見極めるために

 邪神とリルとの戦いはそれなりに長引いた。そしてその途中で気付いたのだが、どうやらリルは邪神を狩ろうとしていたわけではないらしい。

 見ていればリルはずっと時間稼ぎをしているようだ。その間にはどんどんと減ったは増える魔人たちをかな、ソル、リリ、ルナが狩り続けている。これでは消耗戦になってこちらが負けるのではないか、と気付いた頃にはすでに後の祭りだった。


 しかしそれは俺たちが不利になった、と言う意味ではない。邪神が魔人を追加で召喚できなくなったのだ。その場にいたすべての邪人と魔人が居なくなったのは、俺があれ? 数減った? と思った直後だった。


「あれ? 数減った?」

「ん、終わった」

「おお、マジか」


 どうやら終わったらしい。今目の前でかなが殴り飛ばした魔人で最後だったようだ。

 そいつが黒い霧となって消えた後、大きく聳え立っていた邪神の体が唸り声を上げた。


「具がy顔syがおdがy画素dぎゃをがdゴアがーーッッ!!」


 音の聞き分けられないそんな叫びが響いた後、邪神はその全身から黒い霧を吐き出し続け、すぐに跪いた。砂埃を立て、力を失ったかのように動きを鈍くした。しかしなぜわざわざこんなことをするのだろうか。普通に相手をすればすぐに倒せそうなものだが。

 俺なりに理由を考えてみるが、やはり分からない。なので手持ち部沙汰になったからかこちらに近寄って来たソルに聞いてみる。


「で、何が目的だ?」

「……邪神教だって馬鹿じゃないでしょ? 私たちに勝てないと分かってるはずなのにまた同じような邪神を持ってきたってことは、別に本命があるはずよ。だから、ここにいる誰でも邪神に対応できるのか確認するためにあいつの全力を調べておこうと思ってね。参考程度でも情報は多い方がいいわ」

「なるほどな。ちなみにそれを言い出したのは?」

「……リルよ」


 自分で考えたかのように言っていたソルの動揺は、わりとありありと伝わって来ていた。自分でも察されていると分かっていたからかソルの白状は想像以上に早かった。


「だろうな。けど、なるほどな。確かに参考になった」

「そう? 感想はどうよ」

「一言で言うなら、邪神を相手にするだけなら広範囲魔法を持たないでろうリウスとテト、スーラ以外は一人でも勝てそうだな。俺の評価が過剰でなく、過小でないのならな」

「概ね正しいのではないかしら。ステータスだけで語れない部分が大きいけれど、司の評価は間違っていないと思うわよ」


 頷いたソルは空を見上げながらそう言った。俺もつられて底を見れば、そこに居たのはルナだった。既に魔法の支度を終え、三つ四つの魔法陣が重なり合っている。その一つ一つが歪んでいるせいでよく見えないが、それは決して一つではなかった。

 

「《ムーンライト・ブラッド》」


 重なり合った魔法陣から降り注ぐ雨が赤く染まり、光すらも超える音を貫かせて地面に突き立てる。数百の赤い閃光が邪神を貫き、そしてその黒い霧を散々させた。飛び散る赤と黒の応酬が神とリルとの戦いはそれなりに長引いた。そしてその途中で気付いたのだが、どうやらリルは邪神を狩ろうとしていたわけではないらしい。

 見ていればリルはずっと時間稼ぎをしているようだ。その間にはどんどんと減ったは増える魔人たちをかな、ソル、リリ、ルナが狩り続けている。これでは消耗戦になってこちらが負けるのではないか、と気付いた頃にはすでに後の祭りだった。


 しかしそれは俺たちが不利になった、と言う意味ではない。邪神が魔人を追加で召喚できなくなったのだ。その場にいたすべての邪人と魔人が居なくなったのは、俺があれ? 数減った? と思った直後だった。


「あれ? 数減った?」

「ん、終わった」

「おお、マジか」


 どうやら終わったらしい。今目の前でかなが殴り飛ばした魔人で最後だったようだ。

 そいつが黒い霧となって消えた後、大きく聳え立っていた邪神の体が唸り声を上げた。


「具がy顔syがおdがy画素dぎゃをがdゴアがーーッッ!!」


 音の聞き分けられないそんな叫びが響いた後、邪神はその全身から黒い霧を吐き出し続け、すぐに跪いた。砂埃を立て、力を失ったかのように動きを鈍くした。しかしなぜわざわざこんなことをするのだろうか。普通に相手をすればすぐに倒せそうなものだが。

 俺なりに理由を考えてみるが、やはり分からない。なので手持ち部沙汰になったからかこちらに近寄って来たソルに聞いてみる。


「で、何が目的だ?」

「……邪神教だって馬鹿じゃないでしょ? 私たちに勝てないと分かってるはずなのにまた同じような邪神を持ってきたってことは、別に本命があるはずよ。だから、ここにいる誰でも邪神に対応できるのか確認するためにあいつの全力を調べておこうと思ってね。参考程度でも情報は多い方がいいわ」

「なるほどな。ちなみにそれを言い出したのは?」

「……リルよ」


 自分で考えたかのように言っていたソルの動揺は、わりとありありと伝わって来ていた。自分でも察されていると分かっていたからかソルの白状は想像以上に早かった。


「だろうな。けど、なるほどな。確かに参考になった」

「そう? 感想はどうよ」

「一言で言うなら、邪神を相手にするだけなら広範囲魔法を持たないでろうリウスとテト、スーラ以外は一人でも勝てそうだな。俺の評価が過剰でなく、過小でないのならな」

「概ね正しいのではないかしら。ステータスだけで語れない部分が大きいけれど、司の評価は間違っていないと思うわよ」


 頷いたソルは空を見上げながらそう言った。俺もつられて底を見れば、そこに居たのはルナだった。既に魔法の支度を終え、三つ四つの魔法陣が重なり合っている。その一つ一つが歪んでいるせいでよく見えないが、それは決して一つではなかった。

 

「《ムーンライト・ブラッド》」


 重なり合った魔法陣から降り注ぐ雨が赤く染まり、光すらも超える音を貫かせて地面に突き立てる。数百の赤い閃光が邪神を貫き、そしてその黒い霧を散々させた。飛び散る赤と黒の応酬が人多り止んだかと思えば、辺りに散在していた赤が再度針となり一点に集中した。

 それを最後に、邪神は黒い霧となって宙に消えた。そしてそれは邪神の死を意味した。


「やるわね、ルナ」

「ああ、流石だ」


 あれで詠唱魔法ですらない、ね。ルナも大概化け物だ。

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