次の日の空
tashiro440
①
きっかけは些細なことだったと思う。何か教室で起きたことに対しての感想が一致したとか、なんとなく嫌だと感じていたことが同じだったとかそんなことだったような気がする。
座席が近かったこと、受験前ということで自習が多かったから僕はその女の子とよく話していた。
様々なことに対して考えていることが一致した。
それは本当に居心地がよく、それまで同じクラスになってから半年以上ほとんど話したこともなかったのに、秋ごろからはその子とずっと一緒にいた。
一緒にいることが当たり前となったころに、彼女に告白のようなことをされ、交際をなし崩し的に始めることになった。何月何日から付き合い始めたかは覚えていない。
当時は記念日という考え方を斜に構えて捉えていたし、若いとき、初めて付き合い始めたとき考えがちなように、僕は、彼女とは長く付き合っていくし、結婚もおいおいするものだとなんとなく考えていたのだ。
そして大体2年と何か月か経った昨日、そんな彼女とは別の道を歩むことを決めた。
決めさせられたのだけど。
彼女とは結果的に別の大学へ通っていたのだが、週末になると毎週のように様々なところへ連れていかれたり、買い物に付き合ったりしていた。テーマパークの年間パスポートも買ってハロウィーンやクリスマスを同じようなカップルがいる空間ですごしていた。
昨日も同じような過ごし方をしたと思う。傍から見たらきっとこれから別れ話をするようには見えなかったのではなかろうか。
でも、合流して2時間もしたころには僕はそのように言い出すしかなくなっていた。
川沿いの道を歩きながらおかしいな、と思う。
この2年といくらかの間にもちろん些細なことでちょっとしたけんかのようなことはしたかもしれないが、それも話し合って彼女の考え方を理解できていたと思う。自分の何かが悪かったのだろうか、それとも彼女の何かが悪かったのか、それとも知らないうちに浮気などがあったのだろうか。
そんなことを考えていたら、ぼーっとSNSを眺めていた手元のスマートフォンの画面が見えなくなった。
並木道を歩いていたつもりが、木がなくなるところまで歩いてきていたらしい。
休日とはいっても午前中だからか、まだまだ肌寒い時期だからなのか、見かけるのはランニングをしている男の人や、ジョギングをしている夫婦くらいである。
道の脇の細い道から見えた有名な神社に似ている名前の神社を意味もなく軽く覗き、本尊へ手を合わせて拝む。
スマートフォンにて駅の方角を無意味に確認した後、来た道をまた折り返して歩き始める。
こんなことでも自分で歩く道を決めるのは久しぶりな気がした。
歩き始めたとともに伸ばした左手が空を切る。ごまかすようにそのままなんとなく伸びをする。歩く速度は女の子の小さな歩幅に合わせることに慣れた速度からさらに遅くなる。
目線も合わせて上げると、空は澄み切っていて、記憶より随分明るいものになっていた。
木のところにある看板と照らし合わせると、桜の花がもうすぐ咲くのがわかった。
次の日の空 tashiro440 @ohitashi440
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