第18話 海辺の子どもたち
子どもたちはきょろきょろとあたりを見回している。
ベリーズベリーの街でならこれでは見つかる。体は隠れているけれど、スカートの端は道に出ている。
でも、ついてきた子どもたちは気がつかないらしい。アンとフローラの姿が見えないと見て、あちこちに散らばって探し始めた。
相手は男の子二人に女の子二人の四人だ。みんなフローラよりも小さい。
小さい女の子がきょろきょろしながらアンの前を、というより下を通り過ぎる。
「こーらっ!」
アンはすばやくその子を抱き取った。
「ああっ、あっ、放してよっ!」
胸のところで暴れる。勢いよく暴れるのがくすぐったい。
フローラはまだ隠れている。アンは小さい女の子を抱いたまま道に出た。
声をきいて、ほかの子たちが戻って来る。
「何するんだよ!」
男の子がアンに食ってかかった。落ちついて言い返す。
「あなたたちこそ何よ? わたしたちのあとずーっとついてきて」
「べつについてきたっていいじゃないか!」
「気になるじゃない?」
「あんたのほうがよっぽど気になるよ! なあ」
男の子が左右の男の子と女の子に声をかける。二人とも頷いた。
アンに抱かれたままの女の子は、言い争う男の子の顔とアンの顔とを見較べていたが、アンがあやすように揺すってやるとアンの顔をふしぎそうに見上げた。
その様子を見てフローラも出てきた。
こうやって子どもたちに囲まれて子どもを抱いていると、お母さんになったようなふしぎな気もちだ。
小さい女の子の頭が自分の頬が擦れるくらいまで揺すってやってから、とんっ、と地面に置いてやる。
女の子はアンの向かいで虚勢を張って立つ男の子の後ろに回り、そこからアンを見上げている。
もう一人の男の子が前の男の子の斜め後ろについた。大きいほうの女の子は少し離れて立っている。
アンはいちばん前の男の子に言った。
「わたしの何が気になるわけ?」
「だってさ、へんな服着てるしさ」
言い
「それだけ?」
「そうだよ」
「背が高い」のほうはいいのだろうか?
「じゃあ」
言って、アンはフローラの肩を手のひらで軽くたたいた。
フローラは伏し目で相手の子たちを見ている。
相手の大きいほうの女の子はフローラを見て軽く笑い声を立てた。おんなじ女の子だったので嬉しかったようだ。
「この子のことは?」
三人の子どもに、いちばん小さい女の子も入れて、顔を見合わせている。
最初から前に立っていた男の子が首を振った。
「いいや」
「だって、この子、普通じゃないか」
前に立っている男の子がアンにきくと、大きいほうの女の子が
「名まえは?」
ときく。
あれ、名まえ、きくんだ、と思う。フローラの近所では名まえなんてどうでもよかったのに。
「……フローラ」
フローラは気の進まない様子で名のる。
「……おばあさんの名まえはテューレ……」
「ふうん」
前に立っている男の子が答える。べつにその名まえが気になったりはしないようだ。
「どこに住んでるの?」
フローラは自分が来たほうを指差した。
「そこの街の……、上のほう」
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