?」


「あぁ。そんな気はするんだが……それで断られたんだぞ?」


「それは、きっといった君の告白が重すぎたから! と言うのもあるだろうけど。いままでライバルが居なかったからじゃないかな? だって中学までは、ずっと二人で過ごしてたんでしょ?」


「正確には弟も一緒に居たが……そうだな」


「でしょ? だからここで、ライバルを登場させるのはどうかと思うわけ!」


「は? なんでそうなる?」


「ラノベとか漫画では、お決まりの展開だよ? 知らないの?」


「知ってるけど……それになんのメリットが?」


「幼馴染ちゃんの本当の気持ちが知ることが出来ます。正直、今ままだと、自分でもいつ爆発するか分からないんでしょ? さっきそう言ってたじゃん」


「な…………なるほど?」


 つまり爆発しなくて済む様に今度は、俺が幼馴染に対して彼女持ちマウント取れって事だな? ――でもそれ大丈夫なのか?


「大丈夫大丈夫、嘘だし。例えばぁ、3ヶ月したら別かれるってのはどう?」


 それくらいなら有りなのか………? んーわからん。でも、それでサオリが他の男とくっついたら嫌だぞ。


 そうなったら鬱になりそうだ。


「もし、サオリちゃんがそれで他の男と付き合ったら。その場合は私がそのまま彼女続けます。これでアフターフォローも万全だね♪ まぁ、そんな事はないと思うけどねぇ」


「いや、流石にそれは悪いよ。そんな関係続けたくない」


「それじゃ、別れるよ」


 いや、軽いなぁ。そもそも、この提案自体が軽い。

 そんなに深く考えなくていいのかな? よくわかんなくなってくる。きっとリナはからかってるんだろうな。


 目の前の娘は、こうやって話しているのが楽しそうだし。なんだか気持ちも軽くなってきた。


 あ、そう言えば聞いてない事がある。


「とりあえず。それは一度考えるとしてリナの秘密ってなんなの?」


「私の趣味は、アニメとエロゲだよ」


 聞こえてはならない単語が聞こえたような??


「エ・ロ・ゲ」


「エロゲ? まじで? 高校生だと買えなくない?」


「あ、一応全年齢版の奴ね。遊んだのは。でもほら。ネットで画像探せば見つかるじゃん? だからエロゲはエロゲね」


 な、なるほどなぁ。


「でさ、私はピピっと来たわけよ。これってエロゲ展開的に面白くない? って。ほら最近のNTR(寝取られ)って奴?」


「いや、寝取られてはないだろ。そもそも付き合ってないし。今回だとBSS(僕が 先に 好きだったのに)でしょ」


「詳しいねぇ。まぁそんな感じ? 悪くないんじゃない? ほら私可愛いし?」


 改めて目の前の娘をみる。確かに可愛い。

 

 こんな娘と付き合えるならもう嘘でも良いかなって気がしてくる。俺がそう悩んでると…………


「もし、幼馴染ちゃんの反応が良くなかったり、まずそうだったらすぐ別れるからさ。ね?」


 ――しばらく喉を潤しつつしばらく考えてから


「ちょっと一度考えさせて欲しい。なんか今答えると………詐欺にあったみたいだ」


「そだねー。それじゃとりあえずカラオケ行こうよ」


「なんでそんなに行きたいんだか。もしかして他の奴と言った事ないの?」


「ないよー。だってエロゲの主題歌とか歌いたいんだよ? 行けないよ」


 ………さようですか………


「それなら独りで行くとか………俺じゃなくても良くない?」


「独りとかマジありえないわ。もしかして独りで行ったりしてるの?」


 グサグサ来るな…………止めて。俺のライフがなくなっちゃう。


「結構……そこそこ……たまに?」


「ん? 男の子ならありえるのかな? 女の娘、独りで行ってナンパされたくないし」


(あ、なるほどね? それなら先に言って欲しいな?)


「じゃ、カラオケ行こっか! 楽しみだったんだよねぇ」


 そう言って、リナが俺を引っ張っていこうとする。

 止めて、年頃の男の子は引っ張られるとドキドキしちゃうんです。


 そんな時、俺のポケットがブルっと震えてメッセが来たのを知らせた。スマフォを取り出してから画面をみると


サオリ:ねぇ。今どこ? 山本さんと何してるの?

いち:マックだよ。さっき言ったよね。


 だから、お前は俺のオカンか何かか!

 彼女だったら分かるけど。お前断ったじゃないかっ!!


いち:でも、これからリナとカラオケ行く事になったから


 イライラしてそんな事を送ってしまった。


サオリ:はぁぁ? 何考えてんの? 止めなさいよ。

サオリ:あんな可愛い娘がアンタの相手にするわけないじゃない!


 ちゃんと話した事のない、お前が何を言ってんだ。


 クソ。やっぱり最近の幼馴染との関係はダメだ。イライラする。

 ツンツンはダメだ。いつデレるんだ。男のメンタルはそんなに強くないんだぞっ!


「メッセはサオリちゃんかなぁ? やらかしちゃった?」


「あぁ、やらかしてしまった……やっぱダメみたい俺」


「それじゃ、私を嘘カノにしちゃう?」


「どうしようかな…………」


 この間、告白したばかりなのにすまん、サオリ。

 俺、心が挫けてしまいそうだ………


つづく

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あとがき


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