出会う少女は7

「この業界を目指して三日しかたっていないのに飛び込む勇気もすごい。本来なら何年も武器の扱いに身体を慣らして挑むものなんだ。相当深い理由があるんだろうな・・・・・・それで、イザヤは半魔という言葉をどこで聞いたんだ。あまり簡単に耳にできる単語じゃない。一般人ならばなおさら」

 翼の声が半魔の話をするときに急に低くなった。二人とも笑顔だったのに、急に真剣な顔になっている。

 これは何か地雷を踏んだとすぐにわかった。そう簡単に口にしていい言葉じゃないのだと。

「い、いや、この業界に入るときに、親戚が、な。そういう人もいるから気を付けるんだよって。僕の親戚はハンターを生業にしてる人だから」

 とっさに嘘をついた。あまりにも下手な嘘を。声が上ずった。

 もちろん二人もこの嘘に気づかないわけがない。けれど二人は、ハァとため息をついて、

「いや、俺らも聞き方が悪かった。けれどその言葉、この業界で簡単に口にしていい言葉じゃない。よく思わない連中や、研究者なんかに聞かれると何時間も事情聴取をされて、ひどいときは身柄の拘束もあり得るから気を付けたほうがいい」

「そうだね・・・・うーん、あんまりいいことじゃないから話したくはないんだけどな。イザヤにとってそれを知ることは大事なことなの?」

 僕は首を縦に振る。大事なこと、ではないかもしれないが僕が気になって仕方がない。

 潤華のことは今日知ったばかりで、ただの他人なのに、どうしても放っておけないのだ。自分でもどうしてかわからない。

「知っていい気分になる話じゃないし、聞かないことをお勧めするよ。それでも聞きたいっていうなら場所を変えよう。どこで話を聞かれているのかわからないから」

「知りたい。僕に直接関係あるものじゃないけれど、この先何があるかわからないから、どういうものなのかを知っておきたいんだ」

「まぁ、この世界に入ったら遅かれ早かれ知ることになる。ただ、もしイザヤがこの世界に入れなかったとしても、この話を俺たちから聞いたとを口にしないことが条件だ。それを約束してくれ。もし話したらどうなるか・・・・わかるよな? 地獄の底まで追いかけるぞ」

 翼の言葉も、その目も本気だ。殺気というものを本気で浴びたことがない僕でもわかる。初見の人に見せるものじゃない。それくらい警戒するべき事柄だということなのだろう。

 それにこの感じ、この二人は相当強いんだろうな。朝僕に絡んできた男よりも強いことが素人目でもわかる。纏っているオーラが違うことが。

 僕が数回首を縦に振ると真耶が少し悩んだ末、

「人目のない場所・・・・か・・・・なら、このまま屋上まで上がろう。この学園、生徒の緊張をほぐすために屋上を解放しているみたい。誰でも上がっていいらしいけど、試験中に屋上に上がる生徒なんていないだろうからね。何回か学園に来たことがあるから、ついてきて」

 僕は二人についていった。といっても話をしていた階段をそのまま上がっただけだが。

 真耶は屋上のドアを開けて、そのまま奥に進む。屋上にはフェンスをしてあったが登ろうと思えば誰でも登れそうな高さだった。

「この屋上、緊張をほぐすためなんて言ってるけど、裏にはこの学園の闇が隠れていてね。魔族狩りになることに絶望した人が、簡単にその身を投じれるようにするためだという噂があるんだよ。魔族に食べられたことにして、その証拠を残さないんだとか。言いたいこと、わかるか? 

 ここで聞いたことを他で漏らそうとすれば、俺たち二人でイザヤをここから突き落とすこともできるってことだ。イザヤが死んだ後で、魔族への不安だと俺たちが証言すればイザヤの死はそういうことになる・・・・今ここで退けば、俺たちも何も聞かなかったことにしよう。さぁどうする」

「話してくれ。そもそも僕は魔族への不安なんてない。僕は、魔族を狩るためにここに来たんだ。その半魔というものが魔族ならそれも狩る対象だ。たとえ人であろうとも」

 二人が真剣だから、僕も真剣に答える。

 それに本心だ。その存在が魔族だというのなら例え潤華であろうと僕は容赦なく狩る。今日でも、今すぐにでも。

「そうか、それなら話す。まぁ狩ることはないだろうな・・・・基本的に」

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