第14話 指導方針の確認

 翌日、アレンはメルティ達と合流するために、ギルドに来ていた。まだ、メルティ達は来ていないようなので、椅子に腰掛けて、今後の指導方針の確認をしていた。

 それが終わる頃、メルティ達がギルドにやって来た。


「お待たせしてすみません。アレンさん」

「いや、僕が早く来すぎているだけだから、気にしないで。それよりも、今後の指導について、話があるから座って」


 アレンにそう言われて、メルティ達が席に着く。アレンは、まずメルティとニッキに視線を向ける。


「まずは、メルティ達だけど、このままの修行を続けて貰う。魔法をメインに使う二人は、魔力伸ばしと魔法に関する知識が必要不可欠だからね」

「分かりました」

「うん」


 次にリックとガイに視線を移した。


「二人には、戦技修得を目標に修行を続けて貰いたい」


 アレンがそう言うと、リックとガイの二人は、眼を見張って驚いていた。


「二人とも、戦技は知っている?」


 その様子を見たアレンは、もしかしたらと思いそう尋ねる。


「さすがに知っている。だけど、俺達が修得出来るものなのか?」

「もしや、アレンさんは戦技を持っているんですか?」


 二人とも戦技については、一通りの知識があるようだ。アレンは、これなら話が早いなと思った。


「さすがに、僕は戦技を持っていないよ。それに、誰かから受け継げるって事でも無い。リックとガイには、自分で修得して貰うしかないんだ。時間を掛ければ、二人でも何かを掴めるとは思う」

「じゃあ、確実に修得出来るってわけじゃないんだな」

「さすがに、そこを保証は出来ない。ただ、皆が、【狂神の砦】を目指すなら、修得は必須だと思って欲しい。Sランク冒険者の中で近接戦を主体とする人達は、全員戦技を修得しているからね」


 アレンの言葉に、リックとガイの顔が強張る。自分達が、戦技を修得出来るかどうかで、Sランクに上がれるかどうかが決まってくると感じていたからだった。


「そこまで気負わなくても大丈夫。これから、君達は幾度も死闘というものを経験する事になる。その度に、何かしらの感覚を掴めるはずだ。多分……論文ではそう書いてあったし……」


 最後の方は自信が無くなってきていたからか、尻すぼみになりながらアレンがそう言う。リックとガイは、胡乱げにアレンを見つつも、先程までの不安が消えている事に気が付いた。

 アレンの下手くそなフォローでも、自分達には、勇気を得るに十分な事だったのだ。それだけの信頼をアレンに寄せていた。

 これまでのアレンの熱心な指導などがそう思わせるまでに至っていたのだ。


「それじゃあ、早速ダンジョンに行こうか。今日は、少し長く潜るよ」

「え? ま、まさか、また連続戦闘の練習ですか……?」


 メルティは、この前行った連続戦闘の練習をもう一度するのかと思い、顔を強張らせる。前回、ギリギリで対応出来たとは言え、まだまだ自信が持てる程ではないので、緊張してしまうのだ。


「ううん。もっと難しい事だけど」


 アレンの言葉に、全員が「え?」という顔になった。


「【小鬼の巣窟】のボスであるホブゴブリンと戦って貰う」


 メルティ達は、突然出されたボス戦に驚きを隠せなかった。自分達には、まだ早いと考えていたからだ。そして、それはアレンも同じだと思っていた。だが、そのアレンから、ボスと戦うという言葉が出て来たのだ。

 開いた口が塞がらなくてもおかしくは無い。


「わ、私達には、まだ早いのでは? まだまだ、修行を始めたばかりですし……」


 メルティの意見に、皆が頷く。全員が同じ意見だったからだ。


「別にそうでもないと思うけど。そもそも、今やっている修行って、指導含まれるものってわけでもないんだよ。本来だったら、最初のダンジョンを攻略させるだけで終わりってものだからね。他の指導員が、同じような事をしているところ見た事ないし」


 アレンが指導員を始めてから、何度か他の指導員を見ているが、アレンのように自主練などに付き合おうとするような指導員はいなかった。

 その人達が怠慢なのではなく、自主練にすら付き合うアレンがおかしいだけなのだ。


「普通は、攻略するまでに、必要な事を全て詰め込むからですか?」

「そういうこと。罠については、ちゃんと学べないけど、基本的なダンジョンの攻略法と魔物との戦い方は、【小鬼の巣窟】で充分学べるからね。ボス戦はその集大成というわけ」

「では、ボス戦が終わったら、アレンさんの指導は終わりということですか?」


 メルティは不安そうな顔になる。アレンに依存しているというよりも、まだ学び足りないと感じているのだ。それは、リック達も同じだった。


「さすがに、ここで投げ出すなんて事はしないよ。今日のボス戦は試しにやるって感じだよ。今の強さを認識しやすいのが、ボス戦ってだけだから」

「それって、何度ボスと戦うって事か?」

「そういうこと。修行の成果をボスで試すって意識すれば良いかな。それじゃあ、行こうか」


 アレン達は、【小鬼の巣窟】へと移動する。メルティ達の初めてのボス戦を行いに……

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