探知の勇者リウスvs雷の勇者ミシア

「天から授かりし御力、あなたに知らしめて差し上げましょう」

「天だか何だか知らないが、俺に勝てるつもりでいるのなら死ぬ覚悟をしろと言っておこう」


 もしも戦場で絶対的な力があるとしたら、それは破壊力でも速度でもない。情報だ。

 戦況を詳細まで把握し、盤面を客観的に認識する。探知の勇者、そう呼ばれるだけあって俺の能力はそれを遂行するために理想的なものになっていた。


種族:人間・勇者

名前:リウス:固有能力全体空握:一定範囲内の意志ある生命体の存在を感知し、魔力総量や外観をもとに種族、固体までを識別する

レベル:51

生命力:7019/7019 攻撃力:10291 防御力:6928 魔力:8970/9019

状態:正常

スキル:絶対探知、解析鑑定、解析無効、弦式・付与、超脳神域、魔力即時回復Ⅴ、自然治癒Ⅱ、物理攻撃耐性Ⅳ、魔法耐性Ⅳ、精神攻撃耐性Ⅵ、状態異常耐性Ⅸ

権利:基本的生物権、自己防衛の権利、自己回復の権利

称号:総指揮官、探知の勇者


《総指揮官:《弦式・付与》を通して自身の能力の一部を貸し与えることが出来る。攻撃強化系スキルを所持できなくなる。付属スキル《弦式・付与》》

《弦式・付与》:特殊な糸を操り、糸の触れた相手に対して任意の効力を発動する。ステータス、スキルへの介入、方向性の変更、情報伝達。

《超能神域》:魔力を消費することで生命の限界を超えた処理能力と記憶能力を疑似的に獲得できる。ただし、発動が途絶えた場合情報量の過多により発動者が死に陥る可能性がある。


 クロたちにですら離したことのない俺のスキルは、知ってしまえば普通の世界には戻れなくなってしまうような、そんな類の力だ。


 いや、クロのあの力を見てしまえばそれを疑わしくは思えたりもする。あいつのあの破壊力は勇者の中でも頭一つ抜けている。ステータスを見る限りそこまで特別なスキルがあるわけでもなかった。だというのにあの戦闘力は、尋常ではないと表現するほかないだろう。


 しかし、それでも俺の力は他の勇者とも一線を画すもの。クロの兄も似たような能力を持っているようだったが、俺に敵うとも思えない。


「では、参ります」


 俺の相手は雷の勇者ミシア、とか言ったな。


種族:人間・勇者

名前:ミシア:固有能力|雷躰《らいてい:肉体を武器とし雷を纏うことが出来る》

レベル:69

生命力:8109/9092 攻撃力:20982 防御力:19830 魔力:12980/15049

状態:思考誘導

スキル:拳術Ⅹ、魔術・雷Ⅳ 魔拳Ⅷ、自然治癒Ⅷ、物理攻撃耐性Ⅹ、魔法耐性Ⅹ、精神攻撃耐性Ⅲ、状態異常耐性Ⅸ、雷属性攻撃無効

権利:基本的生物権、自己防衛の権利、自己回復の権利

称号:雷の勇者


 ステータスを見た感じはよくいる近接戦闘を得意とする武闘派。遠距離攻撃手段を持たないわけではないらしく、また、固有能力の雷躰らいていもどれほどの性能かはっきりとしない。しかしその程度恐れるに足らず。

 こちらは近距離戦闘をと得意としないので好都合だ。一定の間合いを保ち、攻撃の隙を伺うことにしよう。


 ミシアは正面からこちらに向かって来る。俺が構えすら取っていないのを素人と見たか小手調べのつもりか。相手の意図を読み切れないうちは無理は出来ない。俺はミシアの踏み込みを理解したうえで距離を取り、勢いの取り切らない間合いへと逃げる。

 ミシアもそれを察してか身を引いて態勢を整える。


 先程のクロとの戦闘中、ミシアは雷躰を使って見せなかった。そして今になってもまた見せない。最初は味方を巻き込みかねないようなスキルかとも思ったが、制御が聞かないか、あるいはあえて自身に制限をかけているのか。

 もしも隠し玉として取っているつもりなのだとしたら、ステータスを見られているとも知らずに余裕ぶっているミシアが可哀想と言うものだが、それが戦場だ。


 情報を手にし活用する。それを身を以て体現するのが俺、探知の勇者の役割なのだから。


「なるほど、あなたには見えているのですね。私の動き、私の力が」

「ふむ、突然何を言い出すのかと思えば。当然、俺はお前の実力程度は一見するだけで分かる。それがどうかしたか?」

「いえ、そうではありません。天から授かりし御力で、看破しているのでしょう。であるのなら、私の能力を隠すのも無駄、ということになります」

「ほう」


 どうやら感づいたようだな。神妙な口調をしているだけあってただ者ではないらしい。


「それでは私の力の本髄をお見せしましょう。あなたに、そのすべてを見ることが出来ますか?」


 突如、ミシアの体に電撃が迸った。全身から発行するように乱れる光が宙を駆け、まるで空を割くように伝播する。

 その蠢きはまさしく雷の如く強烈で、一目で雷躰の発動を確信した。


 なるほど、使えば味方を巻き込みかねないという予想はあながち外れていなかったららしい。ミシアを中心としてかなりの範囲が雷に覆われた。ミシアは今、雷雲そのもののように、人々から恐れられ、見上げられる存在であった。


「さて、お前は人知を超えられるのか?」

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