第12話 幽霊の料理は素朴でも最高に美味しい料理だった
ひったくり犯を捕まえた翌日、今日もゆかが料理をしてくれていた。
僕が料理をすると言ったが、「ガスコンロも電気もない状態で料理ができるんですか?」と聞かれ反論できなかった。
いい加減インフラを整備しなければいけない。
ゆかはテキパキと念動力で朝食の準備をしていってくれる。
彼女曰くポルターガイストらしいが、呼びにくいので念動力ってことにしている。
朝食は長ネギの味噌汁に白米、それに鯖缶だった。
ご飯は今まで自分が炊いて食べたものよりも、数段美味しかった。思わず、「めちゃくちゃ上手い」と声をだしてしまった。かまどで炊いたご飯は美味しいとは聞いていたが、こんなにも違うものなのかと改めてビックリする。
きっとゆかの料理能力が高いというのもある。
会社員時代、お腹が空いたら米もとかずに水だけいれて炊いていたが、お米に水分を吸わせることで、お米がふっくらと炊き上がる。
ご飯が美味しいのは嬉しいが、自分だけ食べるご飯を彼女に任せっきりっていうのもなんか変な感じがする。
僕がボッーとそんなことを考えながら彼女を見ていると、彼女が笑顔で話しかけてきた。
「今日は何をされるんですか?」
「そろそろ、スマホの充電、それにガス、電気、水道の契約かな。それに必要な物の買い出しにも行きたいんだけど……貯金が少ないからどうにかできないか考えてる」
「なるほど。それならいい考えがありますよ。ちょっと友達のところに寄ってから、ガスと水道と電気を手に入れにいきましょう」
「えっ? 念動力で無理矢理……?」
「違いますぅ! でも、せっかく幽霊と一緒に住むんですから、少しくらいは得をしないと」
ゆかがウィンクしてくれる。
今、人生で初めてウィンクからハートが飛び出したきがした。
なにあれ、幽霊だから?
それとも錯覚か?
可愛すぎることがこんなにも危険なことだなんて、この歳になるまで知らなかった。
本当に可愛いは正義らしい。
ただ、担当の人を洗脳するとかそんな危険なことじゃないことを祈りたい。
昨日ゆかが頭に手を置いてひったくり犯にお仕置きをしていたのを思い出す。
そんな無実の人を傷つけるなんて絶対にダメだ。
「ゆか……この家のインフラのために、人を襲っちゃダメだよ」
「ちょっとどういうことですか! 私はまともなことしかしませんよ!」
人助けはいいことだが、あの男性2人の怖がり方は尋常じゃなかった。
あんな風になったら……思い出すだけでも身体が硬直しそうになる。
うん。歯向かうっていう選択肢はなさそうだ。
「ソウダネ……ホントウニサスガ……」
少し声がうわずってしまった気がするが彼女は嬉しそうな笑みを浮かべている。
昨日見た凍えるような笑みとはまるで違っていた。
「それじゃあご飯を食べたら買い物行きましょ! 途中で私の友達紹介しますね!」
ゆっ……幽霊の友達……骸骨剣士だろうか。
なんだろう。すごく嫌な予感しかしない。
現に背中には変な汗をかいている。
どうやって断ったらいいんだろうか。
そんな僕の意思とは関係なく、彼女は鼻歌を歌いながら食べ終わった食器を片付けてくれていく。
この片付けが終わったら……。
僕生きていける?
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