愛して愛して愛して
有栖川ヤミ
第1話
生まれた時から、私には首輪が巻かれていた。親が私を思い通りに操る、目に見えない首輪。それは、私にとっての呪いだった。怒鳴らないで、「生まなきゃよかった」なんて言わないで。どこにも行かないで。私には自傷癖があって、孤独感を感じるたびに、吐くまで自分の首を絞めていた。「いい成績でしょ?」という私の問いかけに、怪訝な顔をする親。褒められたい、「いい子だね」って言われたい。「かわいいでしょ?」なんて聞く勇気もない。なんでもいいから私を認めて。苦しいの、ねえ。愛して、愛して、愛して。もっともっと愛して、愛して、狂おしいほどに。苦しい、苦しい呪縛を解いて。ねえ、止められない。
身体が成長しても、首輪は小さいままだ。私はやっぱり孤独で、苦しくなる。愛が、愛が足りない。
「クラスの誰にも負けない、キレイないい子でしょう?」
今度は担任の先生に聞いてみる。
「そうだね」
苦笑いをされた。腹立たしい。あの子よりもどの子よりも、ちゃんと私のことを見てよ。
ある日、先生を体育館裏に呼び出した。
「好きです。」
「…え」
先生は戸惑っていた。
嘘みたいでしょ。あなたが好きなの、汚いあなたが!
愛して、愛して、愛して。
「身体も心も全部先生にあげるから」
私の人生、全部背負ってもらうね。
足りない、愛が足りない。私を愛してくれる人を、離さない。嗚呼、勝手な子でごめんなさい。
「いや、その、君は生徒だし…」
私に気があることは分かっていたから、彼が言い切る前に、唇を塞いだ。
「ん…」
案の定、抵抗しないどころか、私の口に舌を入れてきた。
目を閉じているから視界は真っ暗だけれど、信じられない幸福感だ。
愛して、愛して、愛して。もっともっと愛して!狂おしいほどに愛して。
酸素が回らなくて、息が苦しい。私はこの人を絶対に離さない。息の苦しさを感じて目を開けると、先生は私の首を絞めていた。
「…も、っと締め、、て」
喘ぎながら強請る。
先生は微笑む。
ねえ、わたしは今、とってもしあわせなの。
幸せなの、嗚呼。
愛して愛して愛して 有栖川ヤミ @rurikannzaki
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