第7話 幽霊? いえきっと立体ホログラムじゃないかな
僕は一度現実を受け入れるためにゆっくりと扉を閉め深呼吸をする。
きっと何かの見間違いだ。可愛い女の子がいたらいいなんて思っていたからきっとカーテンか何かを見間違ったに違いない。
それか、田崎さんがいたずらで立体フォログラムを……。
いや、なんて失礼なことを僕は考えているんだ。あれほど優しくしてくれた人を疑うなんて、性格が悪すぎる。
なにはともあれ、確認しなければいけない。
一度、閉めた扉をゆっーくりと開けてみる。
呼吸と鼓動が段々と激しくなる。
もう一度見てみると、先ほど女の子がいたところには何もなかった。
窓から差し込んだ光が僕に幻覚をみせたようだ。
「はぁ、疲れているとは言え誰もいない部屋に女の子が見えるなんて、早く寝た方がいいな。漫画喫茶で意外と寝れなかったからな」
「私が……見えるんですか?」
どこからか声が聞こえる……僕が見ていた方とは逆側だ。
恐るおそる、ゆっくりと振り返るとそこには半透明の女の子が座っていた。ここまではっきり見えるとやっぱり立体映像だろうか?と思ってしまう。
あっ3Dマッピングの可能性も捨てきれない。
でも、僕の頭の中にある知識を総動員しても、彼女を幽霊以外で説明できるものはなにもなかった。
「失礼しました」
幽霊に話しかけられたんだけど。
扉をゆっくりと閉めてどうするかを考える。あのまま彼女が何もしないのであればこの部屋を貸し出してもいい。
どうせ一人暮らしなのだから、こんなに広い家は必要ない。
1階と2階でシェアハウスならありじゃないだろうか。
まずは意思疎通ができるかでも変わってくる。
話しかけられたってことは……。
もう一度、ゆっくりと開ける。
彼女は同じ場所に座っている。
色白で、芸能人でいうと、あの有名歌手と結婚した女の子くらい可愛い。
あれ、名前がでてこないんだけど、ほらあのめっちゃ可愛くて、見てるだけで癒されるあの女の子。
彼女がゆっくりと顔をあげ目があうと、一瞬ドキッとしてしまう。
相手は幽霊だというのに僕は何を考えているのだろうか。
これぞきっと吊り橋効果か。
人は怖いドキドキも恋愛のドキドキも判断できないと言うのを聞いたことがある。
だから、初デートで怖い映画はある意味正解だと聞いたことがある。
でも、個人的には慣れ親しんでいない女の子をそんな理由で怖い映画に誘う男はダメだと思うけど。
僕は思いきって部屋の中に入る。
女の子は僕の方を見たまま、首をかしげる。
とりあえず、彼女から一番遠いカーテンと窓をあけていく。
光の下で見れば、また違ったように見えるかもしれないと考えたからだ。
それにしても本当に幽霊が見えるとは思わなかった。
おかしな話だが、ビックリするくらい半透明だ。
「私のこと見えてます? 声聞こえていると嬉しいけど……」
声がめちゃくちゃ可愛い。
なにこの可愛い声。
相手は幽霊だというのに、僕の頭の中は可愛いしかないんだけど大丈夫だろうか。いや、ダメだな。
幽霊に話しかけられたらどう反応すればいいのだろう。
そんなマニュアル聞いたことない。
「あの、今日からここに住むことになりました」
「そうなんですね。ここから出て行きますね」
「えっ!? でていけるの?」
彼女はそのまま、本当に部屋からでて行ってしまった。
除霊完了?
「本当にでていってくれるの?」
彼女が部屋からでると、ちょうど雨がポツリ、ポツリと降り出してきた。
屋根を叩く雨音は段々と激しさを増していく。
彼女のことも気になるが、先に開けた窓を全部閉めないといけない。
雨は強くなり、ザーッと音をだして降り出した。
僕が1階に下りて行くと、窓から見える自販機のところに女子高生の集団がいた。
飲み物を買っているようだが、自販機の横に体育座りしている彼女のことは見えていないようだった。
彼女は僕以外、誰にも見えていないらしい。
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