災厄との邂逅3

「あの、離れないんだけど・・・・これ、どうしたらいいの・・・・・・」

「あぁ、完全に選ばれてしまったな。いいかイザヤ。何にも知らない君に魔具について教えて

 やろう」

 そう言って翼は得意げに魔具について教えてくれた。

 魔具には大きく分けて四つのランクがあるという。

 一番低いランクの〘雨雲レイン級〙

 これは子供が武器に魔石をくっつけた、と言われるほどに魔具としては未熟とされて、作った鍛冶師にとっても、持っている魔族狩りにとっても恥のようなものだとされている。

 次に〘暴風テンペスト級〙

 ある程度魔具になれてきた訓練候補生や、警察などの法的機関で使われるような〘雨雲級〙よりはまし、といったような量産型のもの。

 中には扱いずら過ぎるが故に、ランクを落としている魔具もあるらしいが、使えないものは役に立たないから妥当な判断なのだとか。

 そして〘天災カタストロフ級〙

 ギルドの中でも上位の人間が一級の鍛冶師に依頼して作られる魔具。この魔具を持つだけで英雄を名乗れるほどの威力と魔力を秘めている。そう簡単にお目にかかれるものじゃないという。

 最後に、僕が持っている魔具こそ最高ランクの〘厄災ディザスター級〙

 厄災級の魔具のそのほとんどが、禁忌の魔具とされていて、その魔具の持つ意志で世界を終焉に導くとか、一夜でどんな列強国であろうと焦土と化すとか、あらゆる逸話で恐れられているやばい一品。

 ただし、魔具に選ばれたものにはあらゆる願いを聞き届けるとも言われている。

 いろいろな古文書や伝承に出てくるような御伽話の世界の魔具、という扱いを歴史書にはつづられることが多い。

 それくらいお目にかかることは難しい。目にした人が生きて帰ってきた人がいないと言われているほどなのだとか。

 翼は生きているうちに見られたことにすごく感心しているが、こっちはそれどころじゃない。そんな恐ろしいものに選ばれて気が気じゃない。

「なんでそんなに悠長なんだよ。これが禁忌の魔具ならお前たちも危ないんだろ。ほら外すの手伝ってくれよ」

「いや、無茶言うなよ。選ばれていない人間がその魔具に触れればどうなるかなんて察することができるだろ。俺たちがしてやれることはお前の腕を切り落とすことだけだ。それでもその刀が離れてくれるとは限らないし、そのあと主人の腕を切り落としたってことで、俺たちが殺される。そんなリスク追いたくねぇよ」

「まぁそれに、禁忌の魔具はその絶大すぎる力に恐れられているし、選んだ主人に対しては忠誠を誓い、主人の命尽きるまでその身を常に守り続けると言われているから、今も離れないのは忠誠を誓っている証拠なんじゃないかな」

「そんな悠長な・・・・まぁ、離れないしこれで試験を受けるしかないか。はぁ、どうしてこんなことに・・・・」

 まさか選んだ武器がそんな危なっかしいものだなんて誰が想像するだろうか。僕がもっと歴史に詳しければ・・・・

 いや、もとはと言えばこんな危険なものを学園の武器庫に放り込んでいるこの学園が悪いのではないか? 

 僕は渋々その太刀をもって武器庫を出ると、入れ替わりで三人が武器庫に入る。

 三人とも手に取る魔具を決めていたのか、真っ先にその魔具のもとに向かって手に取る。

 潤華が薙刀。

 しかも僕が持っている太刀と同じくらいの刃の長さなのに、柄は僕のものより何倍も長い。潤華の身長と同じくらいか、それ以上あり、とても重く振りづらそうだ。

 柄は木でできていて、刃も顔がきれいに反射しそうなくらい綺麗に磨かれている。いろいろな本によく出てくるようなシンプルなもの。

 選んだ魔具が意外だ。という僕の顔を読み取ってなのか、

「私はこれでも先祖が武士でね。家では小さいころから刀や弓、銃といった武器にたくさん触れてきたんだけど、中でも私にはこの薙刀があっているんだよね。いろんな人から意外って言われるんだけど」

「確かに意外だぁ。私はそんな重いもの振り回せなさそうだもん」

 と言いつつ真耶が手に持っているのは潤華の持つ薙刀と同等、いやそれ以上はある大鎌。

 彼女よりも身長が小さい真耶がその武器を持っているほうが意外なのだが。その大鎌は真耶の体格の三倍はある。

 基調は黒なのだが、刃の内側が魔石の効果なのか紫色に輝いている。

「お前がその魔具を持ちながら言うと、ブーメランもいいところだぞ。お前が持っているもののほうが数倍は重いはずだ」

 そういう翼が持ってきたのは弓。弦も成りも蒼色を基調としていて、ところどころに獣の毛皮があしらわれている。

 しかし、翼が持ってきたものは弓だけで、どこにも矢が見つからなかった。

「翼、矢はどうしたんだ? まさかそれだけで戦える武器・・・・とか?」

「まさか。弓なのにわざわざ近距離戦は挑まないよ。まぁ見てて」

 そうして翼が弓を引くとどこから現れたのか、光を纏った矢がその手に現れた。

「これは魔弓〈フェイルノート〉。幻竜族の魔族からとれる魔石を使用した魔具なんだ。この魔族の〈オリジン〉は姿を消すことができ、幻を見せることができるんだ。矢が見えないのはそういうことだ」

「へぇ、そんな種族がいるのか。いろんな種族がいるんだな。それにしても翼はよくそんなことを知っているな」

「あ、あぁまぁな・・・・そんなことはいいだろ。早く試験に戻ろうぜ」

 翼の返事がしどろもどろになった気がして、それを不思議がったが翼に続くようにほかの二人も歩き出したため、僕も気のせいだとその後ろについて試験に戻った。

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