第5話 配信って動画ですか?

 初めてのゲームを終えた私はヘッドギアを外して机に置いた。


 「…楽しかった……」


 ルカは、最初はいやいやプレイしたゲームに今は引き込まれていた。


 時刻は、もう夜だ。私は夕食の料理をするお母さんを手伝うためにキッチンに向かう。すると、案の定お母さんが料理を作っていた。


 「ルカ、手が空いてるなら食器を並べてくれるかしら。」


 どうやら足音で私がいることが分かったようだった。こちらを見ずにお母さんはそう言った。


 「…んっ……」


 私は適当に返事をしてテーブルに食器を並べた。夕食の支度が終わり、お母さんと二人で席につくと夕食を食べ始めた。


 「ルカ、ゲームは楽しかった?」


 「…うん……」


 「そう、それは良かったわね」


 「おじいちゃんにお礼の電話しなさい」


 「……んっ、、…」


 少し嫌そうにする私を見たお母さんがある提案をしてきた。


 「もし電話するのが嫌なら代わりにおじいちゃんにゲームをしている所を動画で送りなさい。あなたがやっているゲームは動画を撮影できるから後でそれを見せてあげればおじいちゃんも喜ぶわよ。」


 長く話さなくて済むならと私はそれを了承した。

 夕食も終わり、片付けも終わるとお母さんは早速、私の部屋に来て動画撮影の設定をしてくれた。

 後はゲームをすれば自動で動画を撮影してくれるようである。


 この日はその後ゲームをすることなく就寝した。




・・・次の日ゲーム内・・・・


 私がゲームを始めると調薬ギルドの前からスタートした。

 すると、彼女の目の前に何かの説明が流れた。

 どうやら動画の撮影開始を指示するもののようだ。

 私はとりあえず常時動画を撮影にしてゲームをすることにした。


 このとき、彼女は気がついていなかった。動画の撮影ではなく、配信するかの設定をオンにしたことに。彼女は動画とかにも詳しくないため、自分のゲームプレイが不特定多数に見られているとは考えていなかった。


 そんなことはさて置いて、ルカはクレアの家へと向かった。家の前に着くとドアをノックする。すると、クレアが出てきた。


 「あんた、何で裏口から入ってくるんだい」


 「……ん?……」


 そう、前回彼女が入った扉が正面ではなく裏口だったのだ。なら、不気味なものがいろいろ置いてあったことにも納得がいく。


 「今度は、正面から入ってきなさい」


 「…分かった……」


 クレアは私が本当に理解しているのか疑っていたが、とりあえず納得することにしたようだ。


 「さて、今日は調薬の基礎である回復薬の作り方を教えるよ。まずは、薬草と水、器具の用意をする」


 「水は、蒸留器にかけて蒸留水を作るんだよ。そうそう、蒸留水は多いに越したことはないからね。多く使うから。次に薬草を乾燥させる。そして、乾燥させた薬草がこれだよ。この薬草を薬研ですり潰して蒸留水を加えて混ぜる。その後、溶液を火にかける。このとき、沸騰させないようにするんだよ。沸騰させると苦くなるからね。それで最後に布で漉してガラス瓶に移して完成だよ。」


 「さて、流れはわかったかい。」


 「…ん!……」


 「それじゃ、早速やってみるかい。」


 その言葉に頷くと私は回復薬の作成にかかった。


 井戸からくんだ水を蒸留器にセットする反対には蒸留水を受け取るガラス瓶を置いた。そして井戸水の入った瓶を火にかける。すると井戸水が蒸発して蒸気となる。蒸気となった水は管をとおり隣の瓶に行く間に冷やされて水に戻り瓶に貯まる。こうすることで、瓶の中には綺麗な水である蒸留水を作ることができる。


 次に薬草を乾燥させる。薬草に含まれるいらない水分をとばす。すると薬の効果が高くなるそうだ。そして薬効成分を抽出しやすくするために、薬研で潰して蒸留水と混ぜる。そして、それを火にかけて抽出を行う。このとき、沸騰させると薬草に含まれる苦味がでてきて効果が下がると同時に苦くなるそうだ。


 最後に布で漉して余分なものをとって瓶に詰めたら完成である。


 「…できた……」


 「おめでとう。初めてにしてはよくできたね」


 「…うん!……」


 私は初めて作った回復薬を見つめた。やっと薬を作れたという喜びに浸っていた。


 「その回復薬をここの台の上に置いてごらん」


 クレアに言われるがままに瓶を台の上に置いた。すると、その台に文字が浮かび出した。それを見ると回復薬のステータスが書かれているようだ。



---------


初級回復薬


 HPを10回復する。

 クールタイム:5分


--------- 


 「…クールタイム?……」


 ルカはこの言葉を聞いたことがなかった。するとクレアが教えてくれた。


 「クールタイムっていうのはね。薬を飲んだら次の薬を飲むまでに開けないといけない時間のことだよ。いくら薬といってもたくさん飲めば、毒になるからね」


 確かにそうだ。いくら薬でも使い方を間違えれば毒になる。薬が好きな私は、お母さんに何度も言われた言葉だ。

 薬の扱いには注意しないとな。


 「さて、この回復薬は記念にもっていなさい。あと今使った器具はそのままあげるからね。後は、ギルドで情報を調べたり、図書館で調べたり、人に聞いたりして作れる薬を増やしなさい。私が教えても良いけどそれじゃつまらないでしょ。だから自分で見つけてみなさい。分からないことがあったら、いつでも相談にのるからね」


 「…うん…ありがとう……」


 私は自分で調べたいと思った。確かにこのままクレアに全て習った方が楽かもしれない。しかし、それでは面白くない。


 「もう少し回復薬作ってみるかい?」


 「…ううん…大丈夫……薬草取りに行く……」


 「そうかい。気をつけてな。用事がなくても、いつでも来なさい」


 「…また来る……」


 そう言うと私は調合器具をポーチに入れて店を出た。




SIDE ルカ・フローレスの配信 part1


槍使いの男:初見!


バーのマスター: こんにちは


剣使いの女:このタイトルって無編集?


槍使いの男:というか、この子配信に気付いてないよな


バーのマスター: 気が付いてないね〜


剣使いの女:大丈夫かな?


農家の男:問題があればAIが判断して配信終了するから問題ない


剣使いの女:それもそうか




〜しばらく時間が経ち、初めて調薬をしているとき〜


バーのマスター:この子、初心者だな


槍使いの男:そうだな。調薬師なのか


農家の男:こうやってみると調薬っていろいろと手間がかかるんだな


剣使いの女:錬金術だと材料揃えてポンだもんね


料理人:それで作れる回復薬が同じなら調薬より錬金術の方が人気になりますよね


村人:それでも今後に期待して調薬をやる人はいますけどね


バーのマスター:でもこの娘はよほど調薬が好きみたいだな。笑っているよ。


料理人:いい顔してますね。私がこのゲームで初めて料理をしたときのようだ


農家の男:この前納品したときに会ったけど、おまえの顔だと怖いだけじゃないか


料理人:五月蝿い。だまれ


バーのマスター:そのくらいにしておけ


剣使いの女:どうやら無事に回復薬ができたみたいね


槍使いの男:この回復薬は普通だな


村人:何か面白いこと起きないかな


料理人:この後、外に出るみたいだからそれに期待だな





 こうして、ルカは誰かに見られているとは思わずに街の外へ向かった。

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無口で初心者な私でもVRMMOはできますか? 若葉 冬雪 @JIN5009

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