第9話 竹やり相手にその可愛いは反則
幽霊のパワースポットと聞いて僕が家をでていくかどうかも一瞬考えたが、選択肢はないことを思い出した。もうここを拠点にするしかないのだ。
僕は早速家の片づけをして買い物へいくつもりだったが、外はまだ雨が降っており、出かける気力が一気になくなった。
「そういえばまだ名前を聞いてなかったけど、名前は?」
「私の名前はゆかです。苗字は……いつの間にか忘れてしまいました。なのでただのゆかでお願いします」
「よろしく。僕の名前は最上大志、呼び方は好きに呼んでもらってかまわないよ」
「最上さんですか……ならもっくんですね! よろしくお願いします」
「もっ……くん?」
「ダメですか?」
予想外にフランクな呼び方と彼女の上目遣いは、破壊力がありすぎた。
竹やり相手に空母持ち出すのはずるい。
「いや、もちろんいいよ。名前なんて結局識別できれば問題ないわけだから、そのなんていうか、もっくんって可愛いなって思っただけ」
「ふふふっ可愛いのはもっくんですよ」
顔がみるみる赤くなるのを感じる。
ここにこれ以上いたらダメだ。
胸が締め付けられ、キュン死する。
「ちょっと、色々あって疲れてしまったから僕は横になるけど、ゆかは今まで通りこの家の中を自由にしてていいよ」
「本当ですか? ありがとうございます」
僕はそのままリビングの床で横になる。
時計がないので時間がわからないが多分夕方16時から17時くらいじゃなだろうか。まだ寝るには早いけど明日から仕事もないので眠くなったら寝るのが一番だ。
カーペットからはカビの臭いはするし、埃っぽいし、掛布団もないが雨風を防げるだけでも全然いい。
ゆかが怖くないかと言われれば怖くないわけではないが、僕は基本的にアホなのかもしれない。幽霊でも可愛いゆかなら大丈夫だと思ってしまっている自分がいた。
あれだけ人に裏切られると、生身の人間の方が怖い。
そのまま瞼を閉じると、すぐに意識は沈んでいった。
暗い世界の中で一筋の光をみたような気がした。
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