第17話 子どもがつけてくる
石段を下りているあいだは明るかった。
街並みに入るとやっぱり薄暗い。
それでも、家が通りに迫っていないせいか、さっきの街よりも明るい。さっきの街が、夕暮れ色のしない夕方のようだったとすれば、ここはまだ昼の遅い時間といった明るさだろうか。
アンが最初に来たあの四つ辻のあたりよりも人通りは少ない。
フローラよりもずっと小さい子どもを連れた、親切そうな女の人が通りかかる。
その人はアンをずっと見ながら通り過ぎた。さっき四つ辻のところで「鍵の乙女」だと大騒ぎして、この街の人はそれでもうアンがいることには慣れてしまったのかと思うと、そうでもないらしい。
その女の人の後ろを豚がのそのそと三匹ついていく。さっきまでの豚より少し大きく、それにのんびりしている。
通り過ぎてから、粉
まただれかに出会うだろう。
そのまま緩い坂を下りて黒い
このあたりの街並みは地味だ。
フローラの家があるあたりは、家の壁は白くて、瓦は赤かったり鮮やかな橙色だったりで、薄汚れたままでも派手だった。
このあたりは、木の壁のままの家も多く、飾り気がない。でも、家は広いようだし、街もゆったりしているように見えた。
りんごの木は街路の脇のところどころにあった。ごろごろといっぱいに大きい赤い実をつけている。
後ろから子どもたちにつけられているのにアンは気づいた。
ベリーズベリーの街で子どもたちに何度も同じようにあとをつけられて、アンはこういうのに気づきやすくなった。
アンだって使用人の娘で、べつに金持ちではない。でも、家がお屋敷勤めだから多少はいい服を着ていて、目立つ。この街ほどではないが、やっぱりベリーズベリーの街でもアンの服は目立つのだ。
だからときどき子どもたちにつけ回され、油断すると持ちものやお
そうなって帰ったら、お姉ちゃんには笑われるか、怒られるかだ。
もっともお姉ちゃんもときどき被害に
そうならないようにするには、早めに気づくことだ。
だからアンは勘が身についた。子どもたちが後ろをつけてくるとなんとなく気配でわかるようになった。
フローラは気づかないらしい。アンの斜め後ろについて、少し疲れたのか、黙ってちょこちょこと歩いている。
アンは何気なく脇道に入った。曲がってすぐ、最初の家とその隣の家のあいだに潜りこむ。フローラも引っぱりこんだ。
「何……?」
何か言おうとするフローラの口を無理やりふさぐ。
自分たちをつけてきた子どもたちが前を通りかかった。
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