第3話 ギルドって何ですか?

 こうして私は調薬を学ぶため、クレアおばあさんと調薬ギルドに向かった。背の低い子どもなルカとおばあさんのクレアが一緒にいると、お婆ちゃんと孫が仲良く散歩しているようだった。


 ずいぶん微笑ましい光景である。

 道行く人も彼女らを見て少し和んでいるようだった。


 「さて、ここが調薬ギルドよ」


 どうやら目的地についたようだ。


 「…おぉ!………」


 その建物は、周りと比べてもずいぶんと大きな建物だった。道に面したところにはこの世界の文字で書かれた看板があり、調薬ギルドだとわかるように薬草の葉とガラス瓶を重ね合わせたマークが描かれた旗もつけられている。


 今見ているだけでも、多くの人がそのギルドを利用していることがわかる。


 ところでギルドって何だろう。

 ゲーム初心者のルカは聞き慣れない言葉の意味を考えた。

 調薬を学ぶためにここにきたわけだから、学校みたいなところかな?それとも人を治す薬を売る薬局みたいなとこかな?


 「さぁ、中に入るよ」


 考えているルカをおいて、おばあさんは先に行ってしまった。遅れないように急いで後を追う。中に入るとカフェのような広い空間に椅子とテーブルが多く並べられていた。部屋の奥にはカウンターがあり何やら薬や薬草を売ったり、買ったりしているようだ。


 おばあさんは迷わずギルドの奥に真っ直ぐ向かった。

 カウンターに着くと、そこには美人のお姉さんがいた。


 「こんにちは。クレアさん、本日はどのようなご用件でしょうか?」


 「リアかい、私はいつもの用事をお願いしたい。」


 すると、お姉さんが小さくて見えていなかった私の存在に気づいた。


 「あら。可愛らしい子。クレアさん、どこから連れてきたんですか」


 「すまんが、話しは後にして仕事を先にしてもらえるかい。私は他の用事があるから、その間にこの子のことを頼むよ」


 「かしこまりました」


 そう言うとお姉さんは、おばあさんを見送り私を見てきた。


 「本日はどのようなご用件でしょうか?」


 ここで私は何かをするためにここに来たことを思い出す。

 何だっけ?クレアがいないから何をすれば良いのか分からない。


 「…ん?………」


 そうするとお姉さんは何かを理解したかのように動き出した。そして私に何かを取り出し渡してきた。


 「すみませんが、お嬢さん。こちらのギルドカードを握ってもらえますか。」


 板?よく見るとそれは金属の板であった。握ったところで何があるんだろう?まぁ、とりあえず従うか。


 ギルドカードなる板を受け取り、手で握る。少しひんやりしていて気持ち良い。少しすると手の中の板が軽く光った。


 「はい、これで登録完了しました」


 「…んっ?………」


 これが何になるんだろう?説明もないから全く分からん。質問するのが面倒だった私は、目で伝えられないか試してみた。お姉さんを見つめた。茶髪のショートヘアにきれいな茶色の目をした人だ。私に見つめられて少し落ち着かない様子だ。


 「あ、あの〜。どうかされましたか?」


 しばらく我慢くらべのように見つめ合っていると、用事を済ませたクレアさんが戻ってきた。


 「何してるんだい?」


 「クレアさん。こちらのお嬢さんが何か悩んでいらっしゃる様子だったので」


 「そうかい。ルカよ。少しくらい話したらどうだい?」


 「…ギルドって何?……」


 「ルカ。あんたはギルドを知らないのかい!?」


 私が頷くのを見て、クレアとリアさん?は頭を抑えている。どうやらギルドは一般常識でとういうものか知っているもののようだ。


 「クレアさん、本当にどこからこの子連れて来たんですか」


 「私も聞きたいよ」


 「…んっ……ごめん………」


 「はぁ、仕方がない子だね。リア、説明してあげておくれ」


 「分かりました。ギルドは都市において結成された各種の職業別組合のことです。商人ギルド・冒険者ギルドなどさまざまなギルドに区分されています。分かっていると思いますがここは調薬ギルドです」


 まぁ。調薬を学びにきているのだからここが調薬ギルドだろう。


 「調薬ギルドは、調薬に関する道具の売買、薬草の売買、薬の売買、調薬師のランク認定や、調薬に関する特許及び情報の取り扱いなどを行なっています。ほかにもギルドに所属する方の相談に乗ったりもしています。気楽に声をかけてください」


 いろいろあるな。覚えてられるかな?


 「まぁ、ルカが覚えておくべきなのは道具の販売と薬草の売買、薬品の売買と調薬師のランク認定と情報くらいかね。何か分からないことがあればリアに聞けば良い」


 私が必死を覚えようとしているのを感じたのか。クレアさんがアドバイスしてくれた。


 「いつでも私を頼ってくれて良いですよ。ギルドをよく理解して正しく利用してください」


 「…んっ!……分かった………」


 覚えてることが多いから、リアが助けてくれるならありがたいなぁ。


 「あと、先程渡したギルドカードはこちらのギルドや調薬師ランクの証明などに利用するので無くさないようにしてください。無くした場合、再発行の手数料として10,000kをいただきます」


 うわ〜。再発行の手数料高いなぁ。無くさないようにしよう。


 リアさんの説明が終わるとクレアが話し始めた。


 「さて、これからルカには街の外に行って薬草を取ってきてもらう。根っこまで取ってこないように気をつけてね。根っこまで取ると薬草が生えなくなってしまうからね。茎を切ってくれば良いからの。」


 「…分かった………」


 「夜遅くなるまで、薬草とっていないようにね。」


 私は頷き、薬草を採取しにギルドを出た。

 意気揚々とギルドを出た私は、すぐに引き返した。

 外に出る道を知らなかったのだ。


 「どうしたんだい?忘れ物かい?」


 「……道…分からない……」


 「はぁ、そこの扉を出て右に真っ直ぐに行けば出られるよ。」


 「……ありがと………」


 「はいよ。気をつけてね。」


 無事に道を聞けた私は、クレアとリアの呆れた顔に見送られた。ギルドの扉を出て右を向き街の外に向かって歩き出した。


 しばらく歩いていると街と外の境となる門の前にやってきた。どうやらこの街は、大きな壁で囲まれていてこの門から出入りするようだった。


 門のところには、門番がいたが特に問題なく通ることができた。門を潜るとそこには、広大な高原が広がっていた。

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