KAC20223 双子のひらめきは思いきり被るというお話。

無月兄

第1話

 つい先日のことでした。

 いつものように仕事に向かおうと、朝早く家を出たその時です。


「雪、多っ!」


 玄関のドアを開けると、見渡す限りの雪、雪、雪!


 自分の住んでいるところでは雪は滅多にふらないのですが、その日は珍しく、ふるどころかしっかり積もっていて、見渡す限りの銀世界でした。


「車の運転、気をつけないとな」


 これから車で仕事に向かわなければならないのですが、何しろ少しふることすら滅多にないのです。雪の積もった道路を運転するのなんて、年に一度あるかどうか。事故が怖いです。


 ですがそれはそれとして、いつも見慣れていた風景が一面白く染め上がっているのは、見ていて綺麗でした。

 その様子を改めて見て、こう思いました。


「Twitterに投稿しよう」


 自分のネットでの活動は、カクヨム以外にTwitterも細々とやっていて、日々のちょっとした出来事を呟いていました。

 雪が積もったという、自分にとっては珍しいこの出来事、投稿しないわけがありません。


 早速写真にとって、ツイート開始。

 問題は、どんな文章を添えるかです。


 雪が積もったよ、的な一言にでもしようかな。そう思ったその時です。頭の中に、あることが閃きました。第六感です。

 それで、投稿した文章がこちらです。


【仕事に行こうと家を出たら、そこは雪景色でした

 今冬初めて積もった。事故らないよう気をつけなければ】


 後半はともかく、前半は完全に、川端康成の雪国の冒頭の一文をもじったもの。なんとなく、このフレーズが唐突に頭に浮かんだのです。


 とった写真にこちらの文章を添えて、ツイート終了。

 それからようやく仕事に向かったのですが、なんとか事故を起こすことなく、職場に到着することができました。


 着いたところでTwitterをチェックすると、さっきのツイートにいくつかいいねをもらっていました。


 それを見た後は、フォローしている方々の呟きチェックです。

 すると、自分がさっきのツイートをあげた直後、自分の双子の弟が、こんなツイートをあげていました。


【夜勤を終えて建物の外に出ると、そこは雪国だった】


 なんと、その時夜勤だった自分の双子の弟も、自分とほぼ同じタイミングで、この雪についてツイートしていたのです。

 しかも添えられた文章は、川端康成の雪国の冒頭の一文をもじったもの。

 自分と丸被りです。


 偶然か? それとも、自分のツイートを見て合わせたのか?


 弟に確認をとってみたところ、偶然だったそうです。唐突に、そのフレーズが頭に浮かんだとのこと。

 うん。そういうことってあるよね。さっきの自分が、まさにそうだった。


 こんな偶然も双子では割とよくあることなのです。もしかすると、お互いの思考を第六感的な何かで読み取っているのでは、なんてことを考えてしまうのですが、本当のところはわかりません。

 確かなのは、双子はなにかと発想が被るという事実だけです。


 ちなみに、ほとんど同じ内容のツイートなのに、弟の方が多く『いいね』をもらっていて、ちょっぴり嫉妬しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

KAC20223 双子のひらめきは思いきり被るというお話。 無月兄 @tukuyomimutuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ