君にただ。

しゃけ大根

一章 1

あれはそう、雨だ。雨が降っていた。


だけど、心地のいい、良い雨だ。


でも、ちっとも心は心地よくなんかなかった。


とても、苦しかった。


なぜなら僕は、彼女の後ろ姿を、


ただ唇を噛み締めながら見守ることしかできなかったのだから。




⬛⬛⬛




「ーる、ひかるー。おい、聞いてるのかい?」


「ん、うん。聞いてる聞いてるー。」


「絶対ぼーっとしてて聞いてないだろぉー。」


「いいや、そんなことはないぞぉー。聞いてた聞いてた。」


「じゃあ僕は、何の話をしてたでしょう?」


「えっと最近発売したポテチの話だろ?聞いてたよ。」


「ブッブー、誰もそんな話してないよ。やっぱり聞いてなかった。」


道流みちるはいつもポテチ大好きマンだろうが。」


「さすがに時と場所はわきまえるさ。」


「時と場所ねぇ。」


僕と道流は今、ファミレスでドリンクバーを楽しんでいる。とは言ったものの僕はメロンソーダしか飲まないんだけどね。道流とは小学校から今までクラスは一緒だ。


すなわち、親友と言うことだな。毎日ではないがこんな感じで道流とたまにファストフード店やファミレスなどでポテトやドリンクバーを楽しむ毎日を送っている。


まぁ、それなりに充実していて不便不自由のないとてもいい暮らしをしている。


「明日はどこ行くかい?」


「また行くの?さすがに金欠だよ。中学二年生にはちょっとキビシイかなぁ。」


「僕も同じ中学二年生なんだけどなぁ。」


「ま、それもそっか。母さんにお金もらえるか頼んでみるよ。」


「無理にとは言わないけどねー。」


だいぶ外も暗くなってきた。そろそろ帰らないとな。


今日は木曜日。ん?待てよ。木曜日。塾の日だ。急いで帰らないと間に合わない。遅刻だ。


「悪い、今日塾の日だったわ。すっかり忘れてた。速攻帰るから。会計ヨロシク。」


「おっけ。」


そう言って僕はテーブルにドリンクバー代300円を置いて店をあとにした。


塾。僕は別に塾に行きたくて行ってる訳じゃない。理由がなければきっとすぐやめていた。でも、僕は中学に入学していれられた塾に変わらず通っている。


一つだけ、僕が塾に行きたいと思えることがあるから。


そう、たった一人の女の子に会うために。

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