囚われていたのは
目の前の扉が勢い良く爆ぜた。
どうやら小さな光の状態でもウォーリアーは魔法を使えるらしい。そして、ちゃんと扉を破壊した。木っ端みじんにした。跡形もなく破壊し、問題なく通れるくらいの大穴を開けてしまった。
どうやら素材をそのまま破壊する魔法らしい。そのため、物質の強度に関わりなく一定の被害を与えられる魔法らしい。威力はいらない、ということだった。
「うんまあ、開けてくれたならいいか。ありがとなウォーリアー」
「うむ、感謝する」
光の姿で声帯が無いからか返事は無かったが、小さく上下することで首肯の代わりか何かをしていた。意志疎通は難しいな。
「じゃあ改めて、何が……え?」
「あら?」
そこに、リリアがいた。
「リリア?」
「どうして私の……いえ、私たちの名を、知っているのですか?」
「どうしても何も……」
そこには、抑えきれていない魔力を放出し続ける原点には一人の少女がいた。
見慣れた童顔と長い金髪。暗闇でも見逃すことのないような鮮やかな碧眼や抜群のスタイル。包容力のある優しい声も、全部俺の知るリリアの特徴と一致する。
ただ、本人の反応からも伺えるのだが、俺自身的にも俺たちの知るリリアと同一人物とは思えなかった。
種族:亜人・クイーンエルフ
名前:なし
生命力:10192/10192 攻撃力:3293 防御力:8928 魔力:19182/19182
状態:正常
レベル:67
スキル:解析鑑定、森羅万象、完全支配、魔術・自然Ⅹ、魔術・治癒Ⅹ、魔術・空間Ⅹ、魔術・精神Ⅹ、精神強化Ⅹ、自然治癒Ⅹ、魔力即時回復Ⅹ、魔法無効、物理攻撃耐性Ⅹ、精神攻撃耐性Ⅹ、状態異常耐性Ⅹ、即死無効、鑑定眼、鑑定偽造、魔術強化Ⅹ、魔法威力増加Ⅹ、魔法効果範囲増加Ⅹ、魔法消費魔力効率上昇Ⅹ、魔術高速詠唱Ⅹ、超脳神域
権利:基本的生物権、魔術使用の権利、自己回復の権利、自己防衛の権利、見通す権利
称号:大魔術師、殺戮者、天災
えっと……。
「化け物だ」
「誰が化け物ですか。千年ぶりに人と出会ったと思ったら、私を見た最初の一言がそれですか。失礼ですね」
「あ、いやごめん」
やっぱりリリアではないのだろう。名前が無しとなっていたり、その反応でわかることではある。
それに、種族がクイーンエルフでステータスがリリアを軽く上回っている。スキルの数も、称号もおかしい。権利にも見たことのない、見通す権利と言うものを持っている。
考えられるのは、一つだろうな。
「お前は初代クイーンエルフ、と呼ばれる存在で間違いないよな?」
「ええ。リリアの名を、私を見てその名を呼ぶということは私の子孫の知り合いなのでしょうか」
「俺は四代目クイーンエルフの奴隷、精霊人の司。こっちは俺の制約魔獣のリル、って紹介でいいか?」
「構わん。しかし、原初のエルフに会えるとは。くくっ、奇怪な縁もあるものだ」
そう言って笑ったリルの気持ちは良く分かる。
初代エルフに会えたこともそうだがこんなところで、ってのも奇怪と言える。獣王国の地下牢の最奥に封印されていた、なんてどんな状況だ。俺はそういうもんと納得して落とし込んでるが、深く考えても分からないようなことになってるよな。
「そうなんですね。私のひ孫の奴隷……精霊人と言う種族も珍しいですがあなたほどの実力者を奴隷にするとは、かなり実力を持っているようですね。エルフクイーンは四代目となっても、その力は健在ですか」
「ん? ああ、四代目はハイエルフだよ。三代目もな」
「え? そうなんですか? そうなると、あなたほどの力を持っているとは思えないのですが……」
「いや、最初は俺の方が弱かったんだけどな。色々ありすぎて、奴隷になってからしばらく経ってこうなった」
「え、ええ?」
初代クイーンエルフは首を捻った。当然と言えば当然だな。俺たちの珍道中を言葉だけで説明するのは無理だという自覚があるしな。
「まあ気にしないでくれ。それより、あんたの事情を聞かせてくれよ。俺たちはネル、原初の魔獣の一人に言われてこの国に来て、偶然あんたを見つけたんだ。どうしてここにいるのか教えてくれると助かるんだけど」
「そう、何ですね。嘘は付いていないようですし、良いでしょう。次いでいえば、私の解析偽造を見て私の嘘を疑わないことも、あなたがスキル頼みの素人ではないことを語らっていますしね」
「ん? ああ、そりゃあどうも」
……解析偽造、ってスキルもあったな。たぶん名前通りなんだろうけどスルーしてたよ。
「私はあなたの覗いた通り初代クイーンエルフ。二代目にその名を継いだことで名と固有権能を失いましたが、確かにかつてリリアの名を冠した存在です。そして、あなたの言うネル。原初の魔獣の一人とも友人、と言えます。あの方に聞いたのなら、あなたを信用できると考えましょう。私がどうしてこうなったのかを、包み隠さず話しましょう」
そう厳格な態度で言い放った初代クイーンエルフは佇まいと整え、改まった様子で立ち上がった。
「私は、ここで獣王国国王に千年もの間ずっと、匿われていたのです」
「匿われていた?」
どうやら、疑問は簡単には解消されないものらしい。
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