第31話 神木未央奈 視点
「ほらっ、着きましたよ」
「うーん、ごめんねぇ」
ちょっと飲みすぎたなぁ……。
あれから私達は服選びを楽しんで、それからデパートに行ったりご飯食べに行ったりした訳だけど、その時についついお酒を摘まむというポカをやらかしてしまう事に。
だってしょうがないじゃない、急に飲みたくなるんだもの。
そんな訳で一樹君達に連れられて、彼らのマンションにたどり着いた。
ソファーに寝かしてくれた後、絵麻ちゃんが水の入ったコップを持ってきてくれる。
「ありがとー絵麻ちゃーん。だーいすき」
「うん分かってるよ。とりあえず兄さんどうする?」
「どうみても1人じゃ帰れそうにないしなぁ。タクシー呼ぼうかな」
……出来れば、まだ一樹君達といたいのよねぇ。
でも自分から「泊まらせてほしい」なんて言うのも失礼だし、それで嫌な顔をする一樹君達も見たくはないし。
ちょっと演技してみるかぁ。
「あー、ちょっと頭痛いかなー。車は勘弁願いたいー」
「だって、兄さん」
「うーん……じゃあ泊まらせてあげようか。それでいい絵麻?」
「私は別にいいけど」
うん、悪いね絵麻ちゃん。
本当はあなたの邪魔をしない方がいいって思っているんだけど、なんだかんだ言って人肌が恋しくなるのよね。
「もうこんな時間か。絵麻、未央奈さんと一緒に風呂に入ってくれる?」
「分かった。未央奈さん立てる?」
「はいはい、立てますよー」
私は絵麻ちゃんと一緒に風呂に向かった後、素っ裸になる。
胸をさらけ出した途端、絵麻ちゃんがチラチラ見ていた。
フフッ、そんなにFカップのおっぱいが気になるかいな。可愛い奴め。
「とりあえず身体を洗うだけね。湯船はマズいから」
「りょーかーい」
中に入った私達はシャワーを浴びてから、身体洗いモードへと入る。
絵麻ちゃんが自分の髪を洗おうとしているところ、私は彼女に言った。
「絵麻ちゃん、よかったら洗ってやろうか?」
「大丈夫? 酔いは?」
「絵麻ちゃんの愛のお水で収まった」
「ほんとぉ? まぁ、お願いしようかな」
スタンバイモードに入る絵麻ちゃん。
私はシャンプーを手に貯めてから、彼女の髪を擦るように洗う。
女の子にとって髪は命。
ちゃんと優しくしないと痛んでしまうからね。
「なんだか絵麻ちゃんの小さい頃を思い出すなぁ。よくこうやって私がやってたよね?」
「そうだね。ちょっと懐かしく感じてきた」
「そんな小さい子が美人に成長しちゃって……お姉ちゃん感無量よ」
「大げさな……」
今は亡くなっていない父が絵麻ちゃんと一樹君を連れてきた際、私を酷く警戒していたのも覚えている。
私はそんな彼らを放っておく事が出来なかった。
臭い言い方になるけど、同情していたのかもしれない。
私は出来る限り、絵麻ちゃん達と遊んだり、勉強を教えたり、ご飯を作ったりして……。
今でも「こんなにも美味しいご飯初めて……」なんて言って、ボロボロ泣いていた絵麻ちゃんの姿が目に焼き付いている。
あの時はよしよしと撫でながら抱き締めていたなぁ。
「大げさなんてないわ。あんなにも小さくて一樹君の後ろにくっついていた子が、こんなにも魅力的になったんですもの」
「そっかな……」
褒め慣れていない辺りが一樹君にそっくり。
血は争えないって事ね。
「……ねぇ、未央奈さん」
「んっ、何?」
私が髪の泡を洗い流した後、絵麻ちゃんがこちらに振り返ってきた。
「店で私が試着室入っている時、兄さん誰かと話してた?」
「あっ……やっぱりあの声聞いていたのね」
「聞いてた……よ。なんか大都なんかアパレルに来ないとか……今でも思い出すとイラつく……」
おっと、絵麻ちゃんの目のハイライトが消えた。
こうなるとこの子、結構怖いのよね。
「察しているとは思うけど、お兄ちゃんのクラスメイトよ。まぁ、本人は気にしていないからいいんじゃない?」
「そうは言っても……というか何で兄さんがああ言われなきゃならないの……何があの大都よ、兄さんは眼鏡かけていてもかっこいいんだから……それにこんなところ来ないとか言ったけど普通にアパレル何回も行ってるから……兄さんの事を全く理解していない人達が兄さんを……」
「おーい絵麻ちゃん?
「あっ、ごめん……いつの間にか口にしてた……」
全くこの子は……。
一樹君がらみになると怖くなるけど、それだけお兄ちゃんの事を誰よりも愛している証拠。
そりゃあ、一樹君も絵麻ちゃんには甘くなる訳だ。
それにしてもアパレルで会った池上君。
確か彼の父親が、この間絵麻ちゃんを前に出せって言って、一樹君を怒らせた人なのよね。
一樹君がその事を知ったらどうなるのか……いや、あの子の事だからあんまり気にしてないかも。
「そもそも兄さんが頑張っているからこそ、日本は平和になっているというのに……これじゃあんまりだよ」
「まぁね。お兄ちゃんがいなければ死傷者がたくさん出てたし、日本経済が破綻してたケースだって何度かあった。本当は皆、お兄ちゃんに感謝しないといけないのにね」
「兄さん……それでいいのかな……」
「むしろ本人が望んでいる事なのよ。自分が普通の人間じゃないからこそ、普通の生活を望んでいるって訳。そういう英雄的扱いも好きじゃないみたいだしね」
「…………」
納得しているのとしていないのが同居したような複雑な表情。
仕方ないな……私は絵麻ちゃんの身体を引き寄せ、ぎゅっと抱き締めた。
「キャッ!?」
当然裸同士なので、胸と胸、肌と肌が密着し合う。
あー、変な気分になっちゃうかも。
「心配しなくても、お兄ちゃんは絵麻ちゃんがいるだけで満足しているのよ?」
「そ、そう……?」
「ええ。お兄ちゃんが大怪獣を倒しているのはね、絵麻ちゃんが普通に生活できるようにする為なの。だからさ、これからもお兄ちゃんのそばにいてあげたらいいんじゃないかしら?」
「……そばに……」
そう、それが一樹君にとっての一番の幸せなんだから。
なんて言わなくても、この子にはとっくに分かっているでしょうね。
「ちょっと納得したかも……ありがとう未央奈さん」
「どういたしまして」
私はそっと彼女から離れた。
「それと……もう1つあるんだけど、私いつ兄さんと一緒に戦えるの? その予定あったりする?」
「あー、その辺はねぇ……」
「やっぱり兄さんが止めたりする?」
「そんな感じ」
何せこの間、絵麻ちゃんを前に出せと言った上層部に凄みを利かせたからね。
それだけ一樹君にとって、絵麻ちゃんは大切でかけがえのない存在。
私でさえ彼を納得させるのは難しいと思う。
「絵麻ちゃんには平穏な暮らしをしてほしいって思っているからね。前にそんな話をあった時なんか蹴っちゃったし」
「やっぱり難しいんだね……」
「ただ絵麻ちゃんにしか出来ない作戦が出てくるかもしれないから、その時にどうするかお兄ちゃんと話し合いましょ。もしかしたらお兄ちゃん、その辺聞いてくれるかもしれないわ」
「うん、分かった」
素直に返事する絵麻ちゃん。
それを聞いた後、私は手のひらにボディソープを貯めた。
「それはさておき絵麻ちゃんや、次は身体と行こうじゃありませんか」
「えー、そこまでいいよ。未央奈さんの手つきいやらしいし」
「まぁまぁ、ちょっとだけだから……えいっ♪」
「ヒャアア!?」
絵麻ちゃんの胸を鷲掴みにした。うむ、感度良好。
それに年齢にしては美乳だし、将来有望って感じ。
「うーん、やっぱり絵麻ちゃんのおっぱい最高ねぇ。すごく柔らかいわぁ」
「もう未央奈さんったらぁ! あん……んっ!」
「ほんと絵麻ちゃん可愛いんだから……一樹君は恵まれているわね」
「何でそこで兄さんの名前を……いやん! そこは……ああダメー!」
いつしか、自分達の体温が熱くなってきたのを感じた。
まさかのぼせたりとか……ってそりゃあないよね。
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