双子の覚悟

 辺りを見渡し、ニタを探した。しかし、やはり見つからない。

 スーラが感じた嫌な予感と言うやつを、私も少しずつ覚え始めていた。


「……警戒していろ」

「え? スーラ、どうするつもりなの?」

「俺があの木を切る。他に、この場を制する手段はない」

「そ、そうかもしれないけど! そ、そうだよ! 司とか、癪だけど、司の妹だっている! どうせ動けないんなら、呼んで来ればいい!」


 あいつらの強さは異常だ。はっきり言って、私たち二人を合わせたのと同じくらいには強い。いや、それでも本気で戦ったら私たちだとは思うけど。

 だからあいつらの誰かしらを連れてくれさえすれば、動けない敵なんて怖くない。


「いいや、駄目だ」

「どうして!? 無茶する必要なんて!」

「必要は、あるんだよ」

「な、なんで?」

「本当に動けないと思うのか? 本当にこのままだと思うのか?」

「……え?」


 聞かれて、考える。

 邪神の力を借り、強くなったはずのあの木がこの場に留まり続ける。それは代償とか、仕方のないことだと、そのままなのだろうと思っていたけれど。確かにそうだ。邪神がそんなことをするのか? あいつがどれくらい強くて、どれくらい賢いのかなんて知らないけど、わざわざ全く動けない手下を増やすだろうか。

 そんなわけはない。


 ならどうして今は動かないのか。

 何かの、準備中?


「いつ動き出すか分からない。お前の話を信じるなら、あいつは現時点で俺たち二人以上の力を持っている。出来ることなら、今すぐ破壊してやりたいくらいだ」

「分かった。分かったけど、無理はしないで。私のステータスの全部を預けるから」

「……ああ。大人しくしていろ」


 吐き捨てるように、こちらを見ることすらなく言ったスーラに少しムカついたけれど、今はそれどころではないのだ。ここは、スーラに任せるしかない。


 全力のスーラ、つまり、ステータスのすべてを受け持ったスーラならばあの木にだって対抗できるはずだ。無論、その間私は置物と化し、何も出来なくなるのだけれど、それでも、あの木さえ止められれば後はどうとでもなるはずだ。

 そのはずだ。


 私はスーラが私のステータスをほとんど持って行くのを確認し、その場に座り込む。


「スーラ、頑張りなさいよ」


 すでに駆け出したスーラの背中に、そんな風に呟いてみる。もしかしなくても、聞こえていないだろうけど。

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